ローシュの思い
夜の町を歩き続ける俺はため息を吐きながら頭の中を整理する。
メルラになんて答えれば良いかわからないのだ。
別に彼女が嫌いなわけではないのだが、どうしても脳裏にちらつく他の女性の姿があった。
「こんな事で悩んだ事ないんだけどな...」
今まで恋というものはしたことがなかった。
俺とは無縁の物であり、一生関わり合いのない物にすら思えていた。
そう、彼女の姿を見るまでは...。
「明日だったよな、カリンのショーがあるの、見に行かないと...」
俺が明日ショーを見にいく理由。
カリンの活躍が見たいのも理由の一つではあるのだが、今回はそちらがメインではない。
俺は多分...。
〜エルシーという女性に一目惚れしたのだ〜
彼女を見ていると動悸が激しくなるのを感じる。
最初はカリンの先生程度の認識だったのだが、あの時彼女のダンスを見てぐ〜っときてしまったのだ。
10分にも満たない時間だったのに、俺の心は突き動かされた。
今も脳裏に浮かぶのは、あの時に振りまいた笑顔。
あの表情を見た時、俺はときめきの様な物を感じてしまったのだと思う。
適当な店で酒を買い少し嗜む。
あまり酒を飲む方ではないのだが、今日は何故か飲みたくなったのだ。
アルコール度数の限りなく少ないほぼ水のような酒だったのだが、ほろ酔いくらいで充分。
「ふぅ...」
夜の賑やかな町の様子をつまみに飲む酒はなかなかいける。
「美味いな...」
王国祭はまだ3日目なのだが、自分の中では明日が最終日のように感じられる。
もう一度彼女の踊りを見て、それでもまだこの胸の高鳴りが収まらないようであれば...。
いや、やめておこう。
俺はそっと考えるのをやめた。
ぼんやりと盛り上がりを見せ続ける夜の町の声を聴きながら、俺は1人酒を飲み干した。




