じゃあ行くね...
「じゃあ行くね...」
言いたいことを言い終わった私が教会を去ろうとしていると、見覚えのある茶髪が見えました。
「ん?カリンか?」
「エルシーさん?、なんでこんなところに...」
「それはこっちのセリフ...だ...!」
その時でした、見覚えのある白装束を着込んだ金髪の少女が現れた事に驚き、体が勝手に動いていました。
「カリン!下がれ!!」
私の大声に戸惑う彼女を風魔法でよろけさせ攻撃範囲外に出す。
その後、即座に槍を三本程出現させ、金髪の少女の周りを牽制するように浮かべる。
「そこから動くな!輪廻教徒が...」
私は金髪の少女を睨みつけながら距離を詰めて行くのだが、彼女が笑っていた。
「なんの話?、これコスプレですけど...」
嫌な笑みを浮かべる彼女を見ているとイライラが募る。
(あの声、体格、坑道内で戦った小太刀の奴だな!)
しらばっくれても無駄だと言い張る。
私は最近こいつらの服装を見たんだ、見間違えるはずがないのだ。
それなのに惚けたような素振りを取り続ける奴が実に腹ただしい。
「笑えない冗談はよせ...、見苦しいぞ...」
短剣の切っ先を奴に向けたままジリジリと近づく。
重苦しい雰囲気の中、カリンの奴が私の前に立ち塞がった。
「ストッォォプ!!」
両手を広げ、奴を守るように身を乗り出したのだ。
「カリン!?...、そこを退いて...」
私はカリンにそう告げるのだが、彼女は首を横に振る。
「退かない...、エルシーさんどうしたの?急に攻撃してきてびっくりしたよ...」
心配そうにこちらを見やる彼女にこう呟く。
「カリンそいつは...」
私が奴の正体を暴こうとした時、奴はいつの間にか私の前に現れ口を人差し指で抑えていた。
一瞬で私の包囲網を潜り抜け、こんな近くにまで移動してきたのだ。
驚く私にだけ聞こえる声量でこう囁いてきた。
「それは内緒...、せっかくあの子と私が友達になれたのに、それを言っちゃうと彼女がかわいそうだよね」
そう言ってカリンの方を向いてニコリと笑う彼女。
大方の予想ではカリンを取り込んだとでも言いたのだろうが、それごときで怯む私ではない。
「黙れ!」
短剣を振り彼女を攻撃しようとした時、妹やカリンの表情につい気をとられてしまった。
「エルシーさん...」
まるで悲しい物でも見るような瞳で私を見てくるのがとてつもなく痛いと感じてしまう。
唇を噛み締めながら武器を収めてその場を立ち去る私。
「待ってください!!、なんでエルシーさんはエリサにこんな事をしたんですか!?」
いきなり感情的な声を上げて叫ぶカリンを見た私はやるせない気分になる。
「すまない...」
それだけ呟いて私は教会を去った。