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お兄ちゃんの優しさ

 私とお兄ちゃんは家に戻っていました。

 これは仕方ない事なのですが、私はお兄ちゃんとの約束を破った事を後悔し謝ります。


「お兄ちゃん...、ごめんなさい」


 私がそう呟くと、お兄ちゃんは不思議そうな顔をしていました。


「なんでカリンが謝るんだ?」


「だって...、今日を楽しみにしてたでしょ?」


 そう、私は知っている。

 彼が今日という日をどれほど待ち望んでいたのかを痛いほど理解できているのだ。

 それなのにパニラと過ごすのを選択してしまったのは、彼女がどういう風に祭りを過ごすのか少し興味があったからという自分の欲望に他ならない。

 自責の念に駆られていた私を見た兄はこう言い返してくれました。


「楽しみにしてたのも本当だし、途中でカリンがいなくなったのは本当に辛かったけど、それまでは一緒だったろ?、お兄ちゃんはそれで充分満たされたよ」


「本当?」


「本当本当」


 彼は恐らく私を傷つけまいと軽く話してくれているのでしょうが、私にとってそれはある種の呪いの様に心を潰していきます。


(...、私はこんなにいい人を放っておいてパニラと一緒に遊んでいたのか...)


 むしろ優しくされる度にどんどんそれは募り続け、膨れ上がって行きました。


「お兄ちゃん、ごめんなさい...」


「だから謝るなって!!」


 お兄ちゃんは急に声を荒げながら私の肩を持ち、顔をしっかりと見つめています。


「カリン、お兄ちゃんを見てくれ」


「うん...」


 私は彼の顔をしっかりと見て目線を合わせます。


「いいか、もう一度言うけど俺はカリンと過ごせて本当に楽しかったんだ、それを謝られるとまるで...、まるでカリンの方は楽しくなかったみたいじゃないか...」


「お兄ちゃん...」


 兄さんはこれまで私に見せたことのないほど悲しい表情をしていました。

 私の顔を見ながら深刻な顔で見つめられたので、どう返せばいいのか分かりません。

 何を言えばいいのか迷っていると、彼は口を開きこんな事を呟きました。


「カリン...、お兄ちゃんはなお前を褒めているんだ、パニラ様から聞いたんだよ、お前が結界内からパニラ様だけを優先的の逃したって、まだ小1だってのに流石俺の妹だってな...、だからさ、今は笑ってくれ、お前は凄いことをしてたんだって胸を貼っていいんだから!」


 そう言い切ると、彼は私を優しく抱きしめてくれました。


「おにい...ちゃん...!」


 私もそれに答える様に兄に抱きつくと、なんとも言えない感情が胸の内から溢れてきて、先ほどまでの邪念を全て消し去りました。

 私はその後母さん達が帰ってくるまでの間、お兄ちゃんの胸の中で泣いていたそうです。

 どれだけの間泣いていたのか分かりませんが、この時に私は凄く満たされた気分になっていたのを今でも覚えています。

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