第1侵略 魔王の誕生
シュバルツがこの世界に現れる2日前。
魔界において、ある巨大な影が誕生した。
それは、この世界で言う魔王。
魔王の名は「アルヴァーニ・サタン=テーフェル」
この世界における最も最恐であり、最凶である。
そうは言っても、彼には特殊な、特殊な事情がある。
それは、異世界から転生してきたことだ。
元の名を「遠藤 博文」、プロゲーマーである。
かつて、柁滕 宏史が1位になる前の元1位。
柁滕とは何度もやり合っている。しかし、負けが多い。
そのためか、犬猿の仲なのである。
そして、遠藤は負けが続きフラフラと外をほっつき回していた。
死角からから飛びたしてきた車に轢かれてしまった。
そして、現在に至るわけだ。
今、公務をなしている。
一様、ヴァルキーとは面会してる。
「魔王様。こちらの書類をご覧下さい。」
「良かろう。ふむ。新しいプロジェクトか。」
「左様に御座います。」
「許可しよう。」
「有り難き幸せ。」
こんなことになるとは思ってなかった。
魔王なんて。説明された通りやってみてるけど‥‥‥。
心地が悪い!見た目はゲームのままなんだが‥‥‥。
喋り口がどうしてもそのままなのだ。
って言っても、声は魔王だよ?
「はぁ。どうも性にあわない。」
今は1人なので呟く。聞かれたら威厳を失いかねない。
「失礼致します。」
「何用だ。」
「もうそろそろ、世界の征服を開始されてはと。」
「ほう。策はあるんだろうな。」
「もちろんに御座います。」
「ならば聞かせてみよ。」
この後たっぷり聞かされました。全て!辛いよ。頭に入らないよ。
「なるほど。勝算はあるのか?」
「はい。五分五分となりますが、今は世界を救う冒険者がいない故。
攻めやすいかと。」
「よし、お前の策を使う。結構は明後日からだ。」
「仰せの通りに。」
初めは地方の村を転々と潰していくのか。
悪くは無い。直接攻撃を掛けると確実に冒険者が集まっている。
そのため、一人一人の処理に手こずってしまう。
非効率である。
地方の村を潰すことによって、冒険者を分散させる狙いだ。
「しかし、ここからその村までどれくらいあるのだ?」
「獣を放つ故、2、3日ばかりかと。」
「なら良い。」
「モンスターは、ヴァノーギアルト、ヴァノヴァルを放ちます。」
「わかった。さがれ。」
「はっ。」
あー。冒険者が来ないかな。暇なんやけど。
てか、征服してみたかった!いつもは逆の立場だから、こっちの経験は少ない。
でも、攻略とは違う。侵略なのである。
そう言えば‥‥‥。魔王の力を試してなかっけ?
今のうちに、試しておかないと。冒険者と戦う時にヘマこくしね。
そう言えば‥‥‥。容姿も見ておこ。容姿に合わせた喋り方は大切!
近くにある鏡でその身を見る。
「ありゃま。ゲームのまま。それじゃー。いつも通りに話すしかない。でも、魔王でしょ‥‥‥。声は魔王やし。」
やはり、我とか我輩の方が良いのか、朕という古来中国の私にあたる言葉にするか。それとも、拙者‥‥‥。いや、ないな。
拙者は忍者だ。魔王ではない。
余にしよう!それがなんかしっくりする!
角が生えてるわけじゃないし!普通の人間に近いし〜。
ヴァルキーというよくわからんやつが再び現れた。
「そうだぁー。伝え忘れてたことがあるのぉー。」
「なんです?今度は。」
「貴方にはこの世界を侵略して欲しいの。」
「元より、その予定だったが。なぜ、今頃?」
「世界最高神がそうお望みなのぉー。」
「その、プライムグラ‥‥‥何とかが望んでいるのなら、やるしかないだろ?」
「あっ。忘れてたわぁー。死んだら一発人生終了だからぁ。気おつけてねぇ〜。」
「ゲームオーバー?!マジで言ってんのかよ?」
「マジって何もないじゃないぃー。命は1個にきまってるでしょぉー。」
「わかった。再び授かった命だから、大切にしなきゃな。」
「守りながら侵略ねぇ?」
「分かってるよ。」
「検討を祈るわぁー。」
そう言い切ると、すーっと部屋から出ていく。
なんなんだアイツ。わけわかんねぇーな。
まぁ、いいや。侵略をすれば良いんだろ?プライムグランドゴッド様だっけ?やってやろーじゃねぇーか!
その頃、部屋の外に出たヴァルキーはぼそっと呟く。
「あの方も喜ぶわねぇ。そうでしょ?遊びの神。」
数日後にはもう1人の人間が転生してくる。
どんな風にぶつかるのかしら。二人ともプロゲーマー。
どっちが勝っても面白い結果になるのは目に見えてるわねぇ。
と心の中で独り言をボロボロとこぼしていた。
まぁ、そういう性格もあるのだろう。
角を曲がると、警備の者と出くわした。
「な、何奴?!」
「何奴ってぇ?」
「オカマが何故ここに?」
「君は何を見ているのぉ?」
「俺は何を‥‥‥。」
何事も無かったかのように、ささくさと何処かへ行ってしまった。
まぁ、ヴァルキーは一応、転生神である。
魔界の者くらい簡単に掌握できる。
しかし、世界最高神はどの界もいとも容易く、掌握することが出来るのだ。
人界、魔界、妖界、竜界、死界等の界域も。
まぁ、そんなことはしない。するような事があるのは、世界の均衡が崩れた時位しかない。
そんなことが起きることはまず無い。
均衡は生と死で保たれてるから。
優秀な人材が生まれれば、この世に生きながらえてた優秀な人材が死ぬ。
歳も容姿も関係ない。イコールで結べそうな人が死ぬ。
将来が見えているからこそ、わかる事だ。
アルヴァーニは屋外に来ていた。
魔界なので、年がら年中、月が出ており、紫と黒の雰囲気で包まれてる。 太陽を見ることが出来るのは、魔界から出たことのある兵士のみ。
初めは、目を痛めたらしい。
光は強い。
空を眺めてこれからの侵略のことについてうつつを抜かしていた。