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第一攻略 異世界は、ハチャメチャです

未知なる世界。

そう。現実(リアル)であるかのような、非現実(アンリアル)

未知のようで知っている。


そして、彼は知ることとなる。

自分の宿命に。

自分の変えられぬ運命に。

その全貌は、ゆっくりと顔を現すのであった。

まだ見ぬ世界で、彼が生きる全てを知ることに。



彼はふと目を覚ました。まだ、寝ぼけているのか、意識が朦朧(もうろう)としている。

辺りは一面、森。少し霧がかっていて、視界が狭い。

自分が座っているのは土の上。

少し肌寒い。空気が冷たい。


意識が完全に覚醒する。

彼は、はっと気が付く。

辺り一面、知りもしない世界。

そして、見たこともない動植物。

桃色の蝶型の花、紅の粉を撒き散らしながら飛ぶ虫、紫色の幹の木々そして、辺り一体に散る奇妙な雰囲気を漂わせる霧

地から生える、黒いかくばった謎の物体。

彼は、なにかを思い出した。

それは、些か信じられないことであった。


「あり得ない。ま、まるで『リヴィア・クロス』世界感設定じゃないか。」

思いついたことを、すぐに口にしてしまう。

仕方の無いことだろう。それは彼にとって大切なものであるから。


リヴィア・クロス。

それは、彼が得意とするゲームである。

全世界で親しまれているゲームで人気も爆増していた。

現に彼は世界ランキング一位。

その他のランキングも一位を独占。

その強さは、他のプレイヤーを寄せ付けない程のものだった。

このゲームには大概のプレースタイルが決まっている。

彼のプレースタイルは、他のプレーヤーとは異なる。

完全な()()()()()である。



彼は辺りを何度も、何度も見回す。

目の前に1匹の虫が飛んでくる。そう。

「これは………。あ、アルファーゲル!こんな所に飛んでるのか……。紅鱗粉じゃないか。

ってことは……。」

と、彼は右手を顎に当てる。

すると、何も無い木の影から、人が出てきた。

「そーよぉ!この森はリュージェル。未知の地と呼ばれてるところよぉー。」

その人影はしゃべった。

声は低く、少し深みがある。

なのに、オネェーの喋り方をしている。

「だ、誰だあんた?!」

唐突な出来事であった為、尻もちをついてしまった。

「もぉー。そんなにおどろかなくてもぉー。良いじゃないのー。ねぇー?」

オネェー喋りの人物はにんまりと笑う。

「じ、自己紹介するのが礼儀って、もんだろ?!」

「そうだわねぇー。

私はこの世界の転生神よぉ?名前はそーねぇ。

ヴァルキュートス・アルフレア・フレディニアヌス。まぁ、ヴァルキーってよんで。

君のこともよく知ってるわぁ。柁滕 宏史(たとう ひろふみ)さん。又の名を黒き勝利(シュバルツ・ジーク)さん。」

彼は言葉が出てこなかった。

第一に、オネェーは、自分のことを知っていること。

第二に、オネェーなのに転生神であること。

神と名乗るなら、なんでも答えられるだろう。

ちょっとした前提で企み始めた。

そんな企みが顔に出て、彼の口角が少し上がる。

転生神は首をかしげる。

「なんで、俺はここにいるんだ?」

「決まってんでしょぉー!貴方はしんだのよぉ。無呼吸症候群でぇ。寝てる間にぃ、脳卒中でころってぇ。」

無呼吸症候群………。

それは、眠ってる間に呼吸が止まる病気である。

医学では、10秒以上の気流停止(気道の空気の流れが止まった状態)を無呼吸とし、無呼吸が一晩(7時間の睡眠中)に30回以上、若しくは1時間あたり5回以上あれば、無呼吸症候群と言うらしい。

「お、俺……。死んだのか?」

「さっきからぁ、そー言ってるじゃない。」

現実を知った彼は、全身から出る冷や汗が止まらなかった。

「んじゃあ。この世界は?俺は?前世の俺は?」

ヴァルキーは、すこし困り果てた顔をして、ため息をついた。

焦らせるなと言わんばかりに、腕を組んだ。

「1から、説明するから聞いておいてねぇ?」

「分かった。しっかり聞いておく。」

そして、ヴァルキーは彼に聞かれたことの全て。

そして、この世界の成り立ち、歴史について全て話した。


「そうか。なるほどな。理解はした。でも、何故……世界最高神プライムグランドゴッドは、おれを選んだんだ?他の奴でも良かったんじゃねーか?」

彼は理解したが、その上から重なる疑問が溢れ返っていた。

「何故ってねぇー。簡単に言うと。世界最高神プライムグランドゴッドは……。」

「神は………?」

一時の静寂が彼を襲う。

全ての音が鮮明に聴こえている。

いや、遠のいていきそうだ。

「《《この世界を攻略して欲しい》》らしいのよぉー。」

「は?」

「ん?だからぁー。攻略して欲しいのぉー。」

「こ、攻略?!?!」

思わず声を荒らげてしまった。

流石に呆気を取られた。

攻略と言われても、ゲームじゃあるまいし。

たとえ、ゲームと同じでも、ストーリーがあって、絶対的にエンドするとは限らない。

途中で死ぬかも知れない。その恐怖心が彼の好奇心些かな不信心を押し潰しそうだ。

「まぁ、そうゆう反応よねぇ。これまで、何人もの挑戦者(プレイヤー)がいたけどぉ………。皆、未クリアーねぇ。」

「み、未クリアー?!無理ゲーじゃねーか!タダでさえ、ストーリーが展開してくわけじゃあるまいし。現実世界やし。なぁ‥‥‥。もし、死んだら……?」

「1発人生終了(ゲームオーバー)だよーん!」

まさかの、復活が無い。片道切符のストーリー無しの無理ゲー。

史上初めての試みであった。いや、史上初めてではないか。

前世というストーリーをクリアーせずに終了してしまった。

バットエンドと言うべきだろうか。

「まぁ、君はぁ………。意外とステータス良さげじゃないのぉー!これまで史上に最高傑作だわぁ!」

ヴァルキーはニコニコしながら喜んでいる。

「ステータス?あの……。何も無いんですけど?」

「えぇ?あぁー。視界にない?アイコンみたいなのぉー。小さいから、しっかりみつけてねぇー!」

彼はそれを聞いて、視界にあるもの全てを注視した。

すると、視界の下右端に、灰色の丸いアイコンみたいなのがあった。

「灰色のやつ?あってる?」

「あってるわよぉー!触ってみなさぁーい!」

と言われるがままに、アイコンみたいなのタップすると、ゲームによくある、メニューが開かれた。

「これって………。」

「そうそうー。メニューらしいのよぉー。私が付けたわけじゃないからぁ、わからないけどぉー。まぁ、色々と試してみるとぉー良いわぁ。」

メニューには、プロフィール、ステータス、調合リスト、装備品確認、パーティー一覧、呪術一覧、スキルがあった。

その中でも一際目を引いたのは、スキルであった。

中を覗くと、いくつもの付与スキルがあった。

それが、どれもチート級である。

全属性耐性、全属性特攻などと。

彼はその次にプロフィールを見た。

プロフィールには、大抵パワーなどのキャラパラメータがある。

他にも、容姿、種族、年齢、組合(ギルド)の名前、属性、使用武器が書かれている。

彼は、容姿及び種族、年齢は「リヴィア・クロス」のステータスのままなのである。

「まさか。これって。やばくね?」

自分の得意分野が出てきて、尚且つ使い慣れた自分のキャラがそのまま自分なのだから。ここに来て転機が訪れたのかもしれない。

彼はにやけがとまらない。

「なに、ニヤニヤしてるのよぉ?嬉しいことでもあったのぉ?」

「いや、なんでもない。」

「そぉ?」

「俺は決めた!」

彼は立ち上がった。今の彼の目には恐れも何も無い。あるのは闘争心だけ。

「何を決めたのぉ?」

「この世界を攻略してやるよ!」

ヴァルキーは頷く。

彼は颯爽と歩き出す。

先程の悩みや不安はもう無い。

今あるのは、興奮と喜び。

そして、優越感だけだ。

「そっちは違うわよぉ?街は反対方向よぉ?」

いきなり出だしで、やらかした。恥ずかしい。

テンプレ展開にしてかっこよく立ち去ろうとしたら間違えるなんて‥‥‥。人生始まってからの初ヤラカシだ。

あっ。バットスキルの「方向音痴」が発動してしまったらしい。

気を取り直して歩いていく。


その、後ろ姿を見たヴァルキーは、コソッと呟いた。

「楽しみがいがありそうね。アノ方も喜ぶわ。」

と、切りに包まれた森の中にきえていった。


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