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18〜門

「貴様にはこれを付けてもらう」


「これは?」


アーノルドは犬の首輪のような物を大地に差し出してきた。


「これは隷属の首輪だ。命令に背いたり、首輪を主人の許可なしに取ろうとすると首が締まりいずれ死ぬ品物だ」


首輪は少し禍々しいオーラのようなものが溢れでているように大地には見える気がした。


なるほど、これで奴らは日本人を連行して行ったのか。


「わかった」


大地はアーノルドから差し出された首輪を装着すると、違和感を感じた。


ん?この首輪、首が締まる前に力ずくで取れそうだぞ?


別に今取り外す意味もないし、少しこのままでいるか。


「今の主人にあたるのは儂だ。くれぐれも命令違反を行うなよ。首が締まり、苦しむだけだからな。」


「あぁ」


「では、儂についてこい」


アーノルドは大地を連れ、廊下を歩き、学校の外に出ると大きな影が現れる。


上空を見ると、身体中分厚そうな漆黒の鱗で覆われ、何物でも切り裂かんとする鋭い爪、胴体と同等の大きさを持つ大きな翼、全てを食らいつきそうな大きな口と牙、これだけならとても恐ろしい存在に見えそうであったが真紅の眼はとても悲しい目をしているように大地には見え、恐ろしいものだとは思えなかった。


そしてその物体はアーノルドの前に降り立った。



「でかいな」


「これが貴様らの軍を圧倒したドラゴン、プランだ。こいつは七神竜の子供でな。捕まえるのに苦労した。今は神級の隷属の首輪のおかげでおとなしいが、付ける前はそれはもう暴れまくるドラゴンだった」


七神竜?神級?という聞いたことのない言葉に大地は首を傾げていた。


アーノルドはプランの背中にある鞍に乗り込む。


「さぁ、こいつに乗れ。貴様は高級な奴隷になるであろうからな。しっかり儂が門まで送ってやる」


大地は初めて見る生物に少し興奮しながらもアーノルドの後ろの鞍に座る。


「では行くぞ」


アーノルドはそういうとプランの手綱を握り空に飛び立つ。


するとそこに一匹のワイバーンに乗った騎手が近づいてきた。


「アーノルド様、あと少しでこの場所にいる人間は全て捕獲完了します」


「おい、約束は守れよ」


大地はアーノルドと交わした約束を守るように促す。


「うむ、勿論だ。儂だって約束は守る」


「何者だ、貴様?アーノルド様にその口の聞き方は許さんぞ」


騎手は大地がアーノルドに対してタメ口で話しているのに疑問を感じていた。


「気にするな。それよりその捕まえた奴等を全て解放して、撤退の準備をせよ」


「は?解放ですか?そんなことしてよろしいので?それに撤退?一体どういうことですか?」


騎手の頭の中には疑問がいっぱいだった。


「儂の命令に対して質問で返すな。貴様は返事だけしてをさっさと儂の命令を実行に移せ」


「はっ!失礼しました!」


アーノルドの怒りを買いそうになり、騎手は慌ててワイバーンに指示を出し、離れていった。


「あんたって部下に思いやりがないんだな」


「使えない部下に思いやりなんかあるものか。命令を淡々とこなせば良いのだ。そういえばお主、魔法が使えらようになった最初の時は魔力切れでヘトヘトしていたのになんで途中からずっとピンとしておるのだ?」


「え?魔力って簡単に回復するもんじゃないのか?」


「魔力切れを起こしたら、普通は立ってられるのもおかしいのだ!普通は気絶して一、二時間経ってようやく起き上がれるぐらいに回復するものだ。それなのに貴様はまだ10分も経ってないのに何故そんなに元気なのだ?何かスキルでも持っているのか?」


「少し前に魔法とかいうのを使えるようになった俺がそんなこと知るわけないだろ?きっと魔力がすぐに回復する体質なんだよ、それに今そんなこと考えてる暇はあるのか?」


「むぅ、それもそうだ。速く門に参らなければならない」


アーノルドは不詳了承ではあるが、手綱でプランに指示を送る。


プランは加速を開始する。


最初は気にすることもない速度であったが、段々と速度は上がっていき、風を切るような速度に変わっていた


うぉ!?速ぇぇぇ!!あれ?なんでこんなに速いのに風が当たってこないんだ?


そんなことを思っている間に雪と初めて穴を見た公園の近くに到着していた。


「でかいし、かなり速いんだな」


「当たり前だ。こやつは七神竜の子供だぞ。我がフランマ帝国の中で最も速いドラゴンだ」


「へぇー、あんたってそんなに偉い存在だったんだ」


「全く、貴様はいつまでたっても口の聞き方が直らんな。まぁ、お前を売り飛ばすまでの間儂が辛抱すればいいだけの話だ。あと、プランは侵略組に貸し与えられたもので、儂のものではない」


プランに乗ったまま大地とアーノルドは公園に近づいていく。


公園は少し前に見た公園とは大きく異なり、大きな要塞のようになっていた。そこらかしこに兵士が配置され監視をしており、鼠一匹入らないような状態であった。


「随分、厳重な監視をしてるんだな」


「ここから儂たちの世界に行き来できるからな、それに最初は門を壊そうとしてくる輩が休む間も無く攻めて来よったから、こんな要塞を作るしかなかったのだ」


兵士たちはプランの姿を見ると要塞の扉を開ける。


「確認とかしなくていいのかよ」


「儂以外にプランを乗りこなす奴は今はこの世界におらんからな、プランがいるということはは儂がいるという証明である」


「ドラゴンって操縦するのそんなに難しいものなのか?」


「当たり前だ。ワイバーンはそこそこの技量があれば何とかなるだろうが、ドラゴンはか技量が必要であり、尚且つ力でも自分が上と証明せねば、首輪をつけていても襲われる。ドラゴンを乗りこなすというのは自分はドラゴンより強いという証明にもなるのだ」


「へー、あんたって色々教えてくれるんだな」


「何、儂は貴様より博識で力もあるということを教えたかっただけである」


門を潜るとそこには異様な光景が映し出されていた。


ボロボロの服を着た人たちが首輪を付け、逃げられないように鎖で手首足首を繋げられていた。


兵士はその人たちを鞭で叩き、移動させていた。


捕まった人たちの目には希望はなく、絶望でうめつくされていた。


「首輪つけてるのに、何故、鞭で叩く必要がある?」


「こやつらはちょっとやそっとの首の締まりじゃ言うことを聞かない奴がおるからこうして力で屈服させておる」


「ここにいる人たちはこの街の住民か?約束を破るのか?」


「いやこの街の住民もいるであろうが、そやつらは貴様のように逃げ回ってやっと捕まえた奴等だ。ほとんどはこの街より離れた場所にいた奴等であろう。しかも約束というのはあの避難所にいた奴等を見逃すというのが約束だ。こやつらはあの約束の中には入らん」


やっぱ無理か。


助けて上げたかったんだけどな。


「何でみんなボロボロの服を着てるんだ?」


「この世界の服はなかなか良い材質であるからな、全てを回収して、奴隷には見合った服を着させておる」


「俺はいいのか?」


「お前はあの奴隷たち全員売っても、差がまだあるような値段になるだろう、だから見た目を良くするためにそのままで良い」


俺の服ジャージなんだけど、まぁ着心地いいし別にいいか。


「おい!お前加藤だろ!?」


そんな会話をしていると捕まっている人たちの中の1人が声を上げた。


「ん?」


大地はその聞き覚えのある声が聞こえた方向に視線を移す。


そこにいたのは大地が部活に入っていた時、嫉妬で大地をリンチを仕掛けたが、返り討ちにあってボコボコにされた内の一人の先輩であった。


「こんなところで会うなんて奇遇ですね。先輩」


「何でお前は服を着たままでそんなでかいのに乗ってるんだ!?助けてくれよ!」


「いやー、実は僕も捕まってるんですよ」


「うるさいぞ!」


兵士が先輩に向かって鞭を打つ。


「ギャァァ!痛えよ。加藤あの時はすまなかった。だからよ、頼むよ、助けてくれよ」


「うるさいと言っている」


兵士の鞭は再び先輩の背中に当たり、大きな音が鳴る。


「ギャァァァ!」


先輩は悲鳴をあげるとその場に倒れた。


先輩の背中からは皮膚が破け血が流れていた。


兵士は先輩を引きづり、持ち場に戻って行った。


「あんな感じにこいつらは痛みですぐに倒れてしまう。それなら獣人の方がマシだと思っていたが、手先がかなり器用と聞いたから命令を背かない奴らには、基本は丁重に扱っておる」


今の俺には何もできない、すまない。


大地は心の中で捕らえられた人たちに謝罪していた。


そんなことをしているうちに要塞の中心付近に到着し、プランは停止する。


「よし、着いたぞ。降りろ」


大地はアーノルドに促され地面に降り立つと、近くにはそらなりの数の捕まった人たちが立たされていた。


皆、大地を見るが大地に首輪を見るなり、すぐに視線を外し、自分のこれからのことを想像し絶望していた。


「貴様はそこで待っていろ。手続きをしてくる」


アーノルドはそう言い、少し離れたところの兵士のところに向かい、何かを話し込んでいた。


「これがあの時の穴か。厳重に守られてやがる」


暇になった大地は、穴を確認する。


最初見た頃はただの穴であったが、今では立派な扉が建造され、もう穴は穴ではなく、門に生まれ変わっていた。


そんな門を大地は観察していると手続きを終えたアーノルドが戻ってきた。


「貴様はそこの奴隷たちと一緒に門を潜りあちらの世界にいってもらう。儂は付いていけないが、首輪もつけてあるし、儂の部下でも何とかなるだろう。これで貴様とはお別れだ。団長の意思を背いてまで貴様を捕まえたんだ。さぞ高値で売れることを楽しみにしているぞ」


「俺はあんたとの会話が楽しかったから、別れるのは残念だ」


「儂は敬語も使えんやつから離れられてせいせいする。それでは楽しい楽しい奴隷生活を楽しむのだな」


アーノルドはそう言い残し、プランに乗って去って行った。


「何が楽しい奴隷生活だ。すぐに抜け出して、お前たちの神をぶっ飛ばしてやる」


大地は独り言を呟いていると、赤色の服を着た男が近づいてきた。


「貴様がアーノルド様が言っていた奴隷だな。私はアーノルド様にお前だけを監視しておけと言われているロイだ。命令も基本は聞くと聞いている。着いてこい」


俺だけの監視役か……厄介だな。


「はいよ」


大地は気持ちを顔に出さず、ロイの後ろに並び歩き出す。


そして大地は先ほど一緒行くと言われていた捕らえられた人たちの後ろに到着すると、十数人の兵士が周りを包囲する。


「ではこれから貴様たちをイグニス帝国の奴隷として護送を開始する。怪我をしたくなかったら、妙な真似はするなよ」


兵士がそう言うと閉まっていた門が開く。


兵士たちは歩き出し、捕らえられた人たちも門に向かい歩き出す。


大地も歩き出したが、大地は今から敵陣に攻めるというより、これから未知の世界に行くというワクワク感で一杯であった。

いつも読んでいただきありがとうございます!

やっと異世界の話になります!!

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