15話〜お人好し
エノは両手で大地の身体に抱きついて唇を重ねてきた。
「なっ!?」
あまりにも突然の出来事に、大地は目を見開き反射的に、エノを突き飛ばし、エノは尻餅をつく。
「いったー。なんてことをするんだ君は!」
エノはお尻をさすりながら、大地に抗議をする。
「お前が悪いんだろ!?何なんだ!?加護を授けるから目を閉じろって言ってたから閉じてたのに違和感あると思って目を開けたら、キスしてたから突き飛ばしただけだろ!」
俺の初めてがこんなところで!
「えっ、初めてだったの!?そ、それはそのご馳走様です」
「何、顔を赤くしてんだ!モジモジもするな!それより何でキスしてきたんだよ!?」
「僕、今まで加護を与えるなんてしたことがなくて、与える方法を他の神に聞いたところによると接吻をすることにより与えられるって聞いたからやりました。だからそんなに怒らないでよ。僕だって初めてだったんだから、今回は水に流そうよ?ね?」
エノは大地の疑問に答え、自身も初めてだからということでキスをしたということで、キスをされて怒っている大地に許しを請いてくる。
「ったく、そういうことなら先に言っといてくれよな。そしたらまだ気持ちの準備とかできてたのによ」
せっかく力を授けてくれたっていうのに、そんなに怒ることはないよな。
実際キスといっても、俺の肉体はあっちでまだ戦ってるっていうわけで、精神体の俺がキスされたって訳だから、セーフということにしておこう。
「すまなかったね、僕だって恥ずかしかったんだ。今からキスをするって言っても君は拒んだだろうしね。だがこれで君には僕の加護がついた。君の才能と僕の加護があればそんじゃそこらの奴らより、君の方が強いはずだ!だからさっき伝えた作戦通りよろしく頼むよ。もし君がこの世界を救うことができたのなら、君の願いを叶えてあげるから頑張ってくれたまえ!」
エノは大地の手を握りながら告げる。
「はぁ、願いとかどうでもいいけど、今の生活は嫌いじゃないからな。やってみるよ」
あんまり力がついたっていう実感はないが、早く雪たちを助けに行かないといけないしな。
「よくぞ言ってくれたね!ではそろそろ惜しいがお別れの時間だ。君と話ができて楽しかったよ。もし本当に困ったことがあれば心の中で僕の名前を呼んでくれ!さしたら僕はいつでも君の力になってみせるから」
エマは微笑みながら両手を掲げると、大地の中心に半径3メートルぐらいの魔法陣が現れた。
魔法陣から光が溢れ、光は大地の身体を優しく包み始める。
「エノ、お前は俺と初対面なのになんでそんなに全面的に信用してるんだ。もし俺がお前の力を悪用したらどうするんだ?」
「さっきも言っただろう?僕は君が赤ちゃんの時から見守っていたから信用できるのさ!君との会話の中でも君の本性がさらに分かってしまったから、こうして全面的に協力しようと思ったんだ。君は困ってる人をみたら見捨てることができない。嫌々ながらも自分が損してでも助けてようとするお人好しなんて今まで僕が生きていた中で初めて見つけることができたんだ。だから僕も君のその損な役回りを手助けしたいと思ったまでさ!君ならきっとこの壊されそうな世界を救うことができる。神に打ち勝ち、人々を救うことができるとそう信じているよ。僕はこれからも君を見守ろう」
全く神ってやつはとんだ節穴だな。
俺がお人好しなわけないだろ?
自分や知り合いのことだけでいっぱいいっぱいなのに赤の他人のことまで考えてられるか。
まぁ、こんなことがエマに知ったら加護を外すとか言われからないからな、さっさと雪たちを助けて、あっちの世界に行って襲ってくるやつらをぶちのめしてやるぜ。
「あぁ、この世界を救うためにできるだけ頑張るよ。」
大地はエマが言っていた自身の性格を心の中では否定し、表面上では拳をあげ、エマの言葉を否定をせずにエマの応えにのった。
「頼んだよ」
エマが短く告げると魔法陣の光は大地の全身を呑み込み、大地もろとも消えて去った。
そして何もない空間にポツンとただ1人が立ち尽くしていた。
「いや〜久しぶりの会話は楽しかったな〜。しかもずっと話したかったあの子と会話ができるなんてね。加護もあげることができたし満足だ。でも加護をあげると心の中を読めなくなるなんて予想外だったよ。世の中、神でも知らないことだらけだ。あの子の本音を読めなくなってしまったのは残念だけど、今まであの子を見守ってたんだ。あの子はお人好し以外の何者でもないってことはよく分かるさ。きっと世界を救うために奮闘してくれるだろう!それにしても加護を授けた時から、胸がドキドキするのは何でだろう?あの子のことが頭から離れない。おかしいな、初めてのことをしたから少し疲れたのかな?少しベットで横になろう」
エノは自身に初めて恋心を抱いたことに気づいていなかった。
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