13話〜神からのお願い事
「さて、もうしっかり自己紹介しておこう!僕は雷を司る神。みんなには雷神や鳴神と言われている。好きに呼んでくれたまえ!さて加藤大地君、君にはこの日本、いやこの世界を救って欲しいんだ!」
雷神は大地に向かって頭を下げる。
ふと大地の頭には一つの疑問が生じる。
「日本が今ヤバいから救って欲しいのは分かるんだが、何で世界まで救わないといけないんだ?」
「今、この国、日本は侵略を受け、国がまともに働いていない状態ってことは君も知っているだろう?そんな状態では日本人は捕まっていく一方で、もうかなりな人たちが捕まり、そしてあちらの世界に連れていかれているんだ。奴らはあらかた日本人を捕まえると次は日本の周辺諸国を襲い始め、いずれは世界を侵略するだろうね」
「でも日本が襲われているのは世界中に知れ渡っている筈じゃないのか?日本はしっかり対策ができなかったから侵略を許したかもしれないけど、周りはしっかり対策しているはずだろ?」
「うん。確かに世界中が日本が襲われているのを見て、日本を除く主要諸国が結束している。最新の軍事兵器など取り揃えて準備をしているけど、それだけでは絶対にあちらの世界には勝てないんだ」
「奴らのあの結界があるせいか?」
「よく分かったね。そうなんだ、あちらの世界はこちらの世界と比べてみると非常に劣っているんだ。あちらは中世ヨーロッパぐらいの時代風景で、武器も剣と弓みたいなものしかない。治安も悪く、いつでもどこかで争いが続いていて、おまけに人を襲う魔物まで蔓延っている。そんな世界の住民たちに何故この世界が負けるのか。それは魔法、あちらの世界の神が人々に教えた神界の技。魔法は強力無比、ただの物理攻撃なんかじゃ魔法に勝つことはできない。勝つことができるのは同じ魔法だけ。そんな魔法の結界を壊すことなんて、どんなに強力なミサイルやレールガンのようなものでも壊すことはできない。一方的に攻撃を受けてあっという間に世界は侵略されるというわけさ」
「なるほど。このままだと世界が侵略されるというのは分かった」
「では改めて、君に問おう!加藤大地君、君は世界を救ってくれるかい?」
雷神は微笑みながら大地の返事を待つ。
「嫌です」
「よし、そうこなくっちゃ!じゃあ早速僕が建てた作戦を聞いて‥‥‥今、なんて言った?」
「お断りします」
「何で!?世界のピンチなんだよ!?このままだとこの世界は壊されてしまうんだよ!?」
「いや、俺だって今の生活が壊されるのは嫌だけど、何で世界を救うのが俺なんだよ。俺にはそんな力もないし大それた役はできない」
世界を救うとか何で俺がしないといけないんだよ。
面倒くさそうだし。
「はぁー、面倒くさいってのが君の本音か。君の性格は知ってたけど、全く困ったものだよ」
あぁ、そっか。こいつ、心の中の声が聞こえるんだった。
「神に向かってこいつ呼ばわりとは、失礼なやつだね、君は。分かったよ、君がやってくれないのなら世界はこのまま奴らに占領されて、君の家族や幼馴染、友人もみんな捕まって、みんな奴隷となり、惨めな人生を送っていくことになるだろうね」
む、ずるいぞ。家族や雪の話を出してくるのは。
大地は文句言いたげな顔をしながら雷神を睨む。
「一つ教えてあげる。何で君じゃないといけないのかを、それは君がこの世界の住民で己の魔力を使い、初めて魔法を使えるようになった人であるからさ!神でさえ上級の神に初めて教えてもらってそんなすぐには使えないものさ。それなのに君はまぁ痛そうだったけど、魔法を喰らっただけで魔力を感じ取り、魔法を発現させたんだ。これは普通のことではないんだ。君には神、いやそれ以上の魔法を使いこなせる才能があるが眠っている。だから僕は君をここに呼んだんだ」
「何であっちの世界の奴らはこちらに襲いかかってくるんだ?」
「それはあちらの神たちの仕業さ。本来、神というのは世界のバランス、秩序を守るのが仕事なんだ。だがあちらの神たちは人々の争い、人の生き死にを傍観するのが好きでね。あちらの世界は争いが絶えない酷い世界を創ってしまったんだ。こっちの世界も争いは起こってしまってるんだけどね。そんな中、いつまでも同じ剣や、弓だけの争いだけではつまらなくなった神たちは天界の技、魔法を授けたんだ。魔法は強力だから、使われるようになったおかげで争いは激化、人が減る一方になってしまったんだ。人が減ると当然、争いは少なくなる。争いを生むために神たちは彼等に神託を下し、力、道具を与え、僕たちの管理する世界にまで手を出してきたってわけさ」
「なるほど、争いを望む神たちによってあいつらはこっちにやってきたってわけなら、それならこっちの神がなんとかすればいいじゃないか」
「それは僕たちの力ではできないんだ。神の力というのは人々の信仰によって生じるんだ。信仰が多ければ多いほど力は増幅されるけど、その逆もある。あちらの世界はほとんどの人々は神を信仰しているけど、こちらの世界の人々は信仰をしている人は少ない。それだけであちらの神、こちらの神では力の差ができていて、僕たち神では止めることは不可能なんだ。そんなどうしようもない時に現れたのが君さ」
雷神が大地に視線を向ける。
「嫌だ。俺に神に勝てる力なんてない。俺はクーラーの効いた部屋でのんびり過ごしていたいんだ」
折角、今までやっきた部活を辞めたんだ。俺は自堕落な生活が過ごしたいんだ。
「まったく、ここまで言っているのに君は本当に困った人だ。とりあえず説明を続けよう。君には神をも超える魔法を使える才能がある。それだけじゃない、君の身体能力も異常だ。神とまではいかなくても君が努力すれば神と同等ぐらいにはいけるだろう。君も自身の身体能力には、何か心当たりがあるはずだろう?」
確かに言われてみれば、今までどのスポーツも苦労することなくなんなくやってこれたことがあるな。
中学生三年の時、友達とサッカーしてただけなのに全国大会常連校の強豪校にスカウトされたことがあったりして、サッカー部のやつらに妬まれた嫌な思い出がある。
「うんうん、あれは確かに可哀想だったよ。ただ君はサッカーして遊んでいただけなのに、サッカー部の人たちには妬まれた嫌われるし、そこから情報が漏れて、君は色んな強豪校からスカウトが来て大変そうだったね。市の中学校の水泳大会や陸上大会に出たら、君は瞬く間に一位になって、観客からはヒーローになるけど、出場者たちに妬まれ者になるのが君のテンプレだもんね」
「いやいや、待て待て。何でお前がそこまで知ってるんだ?」
「僕は神だよ?君みたいな才能の持ち主がいたら、君の人生を見届けたくなるでしょ?ずっと見届けるだけだと思ったけど、まさかこんな事が起きて、君と話すことになるなんてね。悲しんだらいいのか、喜んでいいのか分からないね」
こいつ、ストーカー発言しやがった。
空から俺のことがずっと覗かれてるなんて思うと、最悪だ。
俺が風呂入ってる時とか、ナニしてる時とかも見られたらとか、どこかに籠りたい。
「まぁまぁ、待ちたまえ。ちゃんと君が恥ずかしがりそうな時とかはチラ見をする程度でしっかり見てないから安心したまえよ」
「見てるんじゃねぇかよ!嘘でも見てないって言ってくれよ」
ホントに最悪だ。
「まぁ、この話は置いといて、僕は君を見ていたんだ。だから僕は分かる。君が嫌だとは言っているけど最終的には君はやってくれると」
「はぁ、分かったよ。俺は一体何をすればいいんだ?」
結局やらせるんだったら早めにやって、のんびり過ごしたい。
「君はホントにめんどくさがり屋なんだね。君にやってもらいたいことはあちらの世界に赴き、神を殺してほしい」
雷神は大地を見つめながら言い放った。
説明回みたいになってしまいました。
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