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烏(からす)冬の珍事

作者: 千葉右郎

食後のひと時、ふと窓の外の景色に目を落とすとそこには思いがけない情景が………

 市役所横の信号のところで、冬枯れて葉をすべて落とし丸坊主になったプラタナスなどの街路樹の間を縫うようにして舞い上がってきた一羽の烏が、信号の上のセンサーにとまった。

よく見ると何やら小さなカエルのような小動物を捕獲していて、捕食しているようなのだ。その烏がくわえていた獲物をセンサーの上に置き、突っつき始めたその刹那、もう一羽の烏がその後を追うように飛んできて、先刻の烏が止まったセンサーの支柱に同じく取り付けてある右折と直進可を示す道路標識の一段小高くなった円盤の上辺にとまってキョロキョロとあたりを見渡している。

くだんの食事中の烏も同じくキョロキョロと見渡している。2羽でキョロキョロ、キョロキョロ、ひとしきりキョロキョロを繰り返した後、道路標識の上の烏がじれてセンサーの上の烏の一段低い信号機の上に移動して首だけセンサーの上に出した状態になったところで、センサーの上の烏が飛び立った。これで誰はばかることなくその場所一般を獲得した後追いの烏は、おもむろに、先ほど飛び去った烏によってすっかり食べ散らかされた小動物の残骸を突っつき始めた。

「烏の世界にも上下関係があるのだ」とそれは私のどんよりとした薄日のさす日常の中で一瞬巻き起こった目の覚めるような冬の珍事だった。

烏の世界にもおそらく上下関係があるのだろう。冬枯れの自然の中に作者が見た小さな闘い。

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