~ 八岐大蛇 … 私的物語 ~
前略 …
下流へと進む 須佐之男命 …
シクシク … シクシク …
と 泣き崩れる 親子を見つけ た …
「おいっ!何を泣いている!昼間は 笑え! 姉上も 其のほうが 嬉しかろ…」
と ちょっぴり ホームシック気味な 須佐之男命 が 言うと …
父親 は 涙を払い …
「申し訳ありません … 立派な出で立ちのお方様 … 此には訳がありまして …」
と応えた 須佐之男命は …
「訳 ? どんな訳だ 言ってみろ!」
と 聞いた 父親 は 辛そうな顔をして …
「実は… 毎年 川の水が氾濫して 大切な稲田を 呑み込んでしまうのです … 場所を変える訳にも行きませんし … 其所で 祈祷師に伺いましたところ … 「 氾濫は 八岐大蛇の怒りじゃ! 八つの頭を持つ大蛇! 荒ぶる神の怒り! 鎮めるには 毎年 蛇神様の季節に 村の生娘を一人川に捧げよ … 」と 言われまして … 我が家には 娘が 八人おりましたが 此の子が最後の娘で御座います … うっ… うっ…今年も 八岐大蛇の現れる季節となりましたので 別れを惜しんでいたのです…うっ… うっ …」
と 父親 は 再び涙を流した …
「娘 八人? お父さん頑張っちゃったねぇ~♪ でっ 何? じゃぁ 毎年 此の川に 生娘が 一人 生け贄として 捨てられちゃってるって訳 ? っかぁ~ !勿体ない! あのさ 可愛いは正義 ♪ だよ ! そんな 可愛い生娘達を … バチ当たりは その 祈祷師だっつぅ~の! そいつ ス巻きにして 川に叩き込めよ!」
と イラつきながら 話し チラリッ と 娘の横顔を見てから …
「まぁ … 俺ならぁ ~ 助けられない事も なくなくなぁ~い !其の代わり 其の娘 嫁にくれない? そしたら 助けても 良いけどぉ~」
と 少しハニカミ そう告げた …
父親は 少し チャライが 中々 斬新な発想と奇抜なファッション… ユーモアセンスも持っているな 面白い男だ 懸けてみるか と そう思い …
「本当に 川の怒りを鎮めてくれるのでしたら 娘を嫁がせましょう! 」
と 約束をした …
約束を取り付けた 須佐之男命 は …
「娘 !名前は …」
と 娘の顔形を 正面から確認したくなり そう聞いた …
「櫛名田比売 …」
と しゃがんでいた娘は 須佐之男命 を 見上げて 応えた …
櫛名田比売 の 剰りの 美しさと 可愛らしさに …
一目 惚れって … 信じますか … ?
俺は … 信じます …
と 須佐之男命 は 心の中で そう呟き ポッ!と 頬を紅く染め …
「俺は 須佐之男命 !」
と 平常心を装おい 男らしく応えてみせた …