魔物娘ってかわいくね?
「はい、今日の授業では自分の家にしかないと思えるもの。もしくは、自分が一番大事だと思えるものを作成してもらいます。絵で表しても良し、少し凝って版画でも問題ありません。どんな下手な作品だとしても、抽象的過ぎてわかりにくかったとしても、きちんと採点はしますので。さらに、高評価を得た生徒には次回行う課題を免除できる権利も与えます。では、課題作成開始!!」
一番大事なものなんて決まってるじゃないか!俺の一番大事なものは、俺の人生を変えた異世界召喚小説をたくさん収納している自室だな!!どの方向を見ても本棚があるので、自室は俺にとって砂漠のオアシスと同じ場所だ。絵を描いたほうが楽だけど、凝ったほうが高得点貰えるらしいから版画で自分の部屋を作ってみるか。よし、作るものが決まったけど、黙って作るのも退屈ということでいつも通り素直に話しかけることにする。
「なあなあ。魔物娘って可愛くね?一家に一人はほしいと思うがどうよ?」
素直は紙粘土で課題を作っていたようで、こちらを見ながら粘土を捏ね続けている。
「お前、またいきなりだな。ってか魔物娘ってなんだよ。」
「おいおい、この前渡した本の中にもいただろ。簡単に言うと、ウサミミや猫耳が付いている種族だよ。他にも、アラクネ、ドラゴン、ドリアードといった様な。見た目が人っぽいけど、魔物の特徴が身体にあったり、能力を使えたりする女の子を魔物娘って言うんだよ。」
「・・・そうか、ああいうのを魔物娘って言うのか。」
「そうそう。で素直はどうよ?魔物娘が存在するなら、どんな種族がいい?俺は誰でも問題なくOKだけど、強いて言うなら王道の猫人族だな。」
「猫人族ねぇ・・・。そんなの現実世界でも猫耳を付けた女の子で代用できんじゃん。」
いや、確かにね。兎人族も猫人族も見た目は耳を付けた女の子ってだけだけどさ。
「それにお前、ドラゴンタイプの魔物娘が傍にいるってどうよ。どんな見た目か想像するのが難しいけど、ドラゴンってことは体の表面が竜麟なんだろ?抱き着かれでもしたら大ダメージ必至だな。」
「笑いながら言う言葉じゃねぇよ・・・。」
「はいはい、君たち喋っているけど課題はどうなのかな~?・・・ん?早川君。君が作っているのは何かな?」
先生が素直の作品を見て疑問顔をしている。俺も話に乗ろうと、彫刻刀を置いて素直の作品を見て驚いた。素直が課題の条件を間違えるはずはないと思うけど、でも素直が作っているのって・・・
「先生が課題の条件で最初に言っていた『自分の家にしかないもの』を紙粘土で作っています。課題の題材として間違っていないと思いますが。」
「確かにその言葉通りなら問題ないですが、早川君が作っているそれは、人の身体にあるはずの両腕の代わりに翼?がありますよね。これはあれですか?家にあるアニメのキャラクターフィギュアを作っているのかな。」
「違いますよ。そんなのどっかのオタクの家に行けばあるようなものじゃないですか。そんなのじゃ課題として成り立たないですよね。」
「それじゃあ早川君は、今君が作っている翼がある人が家にいると言ってるのかな?それとも教師をなめているのかな?下手な作品でも抽象的な作品でも採点すると言いましたが、説明できない様なありもしない課題には点数は付けません。最初から作り直してください。」
素直に忠告した先生は他のクラスメイトの作品を見に行ってしまった(俺の作品は無視ですか)。そちらでは先程とは打って変わって作品を褒めたり、足りない箇所のアドバイスをしたりしていた。そんな先生から素直に目を向けると、無言で自分が作っていた有翼人種?を見続けていた。心配になり話しかけようとしたが、急に携帯を出して電話をし始めた。
「もしもし、母さん。うん素直だけどさ。フーちゃんに代わってくれる?うん、ありがと。」
おいおい素直。今授業中だぞ。ほ、ほら。携帯使っていることに気付いたから先生怒ってんじゃん。
「(有也ちょっと黙れ)あ、フーちゃん?素直だけど、今から高校の美術室に来てくれる?うん。今回は俺がお願いしてるから大丈夫だよ。もし怒られることになっても、俺だけが怒られるから。うん、早く来てね。」
「・・・早川君。今授業中なんだけど、携帯を使ったら没収されても文句ないよね?」
「はい、すみません。もう用事は済みましたので。携帯は没収してください。授業中の携帯使用に関しては後で反省文を書いておきます。そうしたら携帯を返却してください。」
携帯を使ったことに関しては反省しているのか。手に持っていた携帯をそのまま先生に渡していた。先生はそのまま教卓に戻っていった。けど、さっきの素直の電話って誰かをこの教室に呼んでいたよな。確か、『フーちゃん』だっけかな?しかも最初に母さんって言ってたからおそらく自宅に電話してたのだろう。ん~何をしたいのかさっぱりだが、なんかワクワクしてきた。素直に直接聞いてみよう!!
「なあなあ素直。さっきの電話で呼んだ『フーちゃん』って誰のこと?」
「・・・聞こえてたか。まあどっちみち呼んだからばれることか。少し待ってろ、もうじき、ほら来たぞ。」
返事をした素直は窓まで歩いて窓を開けていた。何をしているのか気になり俺も窓側に歩こうとした時、「スーーーーちゃーーーーーんーーーーー!!!」という叫び声と風を切る音が聞こえてきた。なんだ?何の声だ?と窓に近づこうとしたが、素直がこっちに来るなと手で表していた。歩みを止めた時、俺の目の前にいたはずの素直が目の前から消えて、美術室の壁にぶつかっていた。騒ぎにやっと気づいた先生が音源、つまり素直の方に向かっていく。
「スーちゃーん、行ってらっしゃいぶりだね。おかえりなさいを言う前にスーちゃんに会えてとても嬉しいです。」
「俺もだよ。急なお願いを聞いてくれて助かったよ。用事とかなかった?大丈夫?」
「問題ないよ。もし用事があっても、スーちゃんに会えるならそんなのきゃせるするよ!!」
「きゃせるじゃなくてキャンセルね。ありがと、フーちゃん。」
・・・俺の目と脳がおかしくなったのだろうか。日頃から異世界が~異世界が~と言っていたから、こんな幻覚を見ているのだろうか。だが、俺の幻覚だとしたら、なぜ素直といちゃいちゃしているんだ。そこは俺じゃないのか?なんで。なんで。
「なんで有翼人種が素直といちゃいちゃしてるんだよ~!!これはあれか?リアルか?夢なのか?ええいどっちでもいいわ!!頼む、素直その位置を俺に譲ってくれ!!!」
「・・・お前はこの状態を見ても何も変わらんな。ま、俺的にはそっちの方がありがたいがけどさ。」
俺の目の前、素直にとびっきりの笑顔を向けているのは先程素直が作っていた課題にすごく似ている存在だった(つか瓜二つと言って良い)。有翼人種のちゃんとした年齢なんてわからないが、見た目は俺らと大差ないだろう。腰まで届く緑髪。目も胸も大きく。水色のワンピースを着ており、素直にぶつかった拍子に腰当たりまで捲れていたが、ホットパンツを履いているので下着は見えなかった。やはり両腕が翼になっているのか、素直を翼で包んでいる状態だ。こんなことは日常だというかのように「スーちゃんスーちゃん。」と連呼している頭を撫でている素直は
「先生、先程の俺の課題ですが、これで説明になりますか?もし問題ないなら、相当高得点をもらえると思いますが。それに加えて次回の課題免除の権利貰えますよね?あ、あと、出来れば反省文は書きたくないので携帯を返してくれるとありがたいのですが。」
ニヤニヤしている素直とそれにしがみ付いている人物を交互に見ていた先生は。まだ思考が追い付かないのか、特に考えた様子なく携帯を渡して出席簿の素直の欄に『かだいめんじょ』と書き、教卓に伏した。
携帯を返してもらった素直はフーちゃんと話し始め、ほかのクラスメイト達は課題を続けるもの、素直たちを見続けるもの、先生を気の毒そうに見ているものと別れていた。
俺はというと、そんな仲良さそうな素直とフーちゃんの傍に行き
「素直、いや素直さん、いやいや素直さま。俺にも頭を撫で、いや、会話をして、いや、素直さまからフーちゃんと呼ばれている有翼人種と思われるお方を眺めていてよろしいでしょうか!!!」
「眺めるだけでお前は満足なのか・・・。つか様付けはやめろ。」
と土下座をしていた。
課題なんて先生がやる気だしてないのにやるわけがないだろう。そんなのより男には土下座をしないといけない時がある、俺にはまさに今だ!!