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積木遊戯  作者: とにあ
セキの世界
9/13

鍵と好き

『心に鍵をしちゃダメなんだ』

 公園の遊具の上に腰掛けて足を揺らすフミが笑う。

 さっきから「帰ろう」と言ってるのに聞かずに笑っている。

『ねぇちゃんたちもユウたちも大好きだ』

 そう言いながら、遊具の上に立ち上がる。

 危ないと目を逸らしたいのにそらせない。

 わがままで身勝手で誰より愛しい末っ子のフミ。


『ねぇちゃんはユウが好き?』

 私は「当たり前だよ」って応えた。後ろにユウがいるなんて知らなかった。

 フミが笑ってユウに『だって』と言う。ユウは俯いていた。

 そんな舞台になった公園の遊具は今はもう無い。

 遊具の減った公園。

 街灯の灯りが浮かんでる。

「家族みたいな幼馴染だもの」

 その言葉を慌てて付け足した。その言葉を付け足した理由はわからない。

 ユウの反応は見れず、フミに「帰ろう」と促した。あの時のそれぞれの表情が思い出せない。

「セキ、俺、セキの弟じゃねぇからな」

 急にかけられたユウの言葉に体が揺れた。

 きっと、同じことを思い出してた。

 家族みたいな絆を思いたいのに。

 これは思い出を関係を崩したくない私の我儘。

「そーゆーんじゃなくて、セキが好きだから」

 ユウ?

「フミやミキねえだって気がついてたんだからな。セキは鈍すぎなんだよ」

 なにそれ……。

 どうして、いきなり今までを壊すようなことを言うの?

 家族みたいな好きじゃない好きってなに?

 ユウはフミが一番好きなんでしょう?

 フミの代わり?

 どうして、ユウがため息をこぼすの?

「冷えてくるし、帰ろうぜ」

 差し出される手。

 どうして、この手を取るのがこわいの?

「セッちゃん!」

 姉さんの声に振り返る。

 姉さんは酔っているのかフワフワしてる。

「仕事が上手くまとまったパーティごめんなさいしちゃったー。功労者なんだからご褒美で抜けてもイイよね」

 テンション高い姉さんの対応に回らないといけないことにどーしてか私は安堵していた。

 知ってるの。

 ユウが『フミの相棒』としてじゃなく『ユウ』として見ろと年下の弟みたいな存在じゃなく『ユウ』として見ろと望んでることくらい。


「おはよう」

 ユウとエレベーターでかち合う。少し気まずい。

「おはよ。ユウ」

 姉さんがユウに返事をする。ホッとしつつ、視線をそらす。

 エントランスの海の壁画。

「木陰から覗くようなストーカーはダメよ」

 笑って姉さんがユウをからかってる。

 私の答えはどこだろう?





 薄い月が夜に笑う月夜。

 非常階段からのお月見。

 痛いほどの冷たい風。

 答えを待ってくれるタイムリミットはいつまでだろう。弟みたいな好きじゃないってなんだろう。

 好きだよ。と伝えたい好きはなんだろう?

 それがわからないのが心細くこわい。

 『弟みたいなもの』から『男』と見なきゃいけないというのは少し重い。

 心細さにそっと非常階段に座り込む。

 がしゃん!

 金属の檻が音をたてる。すぐ横にユウの腕が伸びている。

「馬鹿か」

 ヒドイ。

「風邪をぶり返したらどうすんだよ」

 ユウの手が私の腕を掴んで引き寄せようとする。ホントは答えは出てる気がしてる。

 応えたいんだと思う。

 でもね。

 一歩がまだ踏み出せない。

 臆病過ぎるね。


「部屋に帰るわ」

 立ち上がるとユウがひどく近い。白のトレーナーに染みついた匂いは「ハンバーグ?」

「うん。晩飯が。お袋が呼んでこいって」

 つい笑う。どうしているんだろうって思ったのよね。晩ごはんにおばさまが誘ってくれてユウが呼びに来たらしい。

「姉さんも?」

「ん」

 問えば、ユウは言葉少なく頷く。

「呼んでくるわ。壁ドンなんてもうしちゃダメよ」

 ユウが小声で何か言ったようだけど、振り返ってもそっぽを向いたユウがついてきてるだけだった。






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