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積木遊戯  作者: とにあ
セキの世界
6/13

風邪ひき

 外ではしとしと雨が降っている。

 汗ばんだ体が気持ち悪い。

「お粥できたわよー」

 長期休暇を入れてたと言う姉さんが笑う。まとめての休暇を取らなきゃいけないんだって。旅行予定とか良いのかと聞いたら「実家に帰ってるわ」と返ってきた。

 風邪をひいて一人きりを思うと姉さんの存在がとても、とても心強かった。

 だから、少し心配。風邪をうつしちゃわなきゃいいけど。

「食べれそう? インフルエンザじゃなくて良かったけど、辛いよねー」

 なんとか、体を起して息を吐いた。

「はい、あーん」

 食欲がなくて美味しそうと思えないお粥をなんとか口に含む。なにか、おかしかった。息苦しく滲む視界。

「ミキねぇ! なにやったんだよ!」

 ユウの声が聞こえた。

 私はタオルで口元を抑え、ただむせていた。

「わさび粥よ!」

 ユウに応える姉さんの動揺しつつも堂々とした声。テンパってるならもう少し対応にためらいを持ってほしいよ。

 普段は好きだけど今はダメ。

 ユウと姉さんは他にも言い合っていたけれど、聞いている余裕がない。病人の横で喧嘩しないで。


 食事の後、姉さんが何か言いながら汗を拭いてくれた。

「入るぞ」

「ちょい待ちー」

 姉さんがユウをとどめて服を替えてくれる。じっとりと汗ばんでいない乾いた生地は心地よかった。

 ユウが作ってくれたのはたまご粥。

 デザートにバナナアイスとミカン。口とおなかに優しくてほっとした。泣きそうなくらいに。

「ありがとう」

 ユウにお礼を告げるとそっぽ向かれた。

「……ばーか。早くよくなればいいんだよ」

「ツンデレか?」

 姉さんうるさい。

 ユウが反応して騒ぎかけたけど、自重したみたい。

「ふたりともありがとう。おやすみなさい」

 ご飯を食べて着替えただけなのに疲れたらしく、瞼が重い。

「おやすみ。早くよくなれよ」

 ユウの声を導きに甘い夢を見る。

 たくさんのスイーツ。甘酸っぱい苺。

 ふと気がついた間接キス。

 なんてことないように振る舞って、ねえ。

 気がつかないでね。兄さんも姉さんもナオさんも、一番はユウ。

 ねぇ。

 こんな思いは、

 きっと、

 夢。

 眠る眠る。体が睡眠を求めてる。

『素直になりなよ』

 ああ、フミの声が聞こえる気がする。

 熱のまどろみ。夢うつつ。

 フミがいないのに。ユウはフミが好きなのに。

『フミの方が好きなユウ』を私はそれでもいいって言えるかな?

 ズルいよ。フミ。

『俺はセキが好きだよ』

 ユウにそう囁かれる夢から醒めて体を起こす。

 暗い室内には私だけ。

「ああ、やっぱり夢だぁ」

 小さく呟けば軋むような痛み。

 欲張りな自分が嫌だよ。







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