会いに行こう
ワゴン車からおりるとひゅうと冷たい風を顔に感じる。こぼれる息は白くふるりと体を震わせた私は薄いスカーフを巻きなおす。
アスファルトで舗装された道から舗装のないむき出しの土の道を歩き出す。しなびた雑草、踏まれて白っぽい砂の色。正面と横は細い木がうねるように伸びている。
視線を感じて振り返れば、兄の真剣な横顔。
その先で姉さんがナオさんと足を止めて談笑中。何故兄さんがわざわざ木陰に隠れてるのかがわからない。
「セキ、フミが待ってると思う」
「うん。行こう」
ユウのカタイ声に頷いてまた歩き出す。
ちらり振り返ると兄さんは姉さんの様子を影から見ている。
フミに会いに行く道の途中、そっと近道しようと手を引かれる。
踏みならされた雑草の薄いゆっくりと蛇行する拓かれた場所を歩くよりほんの少し険しめの坂を登っていく。
「俺、いつまでも子供じゃねぇからな」
何気ない調子で告げられた言葉。
息を切らせながら見上げたユウは子供には見えなかった。
背伸びしていた子供のイメージ。いつだってオトコノコだからって思ってた。
いつから背伸びは背伸びじゃなくなったの?
きっと、フミは前を向けって言うから。
ツンっと鼻の奥が熱い。
フミのことを思うと本当はその手を取ることはダメな気がしてる。
きっと、罰が待っているんだ。
ごめんね。
フミ。
フミと両親に挨拶した帰りに温泉に寄る。
前向きに好きな方向を向きたいけれど、それが怖いの。フミは怒る? 許してくれる?
「セッちゃん、水着買って混浴行くよ!」
「姉さん、そう言うと思って持ってきてる」
両親が元気な時、いつもそうしていた。だから、そう告げると姉さんがシブい表情に変わった。
無駄遣いになるでしょ?
「サイズ変わってないか冒険だわ」
えっと、胸の成長期?
「ユウとはどうなの?」
姉さんが長い髪をまとめあげながら聞いてくる。
「ユウはユウだよ」
視線を感じて姉さんを見返す。
「かわいい弟だわ」
「いや、そうじゃなくて、……いっか。ユウが頑張るでしょ」
なにを頑張るの?
首を傾げると姉さんが笑って背中を押した。
ぬくもりが優しい。
湯上がりに散歩する。
兄さんたちは湯上り地酒で出来上がった姉さんの対応を。私はユウをそこから連れ出した。ユウは未成年だしね。姉さんが妙に絡みそうだから。
肌寒く、それでも暖かな日差しにホッと息をつくと、まだ緑の多い紅葉を見上げる。
赤黄色緑に高い高い空の青。
ユウは血の繋がらない弟だよね?
私は心に言い聞かせるの。
ユウを好きになっちゃいけないの。




