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積木遊戯  作者: とにあ
セキの世界
4/13

写真と約束

 休みの日は部屋の掃除。

 連休だから兄さんと姉さんが帰ってくるって言ってたし。

 本の位置を直していたらぱらっと落ちてきた写真。

 うざそうなユウの首に腕を回して笑ってるフミ。

 その写真を前に動きが止まる。

 フミの我が儘にうざそうな表情をしても払いはしないユウ。

 約束したの。

 さいごの試合だから見に来てって言うフミに観に行くよって。

 何度も『絶対だよ』を繰り返すフミが妙にかわいくて笑って頷いた。

 『約束だよ』って。

 約束だったんだ。

 電車の乗り継ぎや慣れない道が不得意な私のためにユウが迎えに来てくれて一緒に会場に向かった。

 同窓会に顔を出したりするんじゃなかった。

 フミも両親も会場には現れなかった。

 はぐれないようにって繋いだユウの手が、……嬉しかった。

 罪悪感を抱いたのは私? ユウ?

 試合が終わって首を傾げていたら、「セッちゃん、ユウ」ユウの兄が私達を手招いた。

 事故があったと。

 説明されて意識が遠くなった。

 命が、運命が売り買いできるならせめてフミだけでもと望むのに。

 ギュッと握られた手にユウを見上げた。

 ショックを受けてるユウはとても辛そうで、ああ、ずっと好き同士な二人だったから。そんな気持ちが私を引き戻した。

「ただいま」

 どれだけ心を飛ばしていたのか、後ろからかけられた声にびくんとしてしまう。

「おかえりはないの? セッちゃん」

 からかうような優しい声に振り返る。過去から今に戻ってくる。笑顔を作って。

「おかえりなさい。兄さん」

 嬉しそうな兄さんに抱きしめられて持ってた写真が床を滑る。

 私が動くより先に拾い上げた兄さんがフミが写ってる部分のすぐ上を軽くはじく。

 あとで整理しようと箱に入れられる様子を見ていた。 

「夕飯は? まだ決めてない? じゃあ、買い物に行こうね」

 サクサクと決めていく兄さんはしっかりしてる。

「広くて管理出来ないようなら、一緒に住めばいい。仕事なんかしなくてもセッちゃんくらい養えるからね」

 ここはもともと六人家族で住むように両親が購入した家。兄さんたちは職場の近くでマンションを借りている。そう、私一人には広すぎる家なのはわかっている。でも。

「兄さん」

「思い出が辛いなら忘れることも大事だよ」

 兄さん、そんなの無理だよ。

 変わりたくない。壊したくない。どうしてそんなに簡単になかったことにしようとするの?


 兄さんとの買い物の帰り道。

 待ち合わせていたのかマンションの手前で姉さんが手を振る。

「ケーキ買ってきちゃった。ナオとユウの分もあるし、呼び出したからね」

 ナオさんはユウのお兄さんで兄さん姉さんと年が近い。

「呼んだのか」

 なぜか、兄さんが不満そうだった。

「いいじゃない。セッちゃんを気にかけてもらってるんだし」

 からからと姉さんは笑う。

「別に一人でも大丈夫よ」

 子供扱いに私はむくれてしまう。

「女の子の一人暮らしは反対なんだ」

 兄さんはぶちぶち不満をこぼし、姉さんはからりと笑う。

「あいつら家族じゃん」

「おかえり。二人とも。セッちゃんの様子ならちゃんと見てるよ。朝帰りしてないとか、変なのに付きまとわれてないとかはね」

 ナオさんの声に驚く。

 変なのって、なぁに?

 って、監視されてた!?

「ぼーっとしてんなよ」

 ユウがそんなことを言って私の持っていた買い物袋を取り上げる。兄さんもいるし、姉さんも帰ってくるから買い物の分量はいつもより多すぎるのは確かで助かる、けど。

 面白くない。

 その感情を読み取ったかのようににやつくユウにむかつく。

 なによ。

「苺のケーキ譲ってあげないんだから!」

「別にいーしぃ」

 買い物袋を持ったままエレベーターに乗り込む。

 笑いながら姉さんたちも乗り込んでくる。コンパクトなエレベーターだけど、重量オーバーには余裕があったみたいで残念。ブザーが鳴ったら、ユウが駆け上がってくればいいのに。

「苺はひとつだけだぞ〜」

 荷物を冷蔵庫に入れたり、お茶を飲めるようにお湯を沸かしたり、しながら姉さんのケーキ箱の御開帳に付き合う。

 箱の中には色とりどり多様なケーキ。姉さんはいつもバラバラのケーキを選んで買ってくるから。

 そして、ユウが好きなのは苺だ。

 本当に苺のケーキはひとつだけ。他のはベリーやフルーツ、クリームにチョコレートのデコレーション。お皿に並べながらどうするかを悩む。苺は大好きだけど、他のだって好きだし。ユウの前にチョコケーキ。艶やかなムースが美しい。

「さんきゅ」そう言って受け取る。私はフォークに刺した苺をその口に放り込む。「半分こね」

 笑顔が溢れた。




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