2パート
真っ暗な闇の中一人取り残されていた文人、そこに文奈が駆けつけた。
「文奈、どうやってここに?」
「陰陽師の人たちに送り出してもらった。でも来た道がわからない。役たたずでごめん。」
「いや、いいよ。大丈夫。どこへ行けばいいんだか。どこにも道らしきものはない。」
しかし、不安になる場所だ。どこにも出口はなく、嫌な思い出がたくさん蘇ってくる。
「出られなかったら私達どうなるんだろうね。」
「邪神がより大きく強くなるんだからもう誰にも止められないんじゃないか?」
「それは避けたい・・・・・でもどこへ行っても何もない。」
ひたすら歩き続けたが果てしなく広がる闇。どこにも光も何もない。もうさすがに終わりか。
そんな時、どこか懐かしい声や音、懐かしいにおい、そして懐かしい足音が聞こえた。
「・・・・・この音って。」
唯一光のある方を見ると一生懸命こっちへ向かって走ってくる影があった。文人が言った。
「あれは・・・・・ラッキーじゃないか!」
一生懸命走ってくる影は照らされてラッキーの姿になった。
「ラッキーだ!どうしてここへ・・・・・いや、愚問だな。ラッキー。俺たちに会いたかったんだ。」
ラッキーは文人に飛びついた。暖かい、生きていた時と同じだ。ラッキーは体をすり寄せて、鼻を鳴らしていた。すぐに文奈にも飛びついた。文奈の顔を舐めた後、ラッキーは2人の少し前に立ちこちらを向いた。
「ラッキー、出口まで連れてってくれるって。」
ラッキーは文奈と文人が闇の中で迷い、出口が見つからず途方にくれていたのを知り、現世へ戻る道へ連れて行くために駆けつけたのだ。そして何より、ラッキーは2人に会いたかった。
「それじゃあ行こう。ラッキー。お散歩行こう。3人で。」
道は灰色になった。気が弱いラッキーだったが2人の役に立ってる自信があったため、しっぽを振り満足げに歩いていた。
「私、わかったんだ。いろんな戦いを見てきたけど。お友達や家族は姿が禍々しく変わってしまっても絆は消えない。姿形が変わっても友達は友達、家族は家族なんだって。たくさんの人がそれを身をもって教えてくれた。」
「そうだね。ラッキーだって姿形は違う。人間と犬だしな。しかもラッキーに至っては実体すらない。でも文奈を守っててくれてた。」
「そうなんだ。」
「身の危険を感じた時、不思議な事が起こらなかった?」
「起こった!」
狐火がふりかかろうとした時吉田文奈にだけは当たらずガレキも途中で奇跡のように止まった。
「まさか、あれって・・・・・」
「そうだ。ラッキーがずっとずっとそばにいて守ってくれてたんだ。」
吉田文奈という大切な人を守るため狐火やガレキからラッキーは守ってくれていた。大切な人が傷つくのをラッキーは見たくなかった。
吉田文奈は涙が止まらなかった。ずっとラッキーはそばにいてくれていた。ずっと守っていてくれた。とても感謝では言い表せない気持ちが押し寄せていた。
「ラッキー。本当にありがとう。ガレキの時に嗅いだ懐かしいにおい、ラッキーのだったんだね。やっとわかったよ。ずっとそばにいてくれてたんだね。1人じゃなかったのは私の方だったんだ。」
「しかも、俺を助けにこうしてここに来てくれるなんて大したやつだよほんと。」
お兄ちゃんからの優しさ、ラッキーからの強さ。相手を思う気持ちに姿形が違うとか、実体がないとかそんなの関係ない。吉田文奈は長い戦いの中で、実体のないラッキーと一緒に過ごした長い散歩の日々でそれを知った。
道は灰色を経て明るい道になった。もう振り向いても大丈夫になった。
「ラッキー、ありがとうな。これで帰れるよ。」
ラッキーは突然止まった。そして2人を交互に見た。
「ラッキーは実体がないからここまでなんだな。」
文人はラッキーを力いっぱい抱きしめた。とても暖かかった。
「ずっと言いたかった・・・・・ラッキー、ごめんよ。俺がもっとしっかり止めていればラッキーは変なのを食べて早死する事もなかった。」
ラッキーは文人の顔を舐めた。もう全然気にしていないと言いたげだった。
「今まで本当にありがとう。ラッキーといた時間。とても楽しかった。幸せだった。あっちでも元気でな。もう変なの食べるんじゃないぞ。」
ラッキーは鼻を鳴らしながら体をすり寄せた。文人が手を離すまでずっと体をくっつけていた。文人が手を離すと文奈が頭を撫でながら抱きしめた。
「たくさんたくさん、本当にありがとう。ラッキーのおかげで元気にやってこれたよ。私の中ではラッキーは永遠だから。もう、体を張って私のこと守るなんて無茶するんだから。」
ラッキーはしっぽを振りながら頭をすり寄せた。
「最後のお散歩。楽しかったね。次はいつできるかわからないけれど。またしようね。ラッキー。これからも元気でね。あっちへ行ったとしてもラッキーはラッキーだし、これからもずっと・・・・・・・・・・大好きだよ。ずっと大好きだよ。」
吉田文奈が手を離すまで頭をすり寄せていたラッキーは吉田文奈が手を離すとラッキーは数歩下がった。
そしてラッキーの姿は少しずつ光に変わっていった。
「ラッキー!元気でなー!」
「ラッキー!今までありがとーう。ずっとこれからも一緒だよー。」
ラッキーは最後に大きく遠吠えをしてやがて全身が光に包まれ消えて行った。
ラッキーは最後の最後まで2人のことを思い2人に最後に会って消えて行った。
涙を流し続ける妹に文人は言った。
「ずっと泣いてるとラッキーに心配されるぞ。ほら、帰るぞ。現実の世界、現世へ。」
「・・・・・うん。」
何回も手で涙をぬぐいながら光の方へ歩き出した。
「・・・・・お!2人とも目が覚めた!」
3人の陰陽師が見ていた。
「戻ってこれて良かったです。」
高橋愛香が優しい笑顔で言った。
「何か素敵な夢でも見ていたのかな?」
「はい。もうすっごく幸せでした。」
吉田文奈の手はラッキーと散歩していた時のように暖かかった。




