2パート
吉田文奈と愛子はのんびりと歩いていた。愛子はあまり体力がないため歩くのがゆっくりでそれに合わせて吉田文奈もゆっくりと歩いた。
「私ね。小学校2年生くらいかな。転んで膝怪我してて泣きながら帰ってたの。そこにお兄ちゃんが来てくれた。」
「文人さんですね。」
「うん。お兄ちゃんがね、泣いてる私の手を握っててくれたんだ。そしたら痛いのがすこしおさまった気がした。元気が出たからなんだろうね。」
「素敵ですね。」
「お兄ちゃん近道して帰るのが普通だったんだけど、その日だけは近道しなくて私に合わせてくれた。お兄ちゃんからしたらなんの事はなかったんだろうけどその時とてもうれしかったのを覚えてる。」
「優しいお兄さんなんですね。」
「その後、犬のラッキーを飼ってリードを持っててラッキーが亡くなった後はすっかり誰とも繋がなくなった。」
「あらら。」
「だから。」
吉田文奈は愛子の手を優しく握った。お兄ちゃんから優しさをもらってラッキーからも本当の愛情や力をもらったその手で愛子の手を握った。今度は吉田文奈が愛子に優しさや愛情をあげる番なのだと思った。
「愛子ちゃん。いろいろあったね。」
「はい。死にたくもなりました。」
「辛かったよね。ほんと。私さ、ぐずだからなにか特別な事ができるわけじゃない。お医者さんであなたの心を治すこともできなければあなたの傷をすべて癒す事もできない。あなたはあなた自身で治すしかない。」
愛子は少し暗い気持ちになった。ご飯すらまともに食べられない自分自身を治せる自信はなかった。
「・・・・・でもね。こうやって手を握ってあげる事は出来るんだ。」
愛子は予想外の言葉に吉田文奈を見た。吉田文奈は顔を隠すように前を向いていた。
「愛子ちゃんは巻き込みたくなくてパパやママ、お姉さんに相談出来ず誰も味方がいなくてずっと一人で背負い込んだ。きっと辛かったよね。これからは私たちが愛子ちゃんを応援するから。」
「うれしいです。でも私みたいなのに関わったら迷惑なのでは?」
「そんなことないよ。人はみんな誰かに支えられて誰かのためになら頑張ろうと思う。誰かのために生きる。愛子ちゃんが1人きりで背負いこもうって、1人きりでいいってもし、思っていたら・・・・・」
吉田文奈はしっかりと手を握っていった。
「・・・・・ずっとこうやって手を握っててあげるから。辛い時はいつだって手を握ってあげる。もし、繋いでなかったら愛子ちゃんが勇気を出して手を差し伸べてくれるまでずっといつまでも私達は待ってるから。手を繋いだらあなたが元気を取り戻す時まで繋いでてあげるから。これからはもう・・・・・1人じゃないよ。」
愛子は目から大粒の涙を溢れさせた。こんなに優しい言葉を家族じゃない人からかけてもらったのは初めてかもしれない。涙は止まる気配はなく次から次へと溢れ出した。でもなぜだかうれしかった。
「涙が・・・・・涙が・・・・・止まりません。」
まだ、こんなに優しい人たちがいたのか。愛子は吉田文奈の手を強く握り返した。
「お姉さんの手、とても暖かいです。」
「やめなさいよ。照れるから。」
「こんなに素敵な人たちが・・・・・まだいたんですね。死んでたら文奈さんたちに会えなかった。生きてきてよかった。」
「私も愛子ちゃんが生きててくれてよかった。死んじゃったら手、握り返してくれないもの。いいのよ。その涙はいい涙だから。だから、思う存分泣いちゃいなさい。私は大丈夫だから。」
そう言われた愛子はとめどなくあふれ出る涙を抑えることはせずずっと暖かい涙を流し続けた。




