1パート
今日はいいお天気だね。でも怖くて外には出られない。前にお話したけど、クラスのみんながこわい。
お姉さんはわかるけど私、不器用だからさ。あんまり友達を作れなかった。そしたらクラスの子がどこが気に入らなかったのかはわからないけど、無視されるようになってきた。
でもまだそのくらいはよかったの。そのうち教科書とかノートに「死ね」とか「ブスはくたばれ」とか書かれて、たくさん悪口書かれた紙がかばんにパンパンになるくらい入ってた。
先生に相談したら高校の名前に傷が付くから我慢してくれって言われた。多分いじめていた人たちはそうなること知っててやったんだと思う。
いじめてた人たち頭がとってもいいから、誰がやったのかがわからないようにしてるから訴えようもなかった。
ごめんねあんまりこの事はなさなくて。パパとかママ、お姉さん巻き込みたくなかった。
だって夏の暑い日は暑い倉庫に閉じ込められて、冬の寒い日は水かけられて池に突き飛ばされたんだよ。濡れて帰った日、あれ実は転んだからじゃないんだ。そんなのにパパとかママを巻き込めないよ。かわいそう。
体育から戻った時、お弁当がゴミ箱に捨てられてるのを見た。それを見た時、気持ち悪くなって胃の中の物を全部吐いた。
それだけじゃなくて胃液が出るくらい吐いた。
学校に行けなくなったし、食べたら食べたもの全部はいちゃうようになった。
泣きたいけど泣く元気もなくなっちゃった。
ご飯も食べられない、学校行けない、怖くて外にも行けなくなった私なんかいても迷惑でしょ。あと私、そろそろ楽になりたい。解放されたい。
パパ、ママ、お姉さん。こんな馬鹿な私を愛してくれてありがとう。18年間、楽しかった。最後のほうは大変だったけどね。
それじゃさようなら。生まれ変わったら幸せになれるように願って。
愛子
「ひどい・・・・・なんてことを。」
吉田文奈は震えながら読んでいた。
「人間とはかくも残酷になれるのか。」
「こんな事が・・・・・」
「優子が助け上げた時、死なせてくれと懇願したそうよ。優子は許せなかった。いじめた人、黙認した人、我慢するように頼んだ人も。ちょっと不器用なだけの女の子がそこまでの傷を負った。そこで優子は邪険になってしまった。その憎しみが利用された。」
「愛子ちゃんのほうは?」
「憎いと思うほどの元気もなかったのよ。」
「かわいそうという言葉では足りないわね。」
「ひどすぎます。」
「優子は邪険になんかなりたくないと思ってる。でも妹の事を思うと変化しそう。だから私が浄化するんだ。」
「今は愛子ちゃんは?」
「病院で療養してる。最初は怖がってたけど優子のお友達とお話できるようになったし、すりおろしたりんごを流し込むようにならば食べられなくもないらしい。でもまだ時々吐くんだって。」
「少し改善してるんですね。」
「ちょっと前向きになったかな?以前よりは。」
「私もいつかあって元気つけたいな。」
「そうね。きっと喜ぶよ。あの子。正直だから。」
3人は人間の残酷さを見て、複雑な気分になった。なんて残酷なんだ。しかし、自分も人間である。嫌いな人間のひとりやふたりいる。つまり自分の中にもそういう一面があることにほかならない。
自分は絶対まちがってもそんな加害者にはならないと確実にそう言えるだろうか。