枕元にはお仏壇
めざせ完結。区切りまではいけそうな気がする。
目を覚ますと洞穴の中だった。
枕元には、やけに立派な仏壇とガラクタの山。木の盾とか竹やりなんかが積み上げられている。
1番目を引いたのは仏壇だ。
なんで仏壇? 変な宗教団体に拉致されて強制的に入信させられようとでもしているのか?
そう思って周りを見たが、宗教関係者どころか人影ひとつない。
……
どうしてこんなところで寝ていたのだろうか?
昨日、寝る前のことを思い出そうとするが何にも思い出せない。
それどころか、名前とか年齢も思い出せない。
記憶喪失?
全く何も覚えてないというわけではない。学校に通ってた記憶とか家族がいた記憶とかはあるのだけど、具体的に中学生だったのか高校生だったのか、両親はいたのか兄弟はいたのか、詳細なことはぼんやりとしていて思い出すことができなかった。
やはり変な宗教団体にひっかかって薬でも嗅がされたのではないか?
焦る心をおさえつつ、何か記憶が戻るきっかけのようなものはないかと周囲を見渡す。
そうなると目につくのは例のガラクタの山だ。
何か身分証明証のようなものはないかとガラクタの山をあさる。
木の盾、竹やり、やくそう、毒消し、モンスターの肉、天使のわっか、旅人の服……て、なんだこれ?
ガラクタを手に取るなり頭の中でガラクタの名称がスラスラでてくる。
ていうかモンスターの肉? モンスターってゲームとかアニメで出てくるあのモンスターか?
そういえばガラクタもゲームにでてきそうなアイテムの名前っぽいものばかりだ。仏壇だけものすごい違和感があるが、いったんそれは置いておこう。
まさか、ゲームの中の登場人物にでもなったとでもいうのか?
まさかね、などと思いつつ、それを思いついたとたん「そうだ」と俺の中の何かが告げた。
なんだかとても嫌な予感がする。
そしてその予感に答えるようにそれは見つかった。
身分証明証
名前 サトミ・ココ
性別 ♂
種族 神(忘れられた神)
レベル 1
HP 28
MP 55
攻撃力 17
防御力 14(+6)
素早さ 9(+5)
おつむ 52
運 61
魅力 30
霊力 20
スキル ゲーム脳 蘇生術
装備
右手 なし
左手 なし
頭 なし
体 異世界の服(+4)
アクセサリー 異世界の靴(+2 +5)
身分証明証と書かれたそれは紙でできていた。いや、1枚の分厚さといい、ざらざらした手触りといい、紙よりも布と言った方がしっくりくるか。書かれている内容はまるでゲームのステイタスのようだ。
名前はサトミと書かれているが、それは俺の本当の名前ではない。記憶はないがなんとなくそれはわかった。
種族は神と書かれているが、俺は神などではない。記憶はないがそれは確実だ。神なんて本当にいるかどうか怪しい。俺が死んで神になったというのならありえるかもしれないけれども。
とりあえず、この身分証明書は俺のものではない……はず。
はずなのだが……ただ、書かれている事柄は俺の行動と共に更新されるようだ。
例えば、木の盾を持ってみると装備したことになり防御力が+8あがって表示される、靴を脱いでみれば異世界の靴を外したことになり防御力が2、素早さが5マイナスになる、といった具合だ。
やはりこれは俺のことを表してるのか?
死んでるから種族は神。名前は里見ココ?
……ココってなんだよキラキラネームかよ。
誰にともなくつっこんでみるが返事はない。
しかし、自動的に更新される内容はどういう仕組みなのだろうか?
どういう仕組みなのかはわからないが、ここまでゲームじみてるということは魔法でも使ってるのかもしれない。
MPといったらやはりマジックポイントのことだろう。「魔法が存在しますよ」と暗に示されているようだ。
そんなわけで身分証明証はみつかったわけだが、どこまで信じていいものかは判断に困る。
種族が神と書かれているのはこの際おいとこう。
不思議な布でできた身分証明証や不可思議なアイテムの数々、そして俺の着ている服や靴……なんの変哲もないパーカーとジーパンとスニーカーと靴下のはずだが「異世界の服」「異世界の靴」と表示されている……ことから、俺のいた世界とこの世界は別の世界であるということが示されているようではある。
だが、ゲームじみたステイタスを鵜呑みにするのも非現実的だ。
もし、この非現実を現実と認めるには、今までの現実にはなかったものが存在しているのを目の当たりにしなくてはならないだろう。
例えば魔法とかモンスターとかを、この目で直接見れれば身分証明証が本物だと少しは信じることができるかもしれない。
となると、自分で魔法を使ってみるのがてっとりばやい。身分証明証には俺も魔法らしき物が使えると書かれている。
ただ俺の使えるらしい魔法……というかスキルは蘇生術だけらしいので試すのは無理そうだ。
蘇生術というからには生き返らせたりできるんだろうけど別に誰か死人がいるわけでもないのでためしようがない。
ゲーム脳については……見なかったことにしよう。
身分証明書とガラクタを一通り確認し終えるとお腹の虫が鳴る。訳の分からない状況でもお腹は空くのだ。しかしこの場にある食べ物と言ったら「モンスターの肉」だけである。
モンスターの肉を食べるか否か……
しばらく考えてやめておくことにする。
気持ち悪いからが半分、食べたら喉が渇くからが半分。
食べ物は食べなくてもすぐには死なないが水がなければすぐに死ぬ。
まずは水を確保しなければならない。
洞窟の中には水はもちろん水っぽいものもない。水を確保しようと思ったら当然洞窟の外に出ることになるだろう。
俺は少し考えると、武器防具フル装備で洞窟の外に出かけることにした。ひょっとしたら洞窟の外にはモンスターがでる……かは半信半疑だが、危険な野生動物くらいはでるかもしれない。念のためである。
ちなみにアイテムフル装備の俺である。
名前 サトミ・ココ
性別 ♂
種族 神(忘れられた神)
レベル 1
HP 28
MP 55
攻撃力 17(+6)
防御力 14(+29)
素早さ 9(+5)
おつむ 52
運 61(+8)
魅力 30(-2)
霊力 20
スキル 蘇生術
装備
右手 竹やり(+6)
左手 木の盾(+8)
頭 天使のわっか(+14 +8)
体 旅人の服(+5)
アクセサリー 異世界の靴(+2 +5)
さびたワッペン(-2 +麻痺軽減)
所持品 やくそう、どくけし、モンスターの肉、異世界の服、壊れた桶、アンリウムの護符、身分証明証、古代の銅貨
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