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.みつばちとおさとう

掲載日:2007/07/21

おわるものなんて、ないのだと、いつぼくは気付いたのだろう。

風鈴が、ひとつだけかなしそうに鳴く。

「いとおしいわ」

「なにが」

ぼくが囁きかえすと、きみは挑発的にこちらをみすえた。

そして、ピンクのルージュで彩った自分のくちびるをぼくにおしつけるのだ。

「ん」

舌で、むりやり口をこじ開けられて、ぼくのなかに何かがおしこまれた。

「ほれぐすり、だよ」

目をほそめて、けはけはと笑う。

でもぼくがその異物を、舌でなぞるとオレンジの味がした。ほんのりとやさしい、オレンジの味だ。

「あたし、ピーチあじ」

「ふーん」

「また、たべさせてあげよーか」

「やだよ」

「舌、かむよ」

「やめてよ」

また君はけはけはと笑った。

せみの鳴き声にまじって、もいっかい風鈴の音がした。

夏が、ぼくたちをつつんでいく。

「でも、いちばんおいしーあめは、京ちゃんだよ」

「いきなり?」

「わるい?」

ぼくをあざけるように、ふふ、と笑ってから君は小脇にあったマシュマロをつかんだ。

「もう、あめなめたの?」

「ううん」

「かんだのか」

「うん」

君の顔がちかくなったと思ったらまた、くちびるをくっつけてきた。

そして今度は舌で器用に、ぼくのあめを持っていった。

「おれんじあじ」

君の口のなかで、がりごり、という音が聞こえた。

無残にあめは、さいごまでなめられることなく噛み砕かれて、壊されてしまった。

「それ、ほれぐすりなんだけど」

ぼくがむっとした顔でつぶやくと、君はまた挑発的にせせらわらった。

「もう、じゅうぶんほれてるよ」




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― 新着の感想 ―
[一言] タイトルどおりの甘々な話でした。 自分なら書いてる途中に2回ほど、もだえていたかもしれないw 一つだけ。 >けはけはと笑った。 ぐぐったところ、使っている人もいるみたいだけど、一般的な表現…
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