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王になるには

 魔法神託の儀の日から数日が立った。

 数日はまだまだあの日の疲れが残っていたので、両親のもとで休ませてもらっていた。魔法神託の儀が終わったら通常すぐ、その魔法を元に魔法大学に進学するか、働くかを選ぶ。だが、俺の両親は何かを察したのだろうか。しばらく家で何も聞かずに休ませてくれた。火蓮とこっそり会話してるのを見られてひとりごとを言ってるように見られたからだと思う。


 そんなこんなで傷も癒えて来たころ、火蓮と王になるための道筋を相談するために図書館に来ていた。


「すまないな、私のために図書館にまで行ってもらって」

「何言ってんのもう一蓮托生でしょ!!火蓮!!王になる方法一緒に探そうよ!!」

「ありがとう、サムエル。君もすっかり明るくなったみたいでよかった。ちょっと前まではセンチメンタルでちょっとかわいかったのにな」

「うるっさいな~」


 明るさの塊のサラとは違い、大人の雰囲気のある火蓮との会話は新鮮だった。

 頼れるお姉さんが近くにいるような雰囲気で、心がとても休まる。


 そして図書館でしばらく王になる方法。具体的には今まで選挙で選ばれてきた人間について見て来た。

「この国の王は選挙で決めるらしいな」

「うん、王都には『心理共有』の魔法使いが何百人もいて、選挙の時には「心理共有」同士で心をつなぎあって国中の人間の意識を共有できる状態になっているんだ。直接心に聞けば不正投票も何もないし投票率100%だからね。あとは何人かの計算や統計の魔法を持つ人が各都市の選挙結果を出して集計。一番表が集まった人が王になるって寸法さ。」

「信じられない話だが、、、この世界への魔法の依存度を考えれば確かに現実的な話だ。」

「うん、この世界では火蓮のいた地球でいう科学の必要性が魔法でほとんどなくなってるからね」


 この世界は一人一人魔法を授かる。その影響は文化に大きく影響している。

 例えば風呂に入りたいとする。

「水生成」の魔法を持つ者が各都市に複数人おり、水を常に生成。管を通して各家庭に供給する。

 風呂には「風呂板」という商品を買う。「温度固定」の魔法を持つ者が板の温度を一定で固定し、各人の好みの温度の板を販売する常に温度が一定の板を販売しており、それを風呂の形に組み合わせ快適な温度のお風呂を常に楽しめる。

 このように何千万といる国民。その魔法を組み合わせることで水をはじめとした、インフラ、食料、娯楽、医療など生活に必要なことをほとんど構成している、それが魔法法治国家ウルなのだ。ゆえに科学はほとんど発展していない。事実、サムエルは慣性の法則すら知らなかった。というか「理科」に当たる授業がこの世界は「魔法」に置き換わっているのだ。


「王になるには当然魔法が重要だよ。この国は魔法の重要度がとっても高いからね。」

「ふむ、事実今までの王は強力な魔法の持ち主のようだ」

 ウルの今までの王を見ると「雷撃」「絶対防御」「獄炎」「破壊」…いかにも強そうな名前ばかりだ。

「ん、だが『心理共有』で王になっている者もいるぞ」

「それは300年前の王、ダビデだね。この国は魔法の管理制度がまだできてなくて各都市の領主や他国が反乱や侵略の芽が絶えなかった。簡単に魔法の嘘の申告ができるから、嘘の魔法で国の重役に就いた者が思わぬ魔法で奇襲する…。そんな事件が絶えなかったよ。疑心暗鬼に駆られたダビデの前の王は自殺してしまってね、、、、国の重役は次の王候補を立てることもできなかったんだ。その候補がスパイかもしれないからね。だから次の選挙もしばらくできなかった。

 そんなとき、今の魔法神託の儀のシステムを考え「心理共有」で国の重役にその必要性を共有。「心理共有」にてダビデに嘘がないことは共有されるため、ダビデは誰一人信じられない王宮の中で信頼を集め、多くの者の協力を得て今のシステムを確立した。結果、次に開催された選挙では歴代最多投票で王になっている。


「ダビデは今では最も尊敬される王だよ」

「確かにこれだけの実績ならば魔法が弱くとも王になれるのも頷ける」

「だから僕たちが王になるにはダビデのように実績を作るしかない。」

「そのようだな」

「でも僕らの魔法は…」

「『2つの魂』…君にだけ見える私と魂を共有する魔法」

「そうなんだよね…ここまで『2つの魂』について色々試してみたけど分かったのは

 ①火蓮と俺の記憶の共有ができること

 ②俺の体と幽体の火蓮を入れ替えられること

 ③火蓮の存在は俺にしか見えないこと

 ④直接会話しないと会話できないこと。テレパシーはできないこと。

 この4つだ。正直何かの実績をつくるのは…難しいよ。」

「そうだな、私もそう思う。」

「はあ、どうしようかな、、、、」

 サムエルは再び王になるための方法を思案する。悩んでて壁にぶつかっている顔をしているが眼は死んでいない。この子は強い。あの一件から立ち上がり必ず王になるという意志が伝わってくる。この子にこの魔法を授けてくれた神には感謝しないとな。そろそろ、、、、問題ないな。

「もう一つ『2つの魂』には能力がある」

「へっ?」

「少し外に出てくれないか?なるべく人気のない場所で」

「いいけど、もう一つの能力って何?」

「魔法はそのものの願望に合わせて神が一人一人に授けるものだ。」

「うん?」

「ならサムエル、君は思わなかったか?願望の強い私にも魔法が授けられないのか?と」

「まさか…」

 サムエルの顔が明るくなる


「私の魔法を見せてやろう!!」

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