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王を目指す誓い

 今日は色々あった。

 ありすぎた。

 サラ。

 特別管理魔法。

 忘却の魔法。


 そして火蓮こと蓬莱 火蓮。

 考えることが多くて…とにかく疲れた。

 いつの間にか家に帰っていた。

 やっと休める。


「お帰りなさい、サムエル!!、ねえ、どんな魔法もらった?身体強化?」

「早速だね…いや、俺がもらったのは身体強化じゃなくてね、、、『2つの魂』っていう魔法なんだ」

「…知らない魔法ね?固有の魔法??」

「『2つの魂』っていうのは~…」

 友達と黒い神官の前で行ったのと同じ説明をした。

「あなたが知識系の魔法を得るなんてね~。成り上がるって言ってたからてっきり、軍隊で成り上がると思ったけど教授みたいな学術系になりそうね~。」

「あはは、、、、まあそんなところかな」


 この国では魔法の特性は進路に大きくかかわる。火蓮のいた国。日本ではどの人間もある程度職業選択の自由があるようだが、魔法法治国家ウルでは別。学者には「超速計算」や「常時記憶能力」など頭の良さにかかわる魔法。逆に軍隊には「身体強化」や「火球」をはじめとした攻撃的な魔法がいる。魔法で進路が決まるのだ。


 だが、特別管理魔法?それほど国家にとって重要な魔法なのか?

 そういえば…


 いつのまにか食事が用意されていた。お父さんも帰ってきていた。

 3人で食事をとりながら恐る恐る聞いてみた


「お母さん、そういえばサラってどうなった?」

「皿?そこにあるじゃない?何言ってんの?」

「サムエル。疲れてるのか?本当はお父さん、サムエルの魔法習得のパーティーをしたいぐらいだが今日は早く寝て休むといい」

「ああ~、ごめんごめん、そうさせてもらおうかな」


 やっぱり。

 サラを知らない。忘れている。

 おそらく魔法神託の儀の後、あの白い煙を出した男がこの街に来て、最初からサラをいなかったことにしたのだろう。あの煙の魔法は一時的に意識を失う、しかも広範囲にまくだけでいい。不信感はないだろう。おそらくもう、サラの家族も…




 静かな夜だ。

 夜空が綺麗だった。

 少しだけ夜風に当たりたい気分だったので家から出て家族に内緒でこっそり歩いていた。

 誰もいない場所でぼーっとしてたら目の前の夜空にふと美しい女性が舞い降りた。


「この世界の空は美しいな…私のいた世界ではこんな満天の星空はなかった」

「やっとゆっくり話せるね…火蓮」

「あぁ…だがまずは、何よりも…お疲れ様。私だけはお前の苦しみを分かってやれるからな、魔法や私について話すのは後でいい。好きなだけ本心をぶちまけろ」


 瞬間。

 崩れた。

 分かってくれた。

 誰も理解してくれない俺の気持ちを。


「悔しいよ火蓮!!何もできなかった自分が悔しい!!何が成り上がるだ!!俺には何の強さもない!!でっかい騎士どもに何にもできなかった。身体強化なんてもらっても、どうせ無理だったよ。だって国家ぐるみなんだろ??なんだよ!!特別管理魔法って!?知らねえよ!!どうして、みんなサラを忘れてんだよ?大切な俺の友達だぞ、一番の幼馴染だ!!攫ってんじゃねえよ!!」


 叫ぶだけ叫んだ。声がかれるまで。誰も聞いていない15歳の少年の嘆きを黒髪の美しい女性は微笑みを絶やさず優しい目で聞いてくれた。どれくらいの時間がたっただろうか、叫び疲れて、いつの間にか泣いていて、紅潮する顔に反して心は落ち着いていた。


「サムエル、お前の境遇は十分同情に値する。私は理解者だ。これからも好きに相談しろ」

「さすが…心理士?カウンセラー?だっけ火蓮、だいぶ心が楽になった」

「光栄だ。前世の能力が役に立つとはな」

「火蓮は…問題ないのか、俺は記憶を共有している。」

「私の最期か…確かに思い出したくない辛い記憶だ。だが、私は時間があった。あの神がいる夜空のような空間で何年も時を過ごした気がする。心の傷が癒えには十分な時間があった。実際に何年たったのか、はたまた一瞬だったのか。それこそ神のみぞ知るがな」

「そう…」

「だが、サムエルお前は今日の出来事だ。私はカウンセラーをやっていたから分かる。時間しか解決してくれない傷があるということも。」


 数刻見つめあう

 そして同時に

「サムエル」

「火蓮」

「「王を目指そう」」


 くはっ、2人は同時に笑いあった。今までにないくらいに。

「前世の死ぬ直前の私でなかったら『何言ってんだこいつ?』と一蹴していただろうな」

「俺も成り上がると言ってもまさか王なんて言うとは思わなかったよ!!」

「…意志は固そうだな」

 この魔法はお互いが経験した記憶を共有するだけで現在の互いの意思や感情が伝わるわけではない。意志が分かるわけではなかった。だが、具門だった

「夜空のような空間で俺が叫んだこと、嘘に聞こえたかい?」

「いや、、、あれが嘘なら君は王ではなく詐欺師になった方がいい」

「いやだね、絶対王になってやる」

 くはっ、2人は同時にまた笑いあった。


「無論、私もそのつもりだ。この世界も国家に子どもが拉致される程度には腐ってるようだからな。」

「あぁ『恵まれない人間が生まれない世界』か、それは俺の目的とも一致する。火蓮。これからよろしく頼む!!」


 こうして俺たちは王を目指す誓いを立てた。

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