サラの魔法
白い服のおじいちゃんから改めて魔法神託の儀について改めて説明があった。
魔法神託の儀。学校を卒業する15歳になる年。
基礎的な学びを終え肉体とそれに宿る魔力がある程度成熟した年齢になった少年少女がそれぞれ特有の魔法を神から授かる儀式だ。
神との対話でそれぞれの人間にふさわしいと神が思った魔法を授かる。
いつのまにかおじいちゃんが説明を終え、少年少女は教会の席に着き順番に呼ばれるのを待った。
次々に少年少女が魔法を授かるために呼ばれていく。
白い服と黒い服、神官が2人いるのは明確に役割がある。
一人は「神託」の魔法を持つ白服の神官だ。神の声を聞く魔法。
もう一人は「心理共有」の魔法を持つ黒服の神官だ。相手の心、思考を共有できる魔法を持つ。
この国の神官は魔法神託の儀が毎年各都市各地域で必要な分、国からの需要が高く給料も平均より若干高い。神もたくさん魔法を与えたいとのことなので「神託」「心理共有」の魔法を望む者にはかなり積極的に能力を与えるらしい。
通常の「神託」では神からのお告げ、すなわち助言や予言のみを神から一方的に魔法所持者に伝えられるのみだが魔法神託の儀では、15歳の子がどの魔法を欲しているかを神が明確に把握するため神と子どもが白服・黒服の神官を通して対話ができる。
神託の神官だけでは1人で神の声を聞くことしかできないので黒服の神官が「心理共有」をすることで少年少女と白い神官の心理をつなぎ少年少女にも神の声を聞けるようにしているのだ。
「マリア 魔法の翼」
「カイン 水生成」
一人一人前に出て神託が始まり、その後黒い神官により魔法が読み上げられていく。
実際には心の中で神様と会話しているのだろうが、周りの参加者から見れば一瞬だ。
黒い神官は王都の管轄であり、魔法神託の儀によって魔法を少年少女が得た後、黒い神官が魔法を皆の前で宣言する。そして戸籍謄本に家系図とともにその者の魔法が載る。
これには明確な目的がある。
300年ほど前の時代は、王都で重役に就任する者の中に、魔法の虚偽申告が多く犯罪や謀反を企てる者が絶えなかったそうだ。そこでそれまで各地域ごとに勝手にやっていた魔法神託の儀を禁止した。以後、王都を含めたすべての地で王都管轄の黒い神官が介入する魔法神託の儀のみ許されるようになった。
かつで学校の授業で習ったことだ。
「次、サラ、こちらに来なさい」
「はい!」
俺より先にサラの番がきた
サラが元気な声で返事をして前に出る。
そしておじいちゃんの白い神官が手をかざし、サラが神託を得る。
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(サラ視点)
そこは夜空が無限に広がるような空間だった
だが、夜空は全く気にならなかった。
そこにいたのは白い神官と黒い神官。
そして、光輝く人間の輪郭だった。
声?いや思念?が響いてきた
『サラ』
『君は何を望む』
サラには明確にこういう魔法が欲しいという願望はなかった
だから、サラにとって何が幸せかを純粋に考えこう言った
「はい!神様!私はみんなが笑って過ごせるような魔法が欲しいです。」
『…抽象的だね、君にとって笑って過ごすってどういうことだい』
「そうですね、私、家族が好きです。友達も、幼馴染のサムエルも、別の意味で好き…です。ちょっとだけ。そんなみんながずっと笑って過ごせるような。嫌な事があってもそんなことなかったみたいに過ごせるような、そんな魔法が欲しいです」
『ほう』
『ぴったりのいい魔法がある、それを授けよう』
『その魔法の名は_________』
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(サムエル視点)
サラの魔法はなんだろう。なんだかんだずっと過ごした幼馴染。サラの魔法は気になる。
あいつみんな笑顔で笑って過ごしてほしいとか言ってたから「人を笑顔にする魔法」とかかな。
そんなことを考えながら黒い神官を見ていた。そしてついに黒い神官が動いた
はやく、はやく、はやく、はやく宣言して。
テストを返されてるときのようなドキドキ感。
そんな明るいドキドキ感は
もろくも崩れ落ちた。
「特別管理魔法に類する魔法を確認!!騎士団は直ちに彼女を捕縛せよ!」
?
捕縛?
特別管理魔法?
俺が期待していた言葉とは全く違う神官の言葉に呆然としていた。
その時にはすでに、サラは目を布で覆われ、手足を縛られていた。
騎士が3人サラの前に立つと同時に他の騎士が出入口を固めていた
その場は騒然となり、子どもたちが騒いでいた。
俺も自体に気付きサラの元へ駆け出していた。
が、自分よりも屈強な騎士が立ちはだかった。
「急ぎ、騎士団にいる伝令役は王都から『忘却』の魔法の持ち主を召喚するよう要求せよ」
そういった直後、準備していたかのように何もないところから突然男が現れ、体から白い煙を出した。
なんだ??あまりにも準備が良すぎる。
「ご足労いただきありがとうございます」
「いやいや、この日のために準備しているからね。仕事だよ仕事。特別管理魔法の発現だろう?」
「ええ、ですのでこの少女に関する記憶をここにいる皆や家族を含めた関係者から消してほしいのです」
「記憶を消すって何??やだよ、はやくお家へかえs」
そこでサラは口を黒い神官に手で覆われた。
ふざけんな!そう思い騎士の間をすり抜け行こうとした刹那。
俺は転んでいた。膝をすりむいていた。
なんだ意識が、、、意識が呆然としておぼつかない。この煙のせいか?
サムエルは立っていられなかった。サラ、サラ、サラ、俺が連れ戻さなきゃ。
サラの母ちゃんや父ちゃんの元へ戻さなきゃ。
サラ、サラ。
あれ?
サラ?サラって誰だっけ、サラって何だっけ?
サラ?サ_____
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いつの間にか寝てしまっていたみたいだ。
えーと、何していたんだっけ?
教会??なんかめっちゃ子どもいるぞ?
そうだ!魔法神託の儀だ。
今日は俺が魔法を授かるめでたい日。
周りのこどもたちも静かにしてるがみんなワクワクしている。
何寝てるんだ俺は!
魔法で俺は成りあがってやるんだ!!!
「サムエル、前に来なさい」
「はい!」
来た!
ワクワクして俺は駆け出した。早く魔法をもらいたい。
候補は「身体強化」!
騎士、大工、鍛冶師、色んな職業に重宝される魔法だ。しっかり神様に説明して絶対その魔法をもらうんだ!
グッ!
ヒザに痛みが走った。血が出ている。まだかさぶたになっていない。
?
俺、つまづいたか?いつ?
処置もしていない。普段だったら____が処置してくれるのに。
____?
何だ?違和感がある。
何だ、誰だ、俺は何か大切なものを忘れている。
だが、記憶するのもきつい。意識をそらしたら直ぐに忘れてしまいそうな…
「サムエル?早くきなさい」
「は、はいすいません!」
そんな中、俺の「魔法神託の儀」が始まった。