表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。

推し活女子「出井 愛(でい あい)」の場合~推しの「乗り換え」におびえるオタク達~

作者: 夢野少尉

真実(まさみ)君……彼女できちゃったの?」

 

「そうなんだよー 私たちの方が全然顔面偏差値上なのに!」


 ここは、オタクが集まる「マサミの部屋」

 大学一年生森下真実(まさみ)のオタクが集うオフ会が毎日開かれている。


「本当に真実(まさみ)君、正義感あふれてるわ~」

「イケメンとフツメンの絶妙なバランス顔面は、天性のものね」

「はぁ……なぜ私たちは三次元には敵わないのか」



出井愛(でいあい)」と「派須和亜都(ぱすわあと) 」は、三次元の女に負けたことを最近愚痴っていた。

 そう、ここは森下真実(まさみ)のスマホ本体やアプリIDパスワード達が、ゲストの訪問を待つオタク達として、存在している部屋だ。

 その中でも、出井愛(でいあい)派須和亜都(ぱすわあと)は、Bandroidユーザー必須のグールルIDとパスワードだった。



 



 今日も『検索 真実(まさみ)』が情報を得るため、部屋を訪問した。推しそっくりの外見をした検索専門のゲストだ。


「きゃーっ検索君! 今、三次元の『森下真実(まさみ)』君の私生活ライブ鑑賞会してるんだよ!  今日は友達三人でショッピング中。見る?」


 出井愛(でいあい)は二次元の検索真実(まさみ)に駆け寄った。


「今日は、俺、彼女とデートするのにネズミーランドのチケット予約しに来たんだけど……」

「えーっっ! つまんない!! 『傷つかない別れ方』検索してっ!」

「縁起でもないこと言うなよ……」




  ※ ※ ※



 森下真実(まさみ)が、中学の時の同級生「上杉ノゾミ」と付き合うようになって一週間。彼女はなんと中学の時から俺に気があったらしい。

 高校も別だったのに……なんか携帯ショップに何気なく入ったら、彼女とその友達がいて。

 なぜかスマホ選びに付き合って、そのままスマホの設定するために彼女の自宅に連れられた。

 そこで、告られたんだけど……いいのか……俺で。

 イケメンで優しい増田みたいなのがいいんじゃないのか?

 確かに俺は後先考えず、人助けちゃうんだけど……たぶん、上杉さんじゃなくても、よけいなことしてた。

 人助けたら、変に気分が良くなるから。

 ただの自己満足だったのに。

 でも、まだ彼女のことよく知らないし……好きとかの感情はまだわからない。







「え? 彼女できた? お前が?」

「う~~ん……突然できた」

「なんかショック」

「まあ、俺もびっくりしてる」

 今日は増田と笹川と買い物で繁華街をうろついている。歩きつかれたから、3人でカフェに入って、近況報告会になった。


「増田なんか選び放題だろー」


 笹川が増田をからかった。


「俺って好きな人としか付き合えないんだよね」


 増田が何気なくつぶやいた。


「お前だけだぞ。まだ彼女いないの」

「俺は一生独身でいる」


 森下が増田の肩を叩きながら言った。


「意外と純粋だな、お前」


 そう言って、森下はニコニコ笑った。

 すると、増田は耳まで赤くしてうつむいた。


「そうだ! ネズミーランドのチケット予約しなきゃ!」


 森下は思い出したように、スマホを操作しだした。


「いいなぁ。付き合い初めの3か月くらいが一番楽しいかも」


 笹川は森下にアドバイスする。


「短くね?」

「そんなもんだよー」


 森下がチケット予約の画面を開こうとすると、電波が悪いのかなかなかつながらない。


「ここ、電波悪い?」

「え? 俺はサクサクだけど」


 笹川はスマホを操作して確認する。


「おかしいな……」


 すると、次はなぜか検索結果が表示された。


 【『相手を傷つけずに別れる方法』AIによる概要】


 三人はしばらく絶句した。


「お前、こんなの調べてんじゃねーよっ」


 増田は何故か声をはずませていた。


「いや、俺は確かにネズミーランドを……」

「そんなことあるかっ! 別れたいのか? 別れるなら早いうちに別れてあげた方がいいぞ」


 笹川も当たり前だが、俺が別れたがってると思ってる。

 しばらく俺のスマホは調子が悪かったが、なんとか予約できた。







「こら! お前達、勝手なことすんなよ! 三次元の俺がかわいそうだろ!」


『検索真実(まさみ)』が『出井愛(でいあい)』達を叱責する。


「ネズミーランドの予約なんてさせたくなかったんだもん!」

「信用問題になるぞ! 「乗り換え」されたらどうするんだ!」

「の、のりか……」


 乗り換え……それは、彼女達のテンションをどん底に落とす単語であった。今度こそP-phoneに変えられるかもしれない。その恐怖がつきまとう。


「だって……だって真実(まさみ)君とは4年以上一緒にいるのに……私たちは実体がないし、会話もできない。ただの文字と記号の羅列なだけで……こうして、一方的にオタ活するしかないんだもん」


 愛と和亜都は、わんわん泣き出した。


「気持ちはわかるけど、それが俺たちの存在する理由なんだよ。持ち主に情報を与え、癒しを提供する。それでいいじゃないか」


 検索用と音楽用とゲーム用の三人の真実(まさみ)が彼女達をなぐさめた。


「4年も俺たちの『森下真実(まさみ)』を思い続けた『上杉ノゾミ』って人は、きっと彼を大切にしてくれるよ。」


 その三人のうち一人が、どさくさにまぎれて発言した。


「流されそうになったけど……絶対、彼女なんて認めないわよ!」

「なんで? だって俺たち2次元は何もできないよ。諦めろよ」

「いや、私は真実(まさみ)君のパートナーは、増田君が良かったんだもん」


「増田……? あの幼馴染みの?」


「イケメンだし……絵になるんだもの……」


 出井愛(でいあい)は、両手を合わせて顔を赤らめる。


「う~~ん……オタク心がわからん……」


 2次元の真実(まさみ)達は、増田と森下真実(まさみ)の二人について、キャアキャア騒いでいるオタク達女子を見ながらつぶやいた。

 

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ