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6 偵察開始

「それでは着替えて朝食をいただくとしましょう。ええと。君の着替えは――。私のものを使ってください。大は小を兼ねるといいますからね。ついてきてください」


 イースが勝手に勘ぐってミッチェルに噛みついてきた。


「どうせ私は小だよ! でも最近は毎日のように背が伸びているんだからな! そのうちお前を追い越して――」

「イース」


 ミッチェルが瞳に怒気を宿して低い声を発すると、イースは黙った。


「それでは三十分後に一階のヒイラギの間で」


 イースは口をへの字に曲げながらも恭しく挨拶すると、自室へ向かってしとやかに歩いて行った。


「君はこちらです。とりあえず私の部屋に行きましょう」




 少年はミッチェルの後を黙ってついていく。背後から彼の全身をスキャンし、バイタルサインをチェックしながら。

 身長百八十二.五七センチ。体重約六十七キロ。筋肉質。ブラックヘア。ブラウンアイズ。低くよく通る声。

 若い男性を恋愛対象とする人間には、きっと魅力的に映るだろう。




 部屋に入ると早速、ミッチェルが少年が着られそうな服を見繕った。


「ま、こんなものですかね。シャワーを使いますか?」

「いいえ。私は不要です。それよりも、こちらでは食事の度に着替えるのですか?」

「ええまあ。私たち三人は土埃で汚れてしまいましたからね。それでも貴族の邸では、食事の度に着替えることが多いのですよ。覚えておくといいです。ですがこのブーロン領では、領主のマルク・ブーロン卿と同席する時だけです。私とイースだけなら必要ありません」


 少年はためらいがちにミチェルを見た。


「あの。今日はあなたの服をお借りするとして、この先はどうすればよいでしょうか。私はお支払いできる対価を持ち合わせておりませんし」

「あっはっはっ。それは見ればわかります。先ほども言いましたが、君はここにいる間はイースの護衛見習いです。働きに応じた報酬を支払います。君一人が暮らすには十分なはずです」


「ありがとうございます。イースの安全については全責任を負います」

「いえいえ。そんなに気負う必要はありません」


 少年と話していると、本当に見習いにやってきた若者のように感じる。

 ミッチェルは初対面の、しかも身元の不明な者に対して、自分が好意を抱きつつあることに内心驚いていた。


「おっと、大事なことを忘れていました。君の名前ですが」

「はい。正式な名称は長いのですが、省略するとロイドバージョン2です」

「バージョ――? ツーってなんです? 申し訳ありませんが、ここではロイドと名乗ってもらえませんか」


(前言撤回ですね。どうも調子が狂います。それにしてもこの少年――。見ず知らずの人間にホイホイついてきて、人を疑うということを知らないのですかね)


 ロイドは警戒する様子を微塵も見せない。


「はい。問題ありません。皆さんのことは、どうお呼びすればいいのでしょう?」

「ミッチェルとイースでいいですよ。ですが、領主のブーロン卿だけは、マルク様と呼ぶように」

「はい。承知しました」

「それと、イースも気にしていましたが、君の歳は十五でどうでしょう」


「はい。結構です」

「ま、そんなところですかね。マルク様には私から説明しますので心配いりません」

「はい。ありがとうございます」

「それでは十五分で支度しますからね」




 ミッチェルがシャワーを浴びている間、ロイドは偵察用ドローンに命令を下した。

 一機は配送ポーター周辺での見張り。もう一機はこのブーロン城全体の見張り。

 そしてイースとミッチェル用にも二機残し、残りの十六機は太ももの内側に格納した。

 イース用のドローンが部屋を出ていき、ミッチェル用のドローンが早速、部屋内部のスキャンを開始した。


 ドローンとの映像共有チャネルは現状四つしかない。

 『自律拡張タイプ』は、有事の際には自ら状況を解析して判断し、必要な機能にリソースを割くことができる。


 ――マザーと切断された現状は有事に該当する。


 ロイドはとりあえずチャネル数を十まで増やした。紛争もなく、未知の生物に襲われる危険もなさそうなので、とりあえずは見張りに徹することにした。

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