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小鬼  作者: り(PN)
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12

 嶺村麗子の言葉が高志は信じられない。いや、信じられないというより、わからないというのが高志の実感だ。

 しかし麗子は脅えている。高慢を絵に描いたような高飛車な女が狭い部屋の一角にくずおれ、目の中に恐怖を蠕動させているのだ。立ち位置の変化。たしかに今、高志は彼女を見おろしている。

「フフッ」

 高志の口許に自然に笑みが浮かぶ。怖いものなど何もないような気がして、目の色が残忍な光を帯びる。表情に狡猾な無表情が加わり、凄味が増す。

「お前の望むようにしてやろう」

 そういって高志は一歩麗子に近づくと、まず麗子の長い髪を左手で掴み、自分の胸当たりまで引き上げると右掌でいきなり頬を張る。ついで痛さに呻く麗子の恐怖心を煽るように襟元を掴むと一気に服を引き裂く。形の良い乳房がブラジャーの間から見え隠れする。高志は満悦の表情を浮かべつつ、スゥと息を飲み込むとブラジャーの肩紐に手をかけ、それを引き裂く。プルンと張りの良い林檎のような乳房が露になる。

「売女め!」

 麗子の髪を掴んだまま、吐き捨てるように高志が言う。

「その胸で何人の男を狂わせてきたんだ、へっ!」

 口調にも凶暴さが加わってくる。

「答えてみろよ、このメス犬」

 さらに髪ごと少し頭を持ち上げると高志はそのままの形で麗子を部屋の壁まで追いやり、腹に蹴りを入れる。一発、二発。ボコッ、ボコッと鈍い音が部屋中に響きわたる。

「くたばりやがれ!」

 高志が叫ぶ。

 が、その目は麗子の表情の変化を捉えていない。一見して明らかだった恐怖と苦痛の表情が脇に退き、変わりに陶酔の表情が浮かび上がってきたのだ。艶かしい腰の動きまで加わってくる。

 と、その瞬間、高志の両腕がわなわなと震え始める。思わず左手に掴んだ麗子の髪を取りこぼす。ついで高志は麗子の表情と姿態の変化をはっきりと捉え、それを見据える。次の瞬間、ふいに憑き物が取れたかのように彼女から飛び退くと、まるで物語の中で抽象化された子どものように高志が大声で泣き始める。頭を抱えてその場にうずくまる。

「ううううう」高志が呻く。

 すると高志の変化を確認して麗子が、「チッ」と舌打ちする。醒めた狩猟者の目で高志を一瞥すると肩をすくめ、天井を仰ぎ見る。

 次に諦めたようにその場ですべての衣服を脱ぎ捨てると彼への関心をなくし、浴室に熱いシャワーを浴びに行く。


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