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深夜の夜の闇に濃厚な気配が舞い降りる。
それが、すべての惨劇のはじまりだ。
* * *
電光パネル上の光点が消える。
たちまち監視員たちの緊張が高まる。二四〇の瞳が凝視、驚き、超然の態度に別れ、一二〇〇組の指先が忙しなくキーボードと制御卓の上を走りまわる。
「確認は?」
「取れません」
「時代は?」
「わかりません」
「場所は?」
「不明です」
いくつもの質疑応答が起動室の中を飛びまわる。
巨大な電光パネルは無数のグリッドで仕切られ、監視員それぞれのPCディスプレイと同じ像が、めまぐるしく展開を繰り返している。
「まだ確認はとれないか?」
(せめて、わずかな情報だけでも……)
車椅子の中で身をよじりながらレイヴ・ディナスが思う。神経が通っていないはずの左足の古傷が疼きはじめる。
(どこにいった。気まぐれな小鬼)
だがレイヴは、いまここで起こった混乱がすぐには片づかないだろうことを知っている。
やがて、それが事実となる。