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溶けていく  作者: 木村紫
5/10

5話

 看板には白地に赤い字で「Small C」と書かれていて、外枠が水色で囲われている。

 木目のプレハブっぽい簡素な店舗の入り口はガラス戸になっているが、薄暗くて中がよく見えない。

 近づいて目を細めて覗き込むと、パンのような袋が見える。お腹がどんどん空いてきて、蝉とビームとロッカーズで喉も乾いて二の腕もひりひりしてきていたので、思い切って中に入ってみることにした。

 シルバーラックにはアメリカ製の洗剤やジャム、クラムチャウダーなどが並び、折り畳み机の上にはキャラメルマフィンやお菓子の入ったプラスチックの籠が置いてある。

 メープルシロップやオリーブオイル、キッチンペーパーに書かれた「KIRKLAND」の文字を見つけたのと同時くらいのタイミングで

「コストコの小分け店なんですよ」

と後ろから声がした。

 振り向くと、60代後半くらいの品のよさそうなおじ様が微笑みながらレジの奥から顔を出している。

 七三分けにしたグレイヘアと鼈甲の眼鏡に、パステルイエローのアロハシャツがこなれた雰囲気で、大き過ぎず柔らかな低い声は威圧感もない。

 それでいてこちらがちょっと楽しくなるような軽やかなテンポで、先月オープンしたばかりでまだあまり品物が揃ってなくてとひとりごとのように呟いている。

 ひんやりしたエアコンの風に首と肩が冷えていくのを感じながら、このお店でランチを買って帰ろう、と私はぼんやり思い始めていた。

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