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勇者と魔王

「すまん、勇者。召喚に失敗してお前さんは魔王と融合してしまった」


 異世界の神様を名乗る爺さんは、舌を出しテヘペロと笑った。ふざけんじゃねえっ……! 勇者召喚されたと思ったら、俺は『魔王』と融合してしまったらしい。


 どんな手違いだよ!


「おい、神様なんだろ! なんとかしてくれよ!」

「もう無理じゃ。一度してしまった勇者召喚は取り消せんのだよ」

「なぜ!」

「それが勇者召喚の契約だからじゃよ」


 くそう、なんだそれは。

 おかげで俺は真っ当な勇者ではなくなった。


 勇者+魔王という要素を合せて『勇魔(ユーマ)』なんて、ダサイものになっちまった。


「なんてこった……」

「ちなみに、お主の名はヨハン・ツァラトゥストラ・ウォルフガングス・ディオフィルス・ザラストロだ」


「いや聞いてねぇし、長げぇよ!?」


 俺の名前……長すぎだろ。

 そんな長い名前、覚えきれないってーの。


「まあ、ヨハンはかっこいいけど」

「違う。お主の名はザラストロ。そっちが名じゃ」

「語尾の方かよ!」

「この異世界では最後の方が名じゃ。しかし、そんなことはどうでもええ! さっさとスライムを倒して異世界・エンケラドゥスを救ってこい!」


 クソジジイは、俺の背中を蹴ってきた。

 ちょ、おい!!

 雲から落とされて、俺なんか落下してる――!?



「うあああああああ、このクソジジイ!!」

「ザラストロ! この異世界の命運はお前にかかっておる! 魔王に成り代わり、君臨するカオススライムを討伐するのじゃ! 良いな!」


「なんて勝手な!! うあああああああああああああ……!!」



 ぴゅ~~~~~~んと落下していく俺。

 そろそろ地上が見えてきた。


 てか、やべぇ!!


 地面に激突するだろうが!!



 死にかけている俺は、必死にもがくが……意味がねぇ。どうする、どうすりゃいい。


 その時だった。

 脳内に声が響いた。



(聞こえるか、ザラストロ!)


「クソジジイ! おい、早くしないといきなりゲームオーバーだぞ。さっさと死なずに済む方法を教えろ!!」


(よかろう。まずは精神を集中し――)


「そんな暇があるかあああああああああああ、うああああああああ……!!!」




 ドオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオン!!!!!!




 俺は地面に激突した。

 あ、死んだわ……そう思ったが、意識はあった。


 なんだ、生きてるじゃん、俺。


 人型の大穴は空いてしまったが、なんとか無傷だった。そうか、俺は仮にも勇者であり、魔王なのだ。これくらい屁でもないってことだ。


 しかし、どうやって穴から出ようか……。


 地面にはクレーターではなく、見事に人型の穴が出来てしまっている。おかげで俺は身動きがまったく取れずにいた。くそう、あのジジイのせいだ……。神様だか、なんだか知らんがヘッポコすぎだろう。


 とにかく脱出を――と、思ったら、突然俺の体が浮き上がった。


 背中から押されるような感覚。


 いや、誰かに押されているんだ!!



「どりゃあああああああああ!」

「うあああああああああああ!? なんだあ!?」



 地面から脱出できた俺。だが、背中になにかくっ付いていた。

 華麗に着地して俺は自分の身を確認。……うん、ケガはない。手も足も生えている。


 それにしても……アレはなんだ?



「……ふぅ。まさか地面に人が埋もれているなんて思わなかったです」

「なんだお前は。俺の背中を押しやがって」

「はじめまして。わたしはアリアと申します。一応、聖女です」


 銀髪の少女はそう名乗った。

 アリア……なんだか不思議だ。俺はその名を知っているような気がしたからだ。


「よろしく……?」

「はい、よろしくです。これからは仲間です!」

「マジかよ。早くも仲間か」

「ええ、神様の使いですから」


 あのクソジジジの使いかよ。

 そういえば、今聖女と名乗っていたな。なるほど、崇める神ってわけか。


「俺はこれからどうすればいい?」

「スライムを倒してください」

「スライムって雑魚だろ?」

「いいえ。この異世界のスライムは超超超強いです! 初心者ではまず倒せません!」

「なんだって? スライムって言えば、普通雑魚だろ」

「とんでもない! 普通のスライムでも、冒険者は即死です」

「なんじゃそら!」


 おいおい、俺の知っているスライムと随分と違うようだぞ。

 魔王が存在しなくなった代わりにスライムが異世界を支配しているとジジイは言っていたっけ。どんな世界なんだ、ここは。


「まずは村へ行きましょう。そこで情報収集をするんです!」

「そうだな。俺、この異世界の右も左も分からんし」

「では、案内いたしますね」


 アリアはまぶしい笑顔を俺に向け、手を引っ張る。

 まあいいか、こんな可愛い美少女と共に旅が出来るのなら、少しは楽しめそうだ。


 俺は勇魔(ユーマ)として、世界を救うさ。

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