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柴犬ホラー百物語

地下

作者: 柴犬

 父は此の家を建ててる途中に愛人を作り蒸発した。

 そう僕を育てた母親は教えてくれた。

 子供ながら僕は寂しい思いをしたが母の顔を見たら何も言えなかった。

 般若の様な顔をみたら。

 父の捜索願いは出されて無いらしい。

 愛人と蒸発する男など知らないということだろう。



 それから数年後のことだ。



 音が聞こえた。

 音が。

 





 其れは何時からか分からない。

 其れが聞こえ始めたのは。

 

 何が?


 というか分からない。



 ごく自然に聞こえていた。






 音楽の音であり。


 悲鳴の様であり。


 或いは食事の音であり。

 

 或いは水しぶきの音だった。


 


 其れが聞こえるの決まって深夜だ。


 夜。



 寝静まる夜。



 音が聞こえるのだ。


 深夜。



 誰も起きて無い深夜。



 音が聞こえ始めた。


 無視するには容易い音。


 安眠を妨げる程ではない音。



 だけど気になる音だ。


 気になる音は僕の好奇心を刺激した。


 だけど音がする場所が分からない。


 何処か?



 何処なのか?




 其れを調べるために僕は一階迄降り耳を澄ませる。




 違う。




 まだ下だ。




 下。




 僕は床下収納を開け中を取り出す。



 そして耳を澄ませた。




 まだ下だ。




 僕は床下収納を外し家の下に入り込む。


 そして周囲を見回す。




 何も無い。

 だが少しばかりコンクリートがおかしいのが分かる。

 下手くそな職人がしたのか形がおかしい。

 まあ~~いい。




 耳を澄ませた。



 音がする。


 音が。


 何時もの音が。



 何処から?



 更に下。




 僕は家のハンマーを持ってくる。


 其の儘床下のコンクリートを叩き壊すつもりだ。


 此の時母親が起きて来て止められた。


 ああ。


 糞。


 止めるな。


 


 鬼の様に止めてくる。

 ウンザリしてきた。


 




 仕方ない。


 止めるか。




 





 次の日も音が聞こえ始めた。




 今度は無視する。



 無視。

 無視。

 無視。

 無視。

 無視。

 無視。

 無視。

 無視。

 無視。

 無視。

 無視。

 無視。

 無視。

 無視。

 無視。

 無視。

 無視。

 無視。

 無視。

 無視。

 無視。

 無視。

 無視。

 無視。

 無視。

 無視。

 無視。

 無視。

 


 駄目だ。


 気になる。


 お酒を飲んで其の日は寝た。



 次の日も聞こえた。



 嫌になったので今度こそコンクリートを壊す。


 そのつもりだった。

 だが床下収納の上に母親が布団を敷いて寝ていた。

 駄目だ。


 諦めるか。


 



 次の日も聞こえた。



 

 今度こそコンクリートを壊す。


 そのつもりだった。

 だが床下収納の上に母親が布団を敷いて寝ていた。

 駄目だ。


 諦めるか。


 ああ……糞。


 


 次の日も聞こえた。



 

 今度こそコンクリートを壊す。

 今度こそ。


 そのつもりだった。

 だが床下収納の上に母親が布団を敷いて寝ていた。

 駄目だ。


 諦めるか。


 ああ……糞。




 次の日も聞こえた。



 

 今度こそコンクリートを壊す。


 そのつもりだった。

 だが床下収納の上に母親が布団を敷いて寝ていた。

 駄目だ。


 諦めるか。


 ああ……糞。


 またか。

 またなのか。

 





 チャンスが訪れた。

 何日も僕が床下収納を見に行かなかったら母親が安心したみたいだ。

 

 町内会の旅行に行くことになった。




 母が出かけるのを見計らって生コンクリートの材料を揃える。

 掘り起こした事がバレない様にするためだ。

 

 床下収納の下のコンクリートを砕いて穴を掘る。

 近所に成るべく掘る音が聞こえない様にする。

 万が一聞こえても良いようにテレビの音を高めにする。



 一時間しただろうか?



 分厚いコンクリートに嫌気がさす。


 




 二時間後。




 まだだ。





 三時間後。


 

 



 出てきたのはラジオだ。

 古ぼけたラジオ。

 音の正体は此れだろう。

 其れを取り出そうとした時の事だ。




 何かが引っかかる。

 白い何かが。


 白い棒。


 其れも奇妙な曲線を描いた複数の棒。



 人の手。



 しかも白骨化した人の手だ。







 意識が白くなった。

 突然の出来事に。



 背後で音がした。

 人が足を止める音。


 振り返ろうとした瞬間頭に衝撃が来る。

 意識が其処で途切れる。




























 気が付いた時は病院にいた。

 アレから五日時間が経過していた。

 全治半年とのこと。

 


 意識を取り戻してから警察が話をしにきた。

 其処で僕を殴り殺そうとしたのは母親だと知った。

 

 其の動機はあの人の骨が原因だった。




 男女二人の白骨死体。

 人物の照合をした結果誰の死体か判明した。




 数年前蒸発した父親と愛人だった。



 行方がわかなかった二人だった。

 あの鉱石ラジオの音が聞こえなかったら見つけられなかっただろう。


 何故アソコに死体が有ったのが分かったか?

 等と警察に尋ねられた。

 鉱石ラジオの音が聞こえたかだ

 そう伝えると変な顔をされた。


 鉱石ラジオは壊れていたらしい。

 だから使える筈がないと教えてもらった。






 だとしたらアレは何だったんだろう?

 アノ音は?


 地下から響いた音は?







 

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― 新着の感想 ―
[良い点] 怖い話ですが、主人公が助かってよかったです。 [気になる点] 柴犬様の他の作品でもいえることですが、通常の鉱石ラジオは電源を使わず、アンテナとアース線の間を流れる微弱な電流で音が出ます。 …
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