④登門の儀 その2
師匠と千寿の一騎打ち、登門の儀になります。
千寿は果たして合格をとれるか、合格の条件の中に秘められた祓魔龍刀術の次の段階
どうぞ、ご覧ください。
・・・やっぱり、龍牙風哭 から入ったか、、、・・・
千寿が放った風の衝撃波が、師匠のいる周辺ごと薙ぎ払い、土煙が舞った。
祓魔龍刀術 風龍の型 初太刀 龍牙風哭
龍氣を太刀に集め、風の衝撃波と刃を相手に向けて叩き込む技
初太刀の中で、最も広い攻撃範囲を持つ技だ。千寿の最も得意とする技だ。
・・・師匠の動きを警戒し、開始早々に叩き込んで出方を見るんだろう。千寿は高速戦闘が得意だから、土煙の目くらましと同時に切りかかるんだろう・・・
土煙が舞った先で動く影が見えた。その直後、予想していたとおり、龍牙風哭を叩き込んだ千寿は瞬を使って一気に影に詰め寄る。間髪入れずに2撃目を与えるのだろう。
「しぇあぁっ!!」
大きく振りかぶった刀身に火が纏った。
祓魔龍刀術 火龍の型 初太刀 炎斬り
龍氣を刀身に纏わせ発火。炎を纏った太刀で袈裟斬りにする技だ。
・・・師匠はまだ土煙の中!入るか!??・・・
ガキイィン!!
鉄と鉄がぶつかったような鈍い音が響いた。そして、土煙がそのぶつかった衝撃とともに晴れる。
「ほほほ、そんな簡単にもらうわけにはいかんよ、千寿や」
「嘘だろ!?そんなんありかよ!?」
余裕な顔の師匠に対して、驚きを隠せない千寿。それもそうだ、太刀の刃に対して、木刀の刃で受け止めているんだから。最初に言っておくけど、千寿の持ってる太刀は切れるものだ。その切れる鉄の刃を師匠は木刀で受けているんだ。
「ほほほ、龍氣にはこんな使い方もあるんじゃよ、教えてなかったかの。ほら、お返しじゃ!」
受け止めた木刀で太刀をいなし、体勢の崩れた千寿の顔に師匠の正拳が叩き込まれた。
「がっ」
鈍い音とともに千寿のうめき声。一気に反対側の壁にまで殴り飛ばされた。水路に千寿が落ち水飛沫があがる。
「おうおう、ちとやりすぎたかのぉ。まあ、手を抜くつもりは毛頭ないからええか。」
・・・相変わらず凄まじいな。師匠の 氣鉄 は・・・
師匠の使った技も祓魔龍刀術の1つだ。
祓魔龍刀術 土龍の型 初作 氣鉄
龍氣を体の一部分に集め、その部分の強度を上げ防御力を強化する。武器に使えば、武器の強度も上げられる。攻防の両方に使える技だ。太刀を木刀で防いだのもコレだ。ちなみに、向こう側までぶっとばしたのは、師匠の腕力。氣鉄で強化したのは、拳を守るためだろうけど、威力はえげつない。千寿は大丈夫か。
ざぱぁああん
「痛ってぇな、チクショウ!マジで危なかったぞ、さっき」
勢いよく上がった水飛沫と一緒に千寿が戻ってきた。殴られた顔に腫れはなく、少し赤くなっているだけだ。おそらく、千寿も氣鉄をなぐられる瞬間使ったのだろう。ただ、千寿は土龍の龍氣が苦手だ。だから、使用が一瞬遅れて上手く受けれなかったのだろう。
ちなみに龍氣にも相性があって、得手不得手が見受けられる。俺は、水 土 陽 陰の龍氣が得意で、千寿は、火 風 雷の龍氣が得意だ。
「危ないとはなんじゃのう、これぐらいの危険、外にはごまんとあるのじゃ、旅に出るならこれぐらい払えんと犬死にじゃぞ?」
「くっ」
師匠の言うとおりなだけに千寿は何も言えない。俺たちが旅に出ようとしている世界には、野盗、山賊等の者どもがわんさかいる。自分の身は自分で守れなければ意味がない。
「ほれ、もう終わりか?かかってこんか。このままでは登門はやれんぞ。」
「このクソジジイ!」
・・・あ、あの口調。千寿のやつ、顔に一発貰って冷静さを失ったか?・・・
千寿の口調が荒々しくなるのは気が立っている証拠だ。自分の得意な型で一気に攻めて一本取る気だったんだろう。それが、無傷でかわされ、簡単に受けられ、終いには一発顔に貰ったのだから、一気に頭に血が上ったのだろう。こうなると少し分が悪い。千寿の長所は、相手を捉える目の良さから、高速移動術で相手に詰め寄り、最大火力の技を叩き込む一撃必殺なのだけれど、冷静さを失えば相手のカウンターを受ける一直線の単調な動きになってしまう危険がある。
「ほれ、ほれ、ほれ。」
「ぐあ、がっ、がは!」
案の定、千寿の太刀筋は完璧に見切られ、それに合わせたカウンターの正拳が飛んでくる。一気に千寿がボロボロになっていく。加えて、千寿は土龍の龍氣が苦手で上手く防御もできない。いや、防御することも忘れている感じだ。
「ぐうゥ!」
最後に腹に一発貰って蹲ってしまった。ただ重いだけの正拳ならいいが、師匠の正拳は氣鉄を纏っているから、一段と重さが増す。やばいな、これ
「なんじゃ、もう終わりかの。意外と脆かったの。」
師匠は肩をトントン叩きながら、木刀を下げた。下段の構え、完全に千寿から闘気を外している。これは千寿からしたら、相手にならないという屈辱を与える構えだ。
「これでは到底登門を与えるどころではない。お主は今まで何をしておった。龍炎とともに一体何の稽古をしておった。未熟者!!」
「・・・・」
千寿に向かって師匠は言い放つが、千寿は蹲って動かない。最後の腹への正拳が効いているんだ。
「お主はまだ祓魔龍刀術という技を知っただけに過ぎん、わしに一本与えるにはその先に行かねばならん。今までの稽古で、お主が手を抜かず努力し続けていたのは知っておる。だから、答えは既にお主の中にあるはずじゃぞ、千寿!!」
「う、ぐゥゥ!」
太刀を支え代わりに、体を起こす。なんとか立つことができたが、もうボロボロだ。
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祓魔龍刀術の技? その先? なんのことだ? 初太刀と初作が技じゃないのか?
ボロボロの体、貰った正拳一発一発が重く、ダメージが残る。視界が揺らつく中で千寿は必死にもがいていた。師匠の言った意味は何なのか。
嫌だ、嫌だ。兄貴と一緒に旅に出るんだ。兄貴は3年待っててくれた、なのにこれじゃ、、、
どうすればいい、俺の得意な技 風牙龍哭 炎斬りは軽く止められた。かろうじて 瞬 のスピードは師匠相手に通用はする。でも、師匠の氣鉄は硬い、硬すぎる。木刀の氣鉄すら破れない。師匠に届く前に受けられる。どうすればいい??
考えている中、ふいに兄貴の姿が見えた。すると、
そういえば、、、、
兄貴が登門になってからの稽古で、ちょっとだけ。ほんのちょっとだけ違和感を覚えたことがあった。確かあれは、、、随分前、、、
千寿の思考がクリアになっていく。記憶を辿り、ヒントを探す。自分の目標であり、憧れでもある兄からのヒントを
そうか、そうだった!これだ!!
千寿は心の中で叫ぶと、力を振り絞った。最後の一太刀を放つために
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「ん、んがああああ!」
唸り声とともに千寿が太刀を構えた。師匠に切っ先を向ける。目はまだ死んでいない。
「ほほ、ようやくか。どれ、答えを見せて貰おうかの。お前が3年間見てきたものを。」
「ふーっ、ふーっ、ふゥー」
千寿が呼吸を整える。俺にもわかる、最後の一撃を出すつもりなのだと。
答えは、相性と合わせること。そして、込め方だ、、、
千寿が聞こえるか、聞こえないかの呟きをあげた。すると次の瞬間
「ああああああああああ!」
声とともに龍氣が膨れ上がる。今までで一番の龍氣量だ。そして、、、
千寿の姿が消えた。その直後、雷が落ちたような雷鳴が轟き、土煙が天を突くように上がっていた。
凄まじい衝撃に俺も目をつぶり、土煙で苦しくなり咳き込む。
洞窟の中のため土煙が晴れるのは少しかかったが、ようやく視界が戻る、
「これは!!?」
俺も正直驚いて、これしか出せなかった。
視界の先には、太刀を振り下ろした千寿の両腕が血まみれになっていたこと。そして、師匠の木刀が断ち切られ、師匠の右肩から左脇腹にかけて一閃の刀傷ができ、血を流していたことだった。
ご覧いただきありがとうございます。少し投稿まで時間がかかりました。
ちょっとずつ出てきましたね、龍刀術の型の種類。風龍 火龍 土龍 雷龍、そしてまだ出てきていない、水龍 陽龍 陰龍。少しずつ解説しながら出していきますね、
登門の儀に決着、次回は答え合わせとなります。
お楽しみに