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第7話 6節「イクラの家」








 そのあと少し沈黙が流れたから、僕らはお互いを見つめ合ったまま、




 アハハ、と笑った。




 何だがすごく面白くなってしまって、しばらく笑い続けていたと思う。




 僕としては全然、恐怖が解消された訳ではなかったが、彼女と笑い合うだけで、なんだか幸せな気がする。






「食べられることが分かった。本物のイクラだ、ってことが分かった。でも、このイクラが、どうして存在するのか。どこからやって来たものなのか、それが謎だよね」






「うん。どう? 倫くんは解決できそう?」




「いや、全然分からない。部屋に、監視カメラを置くしかないみたいだ」




 僕はいよいよ、本気で監視カメラを設置しなくてはならないかもしれない。と思い始めてきた。




「ねえ、どうする。後で監視カメラの映像を見たら……何もないところにいきなり、イクラが出現していたら」




「やめろよ。怖いこと言うの」




 と僕はかなり心配になった。真下さんが想像したことは、実現する。それが昨日、証明されたことだから。






 透明なペンケースの中で増殖したイクラの残像が、まだ瞼の奥に張り付いている。それが僕の心を恐怖で浸してくる。






 だから今回も、何もないところに突然イクラが出現する、という彼女の予言は、実現するかもしれない。




 もしそのような恐ろしい出来事が巻き起こってしまったら、僕は発狂するかもしれない。






「ねえ、大丈夫? 顔色悪いような気がする」




 真下さんは、僕の瞳をジッと見つめた。






 恐怖を、緩和させるかのように、僕は彼女の瞳を食い入るように見つめた。




 彼女の姿をこんなに近くで、ハッキリとまじまじと、見る機会は他にはないだろうと思って、僕は彼女の顔を観察した。






 奇麗な肌をしていること。奇麗な瞳をしていること。顔立ちが良いこと。二重だということ。鼻が高いこと。つまり美人だということ。




 とても可愛いということ。そして、イクラの謎を、一緒に解明しようとしてくれること。




「いや、大丈夫。ちょっと落ち着いてきた」


「ならよかった」




 それでも真下さんはまだ心配そうな表情を浮かべている。今の僕は、そんなに酷い顔をしているのだろうか。






 心配になって、立ち上がって、鏡を見た。予想以上に白い顔をしていた。




 ああ、こんなにも、やつれた顔で真下さんと会話を続けてしまったのだ。少し残念な気分になる。




 それから部屋に戻って、真下さんと少しお話をして、今日はこれでお開きということになった。




 なんだか彼女にとても慰めてもらったような気がして、少し申し訳ない気持ちになった。






 次の日の学校からの帰り道、僕は真下さんと一緒に図書館に入った。




 イクラについて調べるためである。




 公園と隣接しているこの図書館のデザインは見事なもので、中にレストランまである。イクラの調査に疲れたら、そのレストランで休憩するつもりだ。






 僕らはしばらくの間、イクラについての資料を探していたが、全然みつからなかった。






 検索機も使ったが、ヒットした本を見てみても、イクラを使ったレシピとか、サケの生態とか……そんな見当違いなものばかりだった。





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