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第7話 1節「イクラの家」




 壁に、イクラが一粒。張り付いていた。




 僕は「あれ? 昨日の夕飯にイクラなんてあったかなぁ」と不思議に思った。そのイクラは、まだ赤々としていて新鮮だった。それが、白い壁にたった一粒。ちょん。と、くっ付いている。




 このイクラは、果たしてどこからやってきたものなのだろうか、と思い僕は考えた。母親が食べたやつが一つ、服について、それが再び僕の服について、そうして偶然にしてこの壁にくっ付いてしまったのだろうか。いや、そんなことがあるのだろうか。




 ところでこのイクラはまだ新鮮で、そんなに日が経っていないと思うから、大昔に食べたやつが張り付いていたことに今気が付いた、ということではなさそうだ。




 僕は困惑した。このイクラがどこからやってきたのか思い出したくて仕方がなかった。でも、どれだけ考えても、やはり最近、寿司など食べた覚えはないのである。




 母親に聞いてみた。




「……ねえ、お母さん最近、お寿司とか家で食べた? それか、イクラ丼とか、どこかで食べた?」




 と聞いてみたが、別に食べていないよ。なんで? ということだったので、いよいよ不安になってしまった。




 僕の家は母子家庭だから、母親がイクラを食べていないと言えば、もうどこからもイクラが運ばれてくる余地はないのである。




 これは怪奇現象だと思った。




 僕は部屋に戻ってそのイクラをまじまじと観察した。なんの変哲もないそれは、どうして僕の部屋の壁に一粒だけくっ付いているのだろうか。考えると頭が痛くなりそうだった。




 僕はどうしてもこのイクラを捨てる気分にはなれなかった。だから、透明のペンケースを一つ用意して、その中に保存しておくことにした。

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