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ただのおじさん








――――現実なんて、クソだ。













俺は、あと数分で30歳になる。




俺の名は、孤堂寺(こどおじ) 丹生(たんしょう)


童貞、ワキガ、不細工、陰キャ、コミュ障、早漏、無職、実家暮らし。

服は母親が買ってくるからダサいかどうかはわからない。しま〇らとユニ〇ロが多い。

昔はコミケに行ったりネット掲示板で語り合うほど活動的なヲタクだったが、今はその熱意すらなく、毎日違法アップロードされたよく知らないキャラクターの同人誌でしこっている。

趣味はない。当然特技もない。学生時代は帰宅部の仲の良かった3人くらいで教室の隅で話していた。

この前牛丼屋で3種のチーズ牛丼に温玉乗せで頼んだら笑われた。

基本、爪にはなんか黒いのが挟まっている。

陽キャが嫌いとか、リア充が嫌いとか、そういう感情も既に超えてしまった。



自分が、自分のいるこの世界が、嫌いだ。



そして先にも述べた通り、俺はもうすぐ30歳になる。

要するに、魔法が使えるようになるわけだ。

もし本当に魔法が使えるのであれば、人生をやり直したい。

だがまぁ、どうせそんなことはない。

童貞30(サーティン)が使える魔法なんてない。



そんなわけで、股間の魔法のステッキを握っている俺は、日付の変わるタイミングでマジカルシャワーをぶっぱなってやろうと、おかずを厳選している。(1分はかからないので直前まで触っているだけ)



いい感じにおっぱいの大きい女の子のイラストを見つけ、時計を確認する。

魔法使いになったら、その直後にマジカルシャワーしたと、ネット掲示板に書き込もう。

序盤と前戯はいいので、致しているシーンまでスクロール。ちゃんと読んでいたらキスしたときにはもう賢者になっている。


さて、時が来た。手を動かすと同時に出そうな気がした。少しクールタイムを挟む。

あと5秒、4、3、2、1・・・!


















飛び出した液体は、目の前の樹木にかかった。






目の前に樹木なんてさっきまでなかった。だが今は確かにある。液体もひっかかっているので本物だ。というかここは外だ。なぜだ。なぜ俺は外で、というか森の中で椅子に座って股間を握っているんだ。どうしてこんなおかしなことが起こっているのに冷静なのか?そんなの賢者だからに決まっている。





・・・ここはどこだ・・・?






その時、風上から少しスパイシーな、香料のような匂いがした。

振り返るとそこには、レンガ造りの家々が並ぶ、小さな町があった。

少し離れたその町を見て、俺は理解した。



ここは俺の元居た世界じゃない。



異世界転移というやつなのだろう。困った。

何が困ったって、こういうのは自称陰キャのイケメンがするものだ。

俺のような人間が異世界転生などしても、どうしようもない。

ハーレム展開があったとしても、異性との交流が無さ過ぎて過呼吸になる。

というか頭もよくなく顔もよくなく運動もできず特技もないのにどうしろというのだ。


正直知らない町に親もなしに行くのは無理すぎる。コミュ障陰キャを舐めないでほしい。

だが、さすがに外は冷える。

いつぶりかの外だし、薄着だから死ぬほど冷える。ズボンも下がりっぱなしだし。






長々と躊躇したが、流石に諦めた俺は重い腰を上げ、ズボンも上げ、町のほうへ足を向けた。

手ぶら故に不安しかない。何かないものかとポケットなんかを探りながら歩く。


偶然にも小銭がポケットに入っていた。だが、異世界でこの通貨が使えるのかどうか・・・













ポケットの五円玉には、なぜが紐が付いていた。

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