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悪役英雄に憧れて  作者: 夕闇インフェルノ
1/1

始まりは突然で

途中から第三者の主人公表記を彼女からアセロラに変わります。

朝、目を覚ましいつもと変わらない一日が始まる。

彼女は何気なく鏡に視線が止まった。

彼女のよく知る顔が鏡に映っていないことに気づき近くへ寄ってみる。

どう見ても自分のように思えないその顔は、どの角度から見ても美しいものであった。

彼女の憧れた美少女が映る鏡…

自分の新しい容姿に見とれているとふとあることに気づく。


幼い…


不思議でたまらない。

昨日の夜まで立派な成人女性だったのだから。

自分の顔を観察しているともう一点、不可解な点があった。

珊瑚色の瞳に月白の髪…見覚えのあるジト目


まさか…


"アセロラ・アルカディア"

それは彼女のつくった彼女の"理想郷"

当時、乙女ゲームをプレイしていた彼女は自分がこの世界に出てくるならこんな子が良い!とつくった少女だ。

彼女の性癖を詰め込んで性格はほぼ変わらない…

流行りに乗って乙女ゲームを始めたのだが、彼女は主人公が苦手であった。

そのため、アセロラを登場させギャグ展開や王子と王子がくっつく展開に持ってゆくという事を頭の中で行っていた。

そう…彼女は異性愛をあまり得意としていなかったのである。

どちらかと言うと同性愛の漫画等を好んで、特に男性の同性愛をよく読んでいた。

一般で言う所の"腐女子"という分類に属した者だった。

その性格からアセロラの設定を悪役令嬢にしていた。

元々彼女は、英雄(ヒーロー)より悪役英雄(ダークヒーロー)を好んでいたためでもある。


さて、どうしたものか……


理想の自分になれたはいいもののアセロラは設定では親に見捨てられた悲劇のヒロイン(?)だった。

その方が自由にできるという理由ではあったが…


結構大変ではないか?!

侍女などは優しくしてくれるから問題はないけれど…もし設定がそのまま反映されているのだとしたら両親に勝手に婚約者を見つけられ契約させられる…

そしてアセロラこと私が10歳の誕生日に婚約者の家に引き取ってもらうのだが…その婚約者…"イズム・クラシス"は、イケメンなのだが…そう…腐男子である…

話の会う男子が欲しい!せっかくなら自分の性癖をこっちにも盛り込んでやろうと妄想した結果…出来てしまった奴だ…。




アセロラにとって美味しくも嬉しくもある存在ではあるのだが、不安でもあった。

ヒロインに取られてしまうのではないかと…

ヒロインはとても美少女だ。イラストが美しいなら本物も美しいだろう。容姿だけではなく、中身までもが完璧な人間だ。

そこがアセロラにとって苦手な部分でもあった。そんな完璧な人間この世に居たら怖いのだ。


「アセロラ様…もう朝食のお時間ですので起こしに参りました。」


「え…?あーはい…」


侍女である"ジェイド"が部屋に入ってきた。


もうそんな時間経ったのか…

考えることが多すぎて時間を忘れていたのが盲点だったか…

あ、そうだ…自分の歳が何歳なのか聞いてみよう。分からないし


「あのさ、ジェイド。私って歳何歳だったかしら?」


一瞬ジェイドが瞳を大きく見開いたが、すぐにいつもの表情に戻り告げた。


「アセロラ様は本日10歳の誕生日を迎えられました。…おめでとうございます。」


10歳か…って今日両親に私が捨てられるの?!タイミングがいいのか悪いのか…イズムにはまだ会っていなく今日初対面なのは嬉しいが、親に捨てられる自分を見たくはなかったな…


「アセロラ様…そろそろ朝食へ向かいましょう。」


ジェイドが哀れんだ瞳で声をかけてきた。


ああそうか…ジェイドは知っているんだ…

私が今から捨てられることを…流石に黙っているわけにはいかないもんな…


「ええ…」


アセロラは目を細め下を向いた。


アセロラ様…貴方様は…


ジェイドは勿論知っていた。

これからアセロラがクラシス家に行くことを。

アセロラには伝えられてないことも。

だが、今のアセロラの動きや表情はこれから起こることを知っていると物語っている様であった。


私は…


ジェイドは、アセロラが産まれた日に此処へ雇われた。

アセロラは産まれた時から両親に見捨てられ、親の顔を見たことが無い。そのため、ジェイドが付きっきりでお世話をしていた。

つまりジェイドはこの家で誰よりもアセロラに詳しく、アセロラにとっての姉であった。

知らない場所にただ独り急に追い出されるようであればアセロラだって戸惑うであろう。アセロラはまだ10歳だ。

ジェイドは過去に親に捨てられ8歳でここに来た。アセロラより年下だが、あいにくここに勤めている者はみな親切でここまで来れた。けれどクラシス家は優しいかどうか分からない。

それならジェイドが考えたジェイドに出来ることは一つ…


「アセロラ様…少しよろしいですか?」


「いいわよ…どうしたの?」


「私も…私もご一緒してよろしいでしょうか?」


真剣なジェイドの視線に驚いたのは確かだ。

私にとってはとても嬉しいし、心強い。

だが、果たして両親は許してくれるのか?クラシス家は受け入れてくれるのか…


「いいわ…ジェイドがいてくれると心強い。でも、両親やクラシス家の方々がいいって言ったらね。」


アセロラは柔らかく微笑んだ。


アセロラ様は何処まで優しいんだろうか…侍女である私の我儘を嫌な顔一つせず受け入れてくれた。

そんなアセロラ様が私は好きだ。

多分これからもずっと。

私はアセロラ様に一生ついていきます


改めて心の中でジェイドはアセロラに忠誠を誓った。


「有難うございます。」


ジェイドも幸せそうに微笑んだ。


読んでくださりありがとうございます。


2000字を目安に書いていきたいと思います。

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