9月編 第1話 こいつこんな性格だったっけ…
今回から9月編に入ります。まだまだ未完ではありますが、これからもよろしくお願いします。
9月に入り、夏の暑さは少しずつ引いてくるだろうと言う予報だったのだが現実はそうではなく、ただただ残暑が続き、暑苦しい生活が待っている。
「あ……つい……」
手で仰いで風を送るも、全く効果はない。
今、この病棟内ではエアコンが故障してしまっている。そのため、扇風機がフル稼働しているが、なかなか暑さは消えない。
「早くエアコン直ってほしい……」
玲衣もこの暑さには耐えられないようだ。
「し、失礼します……」
遼子も今までの元気が嘘のように暑さに負けてしまっているようだ。
「あ、遼子さん……はぁ……はぁ……」
「大丈夫ですか?」
遼子が心配そうに俺を見るが、流石に今は人の心配よりも自分自身の心配をしてほしいものだ。
「俺は大丈夫です……はぁ……」
遼子が自身の掌を俺の額に合わせる。少しだけひんやりとする。
この時間が長く続けばいいのだが、ひんやりとした手はすぐに離されてしまった。
「さっきの気持ちよかったですよ?」
遼子はなぜか顔が真っ赤になった。
「ふぇ?あ、き、気持ちよかったですか?」
「ええ、とっても」
「よ、洋一さん……は、破廉恥れすぅ!」
遼子は真っ赤になって俺のベッドから退いた。その後玲衣のベッドに向かう。
俺は遼子と玲衣の会話を聞くためベッドのカーテンに耳を当ててみる。
「ななな何て会話をしていたんですか!? こっちにまで丸聞こえでしたよ……」
「す、すみません……以後気をつけます」
「それはそうと、洋一くんにもちょっと痛い目にあってもらわないとねぇ」
ベッドから指をポキポキ鳴らしている。その刹那、背筋がゾッとした。
(これはやばい……)
俺は急いでベッドに体を預けようとしたが時すでに遅し。
「よ・う・い・ち・く・ん? ここに……いるんだよねぇ? 聞き耳立ててないでこっちにきなよ」
今まで聞いたことのないと錯覚してしまうほどの恐怖心が身体全体を覆った。
「は、はい……」
少しでも玲衣の気を引こうと身を萎縮させて顔を出す。
「そこに……正座っ!」
「は、はいぃ!!」
玲衣に指示された通りに床に正座する。
「遼子さんも!」
なぜか遼子にまで飛び火する。
「え?」
「言ったことが解りませんでしたかねぇ?」
「はぁ」
「わからない人にはこうだっ!」
玲衣は急に立ち上がって遼子の体に触れる。そこからは、俺から見たら天国、遼子から見たら地獄の世界だった。
「あっ、そこはっ……やめっ……」
玲衣は遼子の大きな胸を下から掴み、上下に大きく揺らす。
「これが……私を……怒らせた罰だぁ。こんなけしからんものを持っているなんて……」
「いやあぁぁぁぁ!」
遼子は今まで以上に大きな声で叫ぶ。それでも玲衣はやめない。
「や、やめっ」
「玲衣……落ちつけ……」
俺は玲衣を静止しようと動いたが、それでもお構いなしだ。
「洋一くんはそこで正座してなさい!」
しかし、それでも俺は今遼子を救うべきなのではと思い、玲衣の指示を無視する。
すると標的が俺に変わったのか、玲衣が俺の方をギロリと睨みつける。
玲衣の背後から龍のようなものが見える。
「私の言うことが聞けないのかなぁ?」
今の玲衣は誰も手がつけられない。俺に向かってゆっくりと歩いてくるその姿はまるで獲物を最後まで追い詰めた後、仕留める瞬間を狙っているかのようだった。
「待ってくれ!」
「待たないよ?」
玲衣はかぶりを振る。
「誤解なんだ! ハレンチなことなんて一切ない!!」
「え? でも……」
玲衣が動揺している。これなら今がチャンスだ。
「俺が暑さでやられていたから、遼子さんが体温を測ってくれたんだ。その時にひんやりしたものが触れて……それが気持ちよくって……」
「え、じゃあ……それであんな話を? でも……」
「遼子さんが勝手に変なこと考えただけだ。俺は正直に遼子さんに話しただけだ」
玲衣の怒りの炎は引いたように見える。
「ごめんなさい……私……一人で変なこと考えちゃって……」
「俺は大丈夫だけど……そこにいる遼子さんが……」
遼子が軽く咳払いをする。
「玲衣さん、お気持ちはわかりますがさっきのはやり過ぎです」
「す、すみません……」
「以後気をつけるように」
「はい……」
玲衣は反省しているのだろうか、俺が玲衣に顔を出したときのように体を萎縮させていた。
「それと、お二人には連絡があります」
遼子はワゴンから一枚の紙を俺と玲衣に渡した。
そこには《面会開始のお知らせ》と書かれている。
「面会開始って……また潤也たちに会えるってことですか?」
遼子はニコッと微笑む。
「それ以外に何があるんですか」
「え、そ、それは……」
「今から言うことは今日から実際に出来ることです。本日から1日合計30分間だけ面会を許可します。面会者の制限はありません。以上です。では、家族、親友との再会を楽しんでください」
そう言って遼子は病室を後にした。
「やったな、玲衣」
「は、はい」
玲衣も嬉しそうに返事をした。しかし、玲衣は辛そうな顔をしている。
「玲衣?」




