合同授業
僕が複属性だと知られたくない理由は一つ、雷属性の魔法を使いたくないからだ。
複属性だとわかると、徹底的に検査される。その際に、雷属性が使えるとなると、徴兵されるか教師になって使わざるを得ない。
入学や教師採用の際は、自己申告した属性の魔力のみを計測した。一応のため、ルルじぃから習得した魔法はあるが、恐らく意味はなさないだろう。
暑い日の朝、教室に向かう際に廊下でレオナと会った。
「先生!今日って合同授業ですよね?」
レオナは、距離感というものを知らないのだろうか?話しかけてくるときの距離が近すぎる。
「そうですね。問題は起こさないようにお願いしますよ」
「その言い方だと、私がいつも問題を起こしているみたいじゃないですか?」
問題は沢山起こしている。他の学科の生徒に勝負を挑んだり、実技の授業中に暴走したり、と入学して数ヵ月の間に何枚の反省文をかかせたことだろうか。
「起こしているから言っています」
「クルト先生も大概ですけどね」
背後から声が聞こえる。ダンデル先生とティニート先生だ。
ダンデル先生は土属性学科の教師。白髪に立派な髭を蓄えている。種族はドワーフだが、長身で若々しいため、人との違いはあまりないように見える。
ティニート先生は、水属性学科の教師。すらっとして、大人の女性といった雰囲気を漂わせている。
「先生も、よく問題を起こしていますよ」
ダンデル先生は少しお怒りの様子だ。先日のグラウンドに大穴を空けた時の怒りが、未だに収まっていないようだ。
土属性学科のダンデル先生は、あの大穴を埋める時も愚痴を言っていたらしい。
「教師の威厳もいいですが、あれはやりすぎです」
「返す言葉もありません」
ダンデル先生は「二度目はありませんよ」と言ってため息をついた。
自分には魔法を見せびらかす趣味は無いが、新しい魔法の開発でついやってしまうことはありそうだ。
「クルト先生。今日の合同授業、よろしくお願いしますね」
「はい。よろしくお願いします」
隣でレオナが嫌そうな顔をしている。
それもそうだ。火属性との相性が悪い水属性学科との合同授業だ。
「では、また後程」
二人とも、笑顔で各々の教室に行った。
レオナを見ると、今度は何か考えている素振りを見せている。
「どうかしましたか?」
レオナは素っ気なく「何でもない」と言って、先に教室へ入っていった。