修行します。4
ルルじぃの指導を受けて数日がたった。
結論からすると、僕は全ての属性の魔法が使えた。さらに、魔力の量がそこそこ多いらしい。
しかしながら、それは良いことではないらしい。
全ての属性が使えるということは、光と闇の両方が使えるということで、体内の魔力が喧嘩する危険性を秘めているそうだ。
さらに、魔力が強いと道具を使ったときに暴発しやすく、ワンドが砕けてしまった。しかも、強い魔法使いは徴兵されやすいそうだ。
「ここまでの魔力を持つと、とても苦労することになるじゃろう。しかし、雷属性は駄目かのお」
「はい。雷属性の魔法はトラウマで使えないです」
以前、雷属性の魔法を使った時、雷に打たれたときの記憶がフラッシュバックしてしまい、そのまま気絶してしまった。
「そこまでの魔力があるのなら、無理に雷属性の魔法を使わないくても良いかも知れんのお」
僕は、オリジナルの魔法を考えていた。
前の世界の科学が通用するのなら、試してみても良い気がする。
「少し試したいことがあるんですが、いいですか?」
周囲に被害が起こらないように、結界のようなものを張ってもらった。これも特殊魔法の一種らしい。
「調整出来ないと思うので、よろしくお願いします」
魔法を覚えてから数日で出来るとは思わないけど、物は試しってことで。
「ウォーターボール。ファイアボール」
左手のウォーターボールは極力小さく、右手のファイアボールは極力強く。
想像は『水蒸気爆発』の発生。
曖昧な認識の知識だが、発生条件は「非常に高温の物質が水分に接触すること」だったはず。
「複数の属性を同時発動とはやるのお」
左手を高く掲げて、そこに右手のファイアボールを突き上げるようにして当てる。
とりあえず爆発だから魔法名はこれかな。
「エクスプロージョン!」
想像以上の爆発が起こる。
自己防衛のために、風魔法ブロウ・ウィンドで上方向に押し上げる。
「見たことのない魔法じゃな。複数の属性を同時発動させた上に、それを組み合わせるとは……」
この世界では、そこら辺の科学(?)は進歩していないのだろう。
水だけで起こした爆発は、風とともに消えていった。実際の爆発を見たことはないから、消え方なんて知らない。だから、他の要因で消えた可能性も否定できない。
「お主は才能があるのお」
その言葉は、ズルをした心に突き刺さる。
ルルじぃは、少し考えてから「話がある」と言って家の方へ身を翻した。
家に着くと直ぐに机の上に地図を広げ、そこに二つのコインを置く。一つはここの位置だ。
「ここに何が?」
老人が地図の上に手をかざすと、その二つの間に線が引かれる。直線ではなく曲線で。
「ここはルーベンズ国立魔法学校じゃ。ここからは二日あれば行けるのお」
その学校の説明をすると、悲しげな表情でこう続けた。
「お主はここにいるべきではない。ここへ行けばもっと魔法を学べるじゃろお」
「待って下さい。僕は別に……」
そこまで口にして、ふと気が付いてしまった。
拒否する理由はない。やりたいこともない。
だけど、何か心に引っ掛かる。
「この国の学校は学費が要らないからのお。金銭面のことなら心配要らぬ」
僕は頭を縦に振ることしか出来なかった。心の引っ掛かりを言葉にすることが出来なかったからだ。
「今日明日の話ではない。まだ、教えるべき事が残っておるからのお」
「……よろしくお願いします」
ルルじぃはゆっくりと首を縦に振った。
「お主の事は学長に伝えておくから心配はいらぬ」
「ありがとうございます。このお礼はいつか」
何がお礼になるのか分からないけど、何らかの形で必ずお礼をしよう。
「お礼など要らぬよ」
「いえ、絶対に何かお礼をさせてください」
ルルじぃは苦笑いをしながら小さく頷いた。
「では、楽しみにしておくよ。お主の意思の強さはこの数日で良く分かったからのお」
強くなんてない。ただの頑固者だ。
それに、今回は自らの目標を相手に求めただけだ。本当に僕はズルい人間だ。