転生しました。
目が覚めると、そこは小さな木造の小屋だった。
窓の外には沢山の緑が見える。
「目が覚めたかのお?」
声がする方向を見ると、そこには小さな老人がいた。
右手には木製の杖を持ち、左手は曲がった腰に当てられている。
「ここはどこですか?あなたは?」
「落ち着きなさい。ここは、バベルの森。わしはルルベ・ルイベル。年老いた魔法使いじゃ。」
聞いたことのない森の名前に、変わった名前。そして、魔法使いという単語。
ここは元の世界とは違う。
「お主、どうしてあんなとこにいたのじゃ?」
「あんなとこって?」
「覚えていないのか。お主はこの森の中心にある湖に浮かんでいたのじゃ。あの湖には、恐ろしいモンスターがいるのじゃが、お主は運がよかったのお。」
湖?全く身に覚えがない。だって、僕はあの日……。
「うわぁっ!」
そうだ。僕はあの日死んだんだ。
あの日の出来事が目の前に浮かんできて、恐怖心がよみがえってきた。身震いが止まらない。
目の前の老人は、優しい顔でこっちを見ていた。
「そうか。辛いことがあったんじゃな。」
背中をポンと優しく叩いてくれた。
そこから、熱が伝わってくる。ホッとする感じの熱だ。
すると、すぐに体の震えが収まった。
まるで魔法みたいだな。と思って、すぐに確かめたいことを思い出した。
「あの。おじいさんは魔法使いなんですよね?どんなことが出来るんですか?」
「わしは魔法薬学が専門じゃが、簡単なことなら出来る。例えば。」
そう言って杖を振ると、かまどに火が着いた。
「そういえば、お主の名前聞いていなかったのお。」
「僕ですか?僕は……」
日本人の名前だと不都合かなと思い、それっぽい名前を考えた。
「クルト・メイドルです。」
少し時間がかかったが、なんとかこの世界っぽい名前が思い付いた。この老人の名前しか情報がないけど、良い感じだと思う。
自分の名前を言うまでに、凄く悩んで時間をかけたせいか、老人は怪訝な表情を見せた。
「珍しい名前じゃのお。」
「僕は気に入ってます。」
「それは良かったの。」
老人はニコリと笑った。
なんとか誤魔化せたみたいだ。
「しばらく泊まっていくと良い。まだ疲れが癒えていないじゃろ。」
僕は、お言葉に甘えることにした。
その後、ご飯をいただき、お風呂を済ませて寝床を貸していただいた。
「明日はどうするかのお?」
そのことは、お風呂に入っている時に考えていた。
今の僕は無一文で、この世界の知識はない。
それなら、やるべきことは1つ。
「僕に魔法を教えてください。」
生き抜く術を手にいれるために、魔法を学ぼう。それと同時にこの世界の事も教えてもらおう。
それが僕のはじきだした答えだ。