ルナの目1
ルナ・オーディス。彼女の学力は校内でも指折りだ。しかし、彼女が教室にいることは殆どない。
学校にはいるようだが、何処にいるのかは分からない。探しても見つからないため、教師陣は成績優秀を理由に諦めている。
そんな彼女が今、目の前に来ている。
「先生。今夜、私の家に来てください」
無表情のまま、真っすぐな目で見上げてくる。その目は白く、とても冷たい印象を受ける。
「どうかしましたか?」
「今夜、私の家に人攫いが来ます」
最近、この近くで人攫いが発生している。被害者はこの学校に入る前くらいの幼い子だが、背の低いルナはそのくらいに見えなくもない。ただ、その真っすぐな目からは幼さは感じられないが……。
「どうしてそう思うのですか?」
目を逸らさずに数秒。何を考えているのか想像もつかない表情のまま、ゆっくりと口を開いた。
「私には分かるんです」
その目は未だに真っすぐこちらを向いている。嘘をついているようには思えないが、信じるのには理由が不十分だ。しかし、もしも本当ならば行かない訳にはいかない。
「分かりました。万が一が無いとも言えませんしね」
「万が一ではありません。絶対です」
表情は変わらないが、その目からは先ほどよりも強い意志を感じる。
「では、仕事が片付き次第行きますね」
「はい。お願いします」
気のせいだろうか。一瞬だけ笑ったように見えた気がする。彼女が笑った瞬間を見た人はいないらしい。きっと気のせいだろう。