表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
6/42

第4話

 Side紅。


 炎の魔女の昔話。

 貴方は、とても似ている。


 朱里・朱花に元気をもらって、気をとりなおして仕事をすることにした。

 今の時間、どうせシオンは仕事をしているだろう。仕事着に着替え、シオンの部屋に向かう。


 珍しく、人に会った。確か、シオンのヒショさん。文官みたいなものだ。

 この国では、人に会うことはあまりない。人はこんぴゅーたーだけでは管理出来ない部分や、外交などの仕事をしている。

 直接会わなくても、連絡はめーるとやらがあるし、外にでなくても困らないらしい。

…国民のほとんどが引きこもり…

 うっかり失礼な事を考えてしまった。


「こんにちは、お嬢さん」


 ヒショさん、エンジュていう、眼鏡のヒョロッとした人は、愛想よく笑った。

 彼はもともと外交官であったという。シオンとは悪友で、よく悪さをしたと話してくれた。


 彼は言う。この国は、病んでいると。他国を巡り、そう思ったと。


「ごきげんよう、エンジュさん」


 スカートをつまみ、礼をとる。


「シオンの部屋の花は、あなたが?」


「ええ。よければ、エンジュさんにもあげますよ。ついでに世話のしかたも、お教えします。興味があるのですか?」


「今度、ぜひともお願いするよ」


 手を振って、シオンの執務室前で別れた。彼は、この国ではとても変わった人だ。

 他国に外交官として、渡っていたせいか、とても感情がわかる。

 私が知る限り、シオンとエンジュさん以外の針の民は表情が乏しく、黙々と仕事をこなしつづける。まるで、カラクリのように。


 私も、この国はおかしいと思う。


 ゴッ!


 エンジュさんをぼーっと見送っていたら、ドアが開き、ぶつかった。


「…お?大丈夫か、チビ。や、悪ぃ」


 あまりの痛さに返答できず、うずくまる私。


「どれ、見せろ。コブにはなってねぇな。悪かった」


 グシャグシャと私の頭を撫でる。撫でられるのは嫌いじゃないが、ちょっと痛い。

 シオンはわかりにくいが、優しい。さっき急に部屋に戻ったことを、聞かないでくれる。


 ふと、気づく。触れる手は、異常に熱い。


「さて、仕事っと」


 何事もなかったかのように、仕事をしようとするシオン。

よく見ると、しんどそうだ。


「…シオン様?」


 にっこりと、私は微笑む。いつか王にも見せた、威圧を込めた笑顔。


 シオンの部屋は、机とこんぴゅーたーとベット、そして私が持ってきた植物しかない。

 私の迫力に圧されてか、シオンは壁によりかかる。


「なんだ?クレナイ。そんな怖い顔すんなよ。俺は仕事があるんだって」


「…シオン様?」


「や、俺、なんともねぇって」


「シ・オ・ン様?…熱は?」


「‥‥‥‥38.9」


 無理矢理ベットに押し込んだ。シオンは熱でへろへろで、私の力でもあっさりベットに倒れた。


「シオン様、絶対安静です。こじらせて、死ぬことだってあるんです。おとなしーく寝てれば治ります。今日は仕事は却下です」


「いや、少しぐれぇ…」

「ダメです」


「大事な…」

「ダメです」


「‥‥‥。」

「ダメと言ったら、ダメです」


「…まだ何も言ってねぇぞ」


「目で『やることが溜まってんだよ』と言っていました」


「ちっ、仕方ねぇな。寝てやるよ」


 自分で布団をかぶってくれた。

 放っておいたら、この人はまた仕事をする。


「少し貴方が眠るまで、物語でも話しましょうか」


 眠るまで、ついていた方が確実と判断し、そう提案した。

 意外にも、シオンは楽しそうに同意した。


「あ、ならアンタの話がいい。俺なりに炎の魔女の伝説を調べたが、国によって内容が違う。彩では、英雄。鋼では、悪女。針をはじめ、他国では魔物。悪女とか魔物ってイメージじゃねぇし」


「…私はひどい女ですよ。悪女で魔物なの。きっと、地獄に堕ちるわ。私が魔女になったのは、憎かったから」


「…何が?」


「全てよ。この世の全て。燃やしてしまおうと思ったの。全部」


 それ以上、シオンは何も聞かなかった。


 遠い、幸せだった日々。もうあの日に、帰れはしない。願っても、望んでも、泣いても、叫んでも。


 二度と戻ることはない、愛しい日々。今更、幸せになんてなれはしない。


「…楽しい、話じゃないの」


 でも、不思議。何故かしら。彩にいる時よりも、思い出す。

 誰にも話さなかった、話せなかった事まで語ってしまいそうになる。いつもなら、笑っておしまいなのに。


 いつの間にか、シオンは眠っていた。ここ数日、ロクに睡眠をとっていなかったとみた。

 熱もあることだし、と氷をもらって冷やすことにした。氷水に浸したタオルを額にのせる。…少し、楽そうだ。


 昔はよく、朱蓮を看病していたから、病人の扱いは慣れている。

 そういえば、茶希も昔はよく熱をだしたものだ。今は丈夫になったけど。


 静かな寝息。 穏やかな時間。

 いつしか私も、眠りに堕ちていった。





 夢を、見ていた。

 泣きたくなるほど幸せな、過去の夢ではなくて、でも死ぬほど見たいと思っていた夢。


 1人ぼっちの白い世界。


 誰かが私を呼んでいた。

 すぐにわかった。

 会いたかった。

 力一杯抱きしめた。

 会いたかったと何度も叫んだ。


 優しく私の涙を拭い、その人は優しく笑った。


『ぼくはまえのぼくじゃないけど、もうすぐきみにあえる。』


 あの、よく見知った笑顔。


『またあおう、くれない』


 もっと話していたいのに、私は白にのまれていった。





 目が覚めたら、黒かった。視界が黒い。


 自分の現在の状況を確認する。いつの間にか、布団がかかって横になっていた。

 そして、隣にはシオン。

 誰がやったか知らないが、移動させられたのだろう。


「泣いてんのか?」


 起こしてしまっただろうか。スッと涙を拭うシオン。夢の中のあの人にそっくりのしぐさ。

 私が彩を出てから、以前より500年前の事を思い出すようになり、こんなにも涙があふれる理由が1つだけわかった。


 この人は、似ている。

 あの人に、似ている。

 声も、髪も、性格も違うけれど、その身に纏う空気が、匂いが、しぐさが、とても似ている。

 なつかしい。

 いとしい。

 さびしい。


「とても懐かしくて、優しい夢をみたの」

 笑ってみせたけど、抱きしめられた。強がっても、あの人にも通用しなかった。


「ちっと、泣けや。泣きたい時に泣くのはいい事らしいぜ」


 慰めなのか素なのか、よくわからなかったけど、少し笑って、私は甘えることにした。


 そして、また眠りについた。今度は、夢は見なかった。





 シオンの風邪は、1日ぐらいではよくならなかった。


「…39度」


 さすがにぐったりして、苦しそうだ。


「食事、食べられるかしら…」


 昨日はまだ38度だったから、なんとか食べていたが少量だったし、できることならしっかり食べさせたい。栄養は大切だ。


「シオン?」


「むー?」


「ゴハン…」


「いらね」


…やっぱり。食べやすいように雑炊にしたんだけど…どうしようかな。


「あ、食べさせてくれるんなら、食ってもいいぜ」


 ニッと笑ってみせる。まだ冗談を言う余裕はあるようだ。

 たくさんの子供を育てたから、わかる。これは、悪戯を思いついた子供の目。


 ふっ、500年生きてきた私に、この程度のこと…。


「はい、アーン」


 シオンは固まった。

…10秒。

……20秒。

………30秒。

…………………。


「自分で、食う」


 何が気に入らなかったのか、モソモソ食べ始めるシオン。…顔が赤い?耳も、ちょっと…。


「…照れた?」


 自分でも、まっさかなーとは思った。が、


 ゴブッ!ウゴッフ!!

 ゲッフ!ゴホゴホゴホ!


 盛大にムセた…タイミングが悪かったらしい。

 落ち着いてから、シオンは言った。


「俺様のDNAが、何かソレはダメだと言ったんだ」


 でおきしりぼかくさんて…顔が更に赤いし。


 とりあえず、ご飯を食べてほしかったので、それ以上はつっこまなかった。

 結局完治まで、この後3日かかった。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ