エピローグ
そして、物語は続いていく。
これは、優しい物語。
これは、悲しかった物語。
物語は、終わらない。
魔女たちの物語。
紫苑と別れ、私達は一時綱に戻り白亜達と戻ってから彩に戻ってきた。
シオンは事後処理やら仕事で針に残った。
そして、ある日事件は起きた。
いつも通り、私は自分のベッドから起きる。なんか、妙に小さい気がする。服もキツイ。太ったかな、といやな考えが浮かんだ。
なんか、視界が狭いと思ったら、髪がめちゃくちゃ伸びている。
慌てて鏡を見ようと立ち上がると、バランスが上手くとれず転んでしまった。
そして、鏡には知らない女の人が写っていた。
「き…きゃあああ!!」
思わず、叫んでしまって後悔した。
「母さん!どうしたの!?」
「大ばあちゃん、平気?」
案の定、2人が入って固まっている。
「…おはよう。茶希、朱里」
「大ばあちゃん、でかいね」
「…そうね」
先に復活したのは朱里だった。彼のマイペースのおかげで、私も少なからず落ち着いた。
「母さん?なんで!?なんでいきなり成長してるのさ!」
「うん。母さんも知りたいな」
それからはもう、大変だった。医者に連れてかれて、針で全身チェックまでされた。
検査結果は異常なし。
結局、翠によれば
「ランフォード家は、彩でも特殊な刻の精霊の子孫であると言われています。紅様の心が解放されたことで、止まった刻が動き出したのではないでしょうか」
とのことだった。定期的に検査したが、普通に成長しているとのこと。普通に生きていけることが、すごく嬉しかった。
白亜は次の王として、以前よりずっと熱心に勉強するようになった。
ロザリアという明確な同じ道を歩む、尊敬できる相手を見つけたからだろうか。手紙でやりとりをしている。
茶希は、彩に残らず、ロザリアの所で彼女を手伝う道を選んだ。茶希が学者になった半分は、私を治すためだったらしい。また、研究はいつでも出来るからと、今の仕事を引き継いだら、綱に行く予定だ。
『王子さまのが、白亜をお嫁さんに貰えるかもしれないしね』
と言ったら、真っ赤になった。可愛い息子の成長に、実は母はちょっと寂しかったりする。内緒だけど。
朱里は、たまに親善大使として彩と綱を行き来している。本人曰く、
『ローズちゃんに会えるの、嬉しい、けど、大変』
らしい。なんでもロザリア陛下からご指名されているらしい。私はコッソリ陛下を応援していたりする。可愛い娘は大歓迎だ。
朱花は、相変わらず夕海と幸せに暮らしている。なんでも子供が出来たらしい。2人の子なら、きっと可愛いと思う。今から、楽しみで仕方ない。
そして、私は相変わらず城に勤めている。シオンとは、手紙でやりとりをしている。
あの約束は、まだ先にしてもらった。まだ子供たちがいるし。この国でしたいことが沢山ある。
それが終わったなら、きっと会いに行こう。ずっと、彼と添い遂げよう。
限りある時間を、最後まで。
もし、貴方に大切な人がいたなら、けしてその手を離さないでほしい。
もう誰も、私みたいにならないでほしい。
後悔しないよう、毎日を生きてください。
私は今、物語を綴っている。
それは、悲しみから始まった。
だけど、けして不幸ではない。
きっと、幸せな、物語。
これからも、続いていく。
終わらない、私達の物語。
『魔女たちの物語』
おしまい。




