閑話
精霊・水都と白亜の関係。
永く生きる、精霊故の悲しみ
シオンと別れた後で、白亜は自室へと帰って、水都を喚んだ。
「水都、良いことってなんだったの?」
「うふふ、シオンちゃん、いい子だったから。嬉しかったの。青銀の姫達のおかげで、今の紅ちゃんになったって、言ってくれて。嬉しかったの。もうあんな思いはさせないって言ってくれて」
ふっと、白亜は笑ってみせた。そして、水都にデコピンした。
「痛い!?」
「痛くしたの!当たり前でしょ!何のために水都は私達に記憶を見せたの!繰り返したくないからじゃない!この私がいる限り、紅様を悲しませたりなんてしないわ!」
「うん」
白亜は豪快にガッツポーズを取った。そんな白亜を見て、水都は嬉しそうに笑った。
「ねぇ、白亜ちゃん」
「何?」
「人間てすごいね」
「え?」
「すぐ死んじゃうけど、たまに間違ったりするけど、私は人間が好き。関わらずにはいられないの。どうしようもなく、愛しい。別れが辛いとわかっていても」
そして、もう自分は人間から離れられない、と笑った。
「水都…」
「ねぇ、白亜ちゃん。長生きしてね。私、白亜ちゃんが大好きだから」
「当然よ!私は素敵な不良老人になるの。生意気な若者なんか、やっつけるわ」
「私、白亜ちゃん、雪白ちゃんより好きかも」
「え?」
「雪白ちゃんは月みたいに穏やかだったけど、白亜ちゃんはお日様みたい。私は月よりお日様が好き」
その笑顔で、周りを元気にしてくれる。いるだけで、雰囲気が明るくなる。楽しい気持ちにしてくれる。
今までのどの姫とも違う白亜が、水都は好きだった。
「私も、水都が大好きよ」
白亜は水都をギュッと抱きしめた。 雪白の約束は、水都にとって、酷いことだったかもしれないと、白亜は思った。
もう、水都は私達から離れられない。
私だって手放せない。水都がいないなんて嫌だ。
いつか、別れの日は来るでしょう。それでも、私はきっと貴方の中に残るから。
今を大切にしたい。
水都を抱きしめながら、白亜は思った。
「水都、私は水都も好きだから、幸せになって」
水都は驚いた表情になり、
「うん」
誰より幸せそうに微笑んだ。




