閑話
あかい、あかい、ゆめ
繰り返す、あかい悪夢
今まで、繰り返し見続けた夢は、今までになく鮮明だった。俺が全て覚えようと、初めて試みたからかもしれない。
ふわり、と花が舞う。一面、赤に覆われている。
これは、この国にしか咲かない花だ。僕が品種改良した。
名前は―――
『紅』
赤くて、綺麗で、僕が一番好きな花だ。
「王子!もう、こんな所にいたのですか」
「……」
聞こえているけど、返事はしない。不満だから。
「王子!お・う・じ!!」
ふぅ、と紅はため息をつく。
「…紫苑」
ぽそっと、欲しい返事をくれたので、上機嫌で返事をした。
「何?紅」
むくれていたって、紅はかわいい。
「もう!また授業をサボったのでしょ!!私だって仕事があるのに、探すのにかりだされたんですよ!」
「僕を見つけられるのは、紅だけだからね」
ふふ、と笑うと頬を赤らめて、黙りこむ。本当は、怒っていないのだ。
花を手折り、花冠をつくる。
彼女の銀髪に、赤はとてもよく映えた。腰まで届く、その美しい銀髪に。
「綺麗だね、紅」
「どっちがですか。勝手に人の名前使わないでくださいよ」
「どっちも。いいじゃない、綺麗なものに借りるぐらい」
「むぅ…カビとか毒キノコにつけるよりはマシかしら」
紅は真剣に考えている。その発想が面白いな。なんでカビとかになるかな。
「お兄様、紅」
笑顔で走ってくる少女。名前は、
「雪白」
かわいい僕の妹だ。
「姉様、王子、見つけ、ました」
のんびりした、紅の双子の妹。紅は妹・朱蓮に声をかける。
「あら、朱蓮まで。よくここがわかりましたね」
「姉様のあと、つけましたー」
ずっこける紅。
俺は、紫苑のなかで、ずっと見つめていた。今と違い、幼く心から幸せに笑う紅を。
それから、毎日穏やかな日々が、続いた。
映像が切り替わる。あかい花畑が、炎のあかに染まっている。
紅に、大人が切りかかろうとしている。
夢中で、走った。
すべてが、あかにそまる。
つめたいなにかが、むねをつらぬいた。
さいごに、みたのは、
めをみひらいた、きみ。




