第7話
Sideシオン。
魔女の誘い。
重なる面影。
俺はあれから、ひたすら事後処理におわれていた。彩の民には、お礼状やら、ソーラーバッテリータイプのロボットやらの土産を渡し、帰ってもらった。
今やっているのは、その手配のためできなかった仕事である。夜中になっても終わる気配がない。
ドアがノックされる。こういう習慣があるのは紅達だけだ(針はドアは自動がほとんどなのでノックはしない)
慌ててドアを開けると、紅がトレイに食事を持っていた。
「こんばんは。夜食を持って来たので、入れてくださるかしら」
紅から、トレイを預かり、部屋に招き入れる。正直、さっきの事があるから気まずい。紅はめざとくパソコンの電源が入っているのに気づいた。
「まだ仕事していたの?」
と咎めるような口調で言った。
俺は慌てて話題を変えた。確実に怒られると思ったからだ。もう気まずさなんか吹っ飛んでいた。いつもなら、紅はこの程度ではごまかされない。
しかし、紅は少し考えるそぶりをみせ、まっすぐに俺を見て言った。
「針国王、シオン=リドナー殿。ご多忙の身とは存じておりますが、私の願いを聞いていただきたい」
小さな手が、俺に向かって伸ばされた。
「行きませんか、彩に。私の国に」
気が付いたら、その手をとっていた。紅は、ほっとしたように笑っていた。
初めて見た筈の、子供のようにあどけないその笑顔を、俺はどこかで見たような気がした。
どうしてこんなにも惹かれるのか。
その答えはまだ出ない。




