僕の翼
「君は”特別”なんだ」
心の中で僕は呟いた。
(嘘じゃない、でも…)
(本当でもないな)
なんて。
”特別”はたくさんいる。
”どうでもいい”もたくさんいる。
でも、それ以上に。
嫌いだ。
皆、皆、大嫌いだよ。
そう思いながら、僕は、飛んでいる皆の翼を見上げた。
白、青、灰、赤、オレンジ、紫、黒…様々な色。
綺麗な色。
自分の背中の羽を見てみる。
赤黒くて、腐りかけの小さな翼。
すぐに目をそらした。
だって、呼ばれたから。
見上げて、答える。
それ以外に何ができるだろう。
僕に、何ができる?
飛んでいる彼らに、ここにいる僕はどんな風に見えているんだろう?
地面にいるしかない僕は。
ちょっとジャンプして、近づいて、すぐに離れて。
気まぐれに手を引かれる事を待って。
望んで、少しでも近づきたい僕。
でも、結局、地面にずっと立っていて、嘘の笑顔を張り付けている僕。
疲れた。
苦しい。
でも、そんな事は隠してしまおう。
誰も、そんな言葉は望んでないから。
大丈夫だと。
皆が好きだと笑おう。
笑ってみせよう。
それしかできないから。
それすらもできなくなったら。
それは、きっと。
僕の消えるべき時。
飛んでいた一人が、僕の側にいた人を手招く。
(…とらないで)
そんな事、言えない。
僕の物じゃないから。
どこまでも自由だから。
笑顔で見送る。
ああ、なんて力強い翼。
その顔が振り向く事はない。
笑顔で祝福を、心で呪いを贈る。
君らに幸あれ。
それ以上の不幸あれ、と。
…不幸であっても。
彼らは僕を苦しめるのだけど。
笑っていてほしいから。
(皆、皆、大嫌いだ)
まぶしくて、くるしい。
ぼくは、ここでくさっていくだけなのに。
あそこが、みんなが、きらいだ。
ああ、なんてきもちよさそうなんだろう。
なんで、ぼくだけがここにいなきゃいけないんだろう。
…あぁ、なんだかつかれてしまったなぁ。
だれも、ぼくがいなくてもこまらない。
あそこでじゆうにとんでいる。
ならば、ひとりで。
ちのそこでねむろう。
きっと、とてもらくで、くるしくて、さびしくて、いごこちがよいのだろう。
僕は、翼に手をかけた。