番外編10 異世界の野球
『影の宮廷魔術師 ~無能だと思われていた男、実は最強の軍師だった~』
という新連載を始めました。
本作と同様のタイプの作品で、主人公が「知力系無双」をするお話です。
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ある日、姫様であるフィリスが砦の倉庫から古文書を発掘する。
埃のかぶったそれは、異世界のとある遊戯だった。
「ヤキュウ?」
見慣れぬ単語に皆、戸惑うが、ボールとバット、それに鍋掴みだけでプレイできると分かるとさっそく、砦のみんなでプレイする。
野球と呼ばれるスポーツは瞬く間にクルクス砦に浸透する。
「単純だが、最高に面白いぜ!」
「今季のリーグ戦の首位打者はマルスか」
「最多勝はカイル様だな。さすがだ」
そのような会話が繰り広げられるが、本物の白銀のエシル、エリーは面白くない。
背が小っちゃいから、という理由で一塁手を任されているからだ。
「花形のピッチャーがやりたいぞ」
シルバーズのエースにして監督のカイルはそれを認めない。
「お前みたいにちっこくて女投げの選手がピッチャーなど務まるか」
「ならばショートストップというのがやりたい。古文書ではピッチャーに次ぐポジションとある」
「遊撃手などもっと駄目だ。あそこも重要だからな。お前がショートを守れば、皆、そこに転がすようになるぞ」
「むむぅ」
と納得いかない顔のエリー。彼女は不平を漏らす。
「というかこのチーム名はシルバーズだろう。ならば銀髪の私を売り物にすべきだ」
「売るほど胸を育てるか、もしくは俺をぎゃふんと言わせるくらいの活躍をして見せろ」
その言葉を聞いたエリーは不敵な笑みを漏らすと、
「その言葉、忘れるなよ。今言った言葉、ふたつ同時に叶えてみせる」
そう言うとエリーは一塁に向かった。
試合が進むこと数回、そのときが訪れる。
7回の裏、ツーアウト、一塁と三塁に走者あり、ピッチャーのカイルは疲れている。
連日の激闘により、肩がろくに動かない。
今の状態ではろくなボールが投げられない、そんな状況の中、盗塁を試みようとしている一塁に牽制球を投げる。
無論、牽制でアウトなどという都合の良いことにはならない。
しかし、身体を休める時間、考え得時間は稼げた。
カイルは必勝の配球を考えるが、一塁から球が戻ってこないことに違和感を覚える。
なにがあったのだろう、と一塁の方向を見ると。どや顔でふんぞり返っている少女がいた。
エリーが巨乳になっていたのである。
一瞬を目を疑ったが、すぐにカラクリが判明する。彼女は古文書に書いてある「隠し球」を使ったのだ。
隠し球とは一塁手が捕球した際、ピッチャーに投げ返したと装うわざである。走者を騙し、塁から離れた瞬間にタッチしてアウトにするわざであるが、走者はエリーをぽかんと見つめていた。
わかりやすすぎる隠し球に呆れているようだ。
それはカイルも同じで、とぼとぼと一塁に向かうと、彼女の頭を殴る。
「わかりやすすぎるんだよ。お前の胸が成長するわけないだろう」
そう言うとカイルは、彼女の胸から球を捕りだし、マウンドに向かうように言う。
「ピッチャー・エリーだ。盛大に打たれてこい」
その言葉を聞いたエリーは満面の笑みでマウンドに向かい、自信満々に足を振り上げ、球を投げ放ち、びっくりするくらい遅いストレートを投げ、相手打者に特大のホームランを打たれた。
俺は敵の放った放物線を一塁から悠然と見上げる。
(ま……勝敗なんてどうでもいいよな……)
グラウンドの選手たちを見つめると、皆が楽しそうに野球をしていた。
これが異世界のスポーツ、野球の魔力である。
とカイルは改めてこのスポーツの魅力の虜になった。
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