表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
96/99

番外編7 カイルのスパイ選び

「カイルよ、なにをやっている?」


「ああ、エシルか。実はな、砦で新たに採用するスパイについて考えているんだ」


「間諜のことか」


「古めかしい言い方だな。さすが御年数百歳」


 ぎろり、と睨む目が怖かったのでさり気なく話を戻す。


「ところでエシルよ、スパイに必要なものはなんだ?」


「耐え忍ぶ心かな。東洋には忍びという間諜がいるが、彼らは忍耐強い。はしこくなくても、どっしりしているものがいいぞ」


「つまりノロマでもいいと?」


「極論を言えば」


「ただし、ノロマでもいいが、好奇心が旺盛でなくてはならい」


「好奇心か」


「ああ、何事にも興味を持ち、秘密を暴こうとする性格が必要だ」


「なるほど、分かった。そんなやつを見つければいいんだな」


「言うは易しだが、そんなに簡単に見つかるものかね?」


「簡単じゃないだろうが、秘策はある」


「ほうほう、うかがおうか」


 偉そうに言う胸の小さい娘に、カイルはささやく、彼女の銀髪に触れたが、しっとりとしていて心地よかった。





 さて、こうしてスパイを集めるための募集をする。

 クルクス砦に集まったのは、周辺の都市から募集した一般市民。

 スパイは敵都市に紛れ込むのだから、「普通」のやつが良いのだ。

 軍人は良くなかった。

 そんな思想のもと集めたが、集まった30人を選別する。

 まずは筆記試験。これは読み書きができるか、と最低限の教養を試すもので難しくない。

 20人が合格した。



 そして最終試験――。

 これは別会場で行われる。

 と合格者に手紙を渡し、カイルは説明をする。



「この手紙をクルクス砦にある最終試験会場まで持って行ってくれ。その間に色々な罠があるが、それをくぐり抜けたやつが勝ちだ。ちなみに手紙の中は見ないでくれ」



 志望者たちは一斉に駆出し、一位を狙う。



 その光景を悠然と見るカイルとエシルだが、ひとり、残っている男を見つける。

 彼はなんと合格発表のあとに寝ていたのだ。

 エシルは呆れながら言った。


「あれは駄目だな」


 カイルは反論する。


「そうでもない。一番見所があるかもしれないぞ。あそこで眠れる肝の太さはスパイ向きだ」


 そう不適に漏らすと、遅まきながら男は起きた。

 きょろきょろし、黒板に書かれた最終試験を見ると、男は絶望した。

 もう勝てないと持ったののだろう。

 ここまできた記念だし、どうせ不合格ならば手紙を開けよう。中身も気になるし。

 と、男は手紙を開けると、驚愕の文字を見る。



「おめでとう! 君は合格だ! 我らは好奇心旺盛なものを求めていた」



 男は唖然としたが、見れば目の前に握手を求めてくる軍師の姿を見いだす。

 彼は人の悪そうな笑みを浮かべ、握手を求めてきた。

 これはとんでもない職場にきてしまったな、と思った。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ