番外編6 ギャンブルは友達を無くすぞ
ある日、白銀のエシルは弟子であるカイルに言った。
「カイルよ、お前はギャンブルが大好きだな」
「ああ、三度の飯よりも好きだ」
「ギャンブルはやるなとは言わないが、少し控えたらどうだ?」
「考えておく」
「そんな調子じゃ友人をなくすぞ」
とチクリと説教のエシル。なんとか弟子をまっとうな道に戻そうと、こんな逸話を話す。
「昔な、私の同僚にギャンブル好きな軍師がいた」
「軍師のくせにギャンブル好きとは終わってるな」
「……お前が言うな。まあ、続けるか。私はある日、その男に尋ねたんだ。ギャンブルなどをしていると友を無くすぞ、って」
「俺と一緒だな」
「ああ、そうだ。違うところがあるとすればそいつはギャンブルで破産したことだろうか。ある日、そいつはなけなしの財産をカジノですった」
「それでどうなった?」
「破産して以来、付き合いがないので分からないが、私は後日、同僚とこんな会話をした」
「カジノ好きの軍師、マーズのやつが破産したって知ってるかい? エシル」
「ああ、知ってるよ」
「破産して以降、友人が半分に減ったそうだ」
「残りの半分はどうなったのだ?」
エシルが尋ねると、同僚はなんともいえない表情で言った。
『まだそのことを知らないらしい』
エシルはそのときの表情を覚えているが、弟子のカイルも今、似たような表情をしていた。
ただし、破産軍師のマーズとカイルの大きな違いはその運勢だろうか。
彼は翌日、カジノでなけなしの金貨を掛けると、大勝ちしてエシルに食事を奢ってくれた。
これでは説教をすることも、ギャンブルをやめさせることもできないではないか。
そう思いながらエシルは子羊のソテーに舌鼓を打った。