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第1章 山賊の企み

   ††(山賊視点)



 村が騒がしいと物見に行かせていた部下から報告を受けると、山賊の頭は憤慨(ふんがい)した。


「搾り取りすぎて家畜が死んだら元も子もないと手加減してやってたら、飼い主である俺様に噛みつく算段をしてやがったとは」


 山賊の頭は薪の中に酒杯を投げ捨てると、全身で(いきどお)りを表現した。

 手下共もそれにならい、持っていた酒杯を投げ捨てる。


「お頭、こんなにコケにされて黙っている、という手はありませんぜ」


「そうでさ、山賊家業、舐められたら終わりです。今すぐ、村に乗り込んで奴らに目にものを見せてやりましょう」


 山賊の頭はその提案に応え、刀を手に取るのだが、すぐに思い留まる。

 この男は、ひときわ頭に血の上りやすい性格をしているが、山賊の頭だけはあり、最低限の分別もあった。


「おっと、俺様としたことがいけねえいけねえ。自分が可愛い子分たちを従える大将だってことをすっかり忘れていたぜ」


 そう言うと、情報をもたらした手下の方へ振り返り、こう訊ねる。


「おい、サジ、モニカ村の連中が雇った軍師っていうのは、本当に白銀のエシルなんだろうな?」


「へい、確かにあの男、天秤評議会の軍師だけが持つとされる印綬っていうんですかい? なんか光り輝く珍しい物を持っていました」


 その言を聞いた瞬間、火を囲む山賊達に動揺が走る。


「ほう、そうか。なら、そらあ、ホンモノだな」


 山賊の頭は噛み締めるように言うと、(あご)に手を添える。


「お頭、やはり、ここは引いておきますか?」


 山賊の頭は、引く、という言葉が気に触ったのか、提案した手下を殴りつけると、こう返した。


「俺ら山賊に引くって言葉はねえんだよ、いつも言ってるだろ」

「す、すいやせん、ならば後ろに向かって前進しやすか? ――あ、痛ッ!」


 山賊の頭は手下の頭を再度殴ると、こう続けた。


「あほ、せっかく護民官(ごみんかん)や王都の治安維持騎士団が寄りつかない村を見つけたんだ。ここで引けるか。他にも似たような村はごまんとあるだろうが、そこだって他の山賊がすでに縄張りにしてるかもしれねえ」


 じゃあ、どうするんで? 二度も殴られた手下は、三度目がないように視線だけでそう語ったが、結局、殴られた。


「ここは急ぐ必要はねえ。まずはあいつらがどう仕掛けてくるか、それを見てからでも遅くはねえからな。いいか、サジ、これからあの村を一日中監視して、逐一、俺に報告するんだ」


「ヘイ!」


 サジは勢いよく返事をすると颯爽(さっそう)と出て行った。

 山賊の頭はその姿を見送ると、ポツリと漏らす。


「……なあに、いくら世界最高の軍師だって、あのひ弱な村人達を率いたらどうにもならんさ。戦ってのはそんな甘っちょろいもんじゃねえ。場合によっては返り討ちにして、白銀のエシル様って奴を捕虜にして、どこかに売り飛ばすこともできるかもしれねえしな」




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